
かつて父である神に逆らい、天界から地獄へと追放された堕天使ルシファー。“地獄の王”という生活に退屈した彼は、地上の“天使の街”ロサンゼルスへ“脱獄”し、欲望うごめく街でナイトクラブの経営者として身を隠していた。彼には甘いルックスだけでなく、不死身の体と、目を見ただけで“その人の心に秘めた欲望を吐露させてしまう”という能力がある。それらを武器に文字通り酒池肉林の日々を送っていたある日、ルシファーはロス市警の美人刑事クロエと出会い、特別な“何か”を感じた。どんな女性の本心も見抜けるはずの彼だったが、なぜか 彼女の前では“特殊能力”が使えないのだ。ルシファーはその謎を突き止めるため市警のコンサルタントとなり、クロエと共に難事件を解決していくことに。

そんな中でルシファーは、クロエが“父の計画”の一部であることを知らされる。ルシファーを連れ戻そうと地上に降りて来た兄のアメナディエルや弟のウリエルと“父の寵愛”をめぐる兄弟間の葛藤のドラマが繰り広げられ、ついには地獄へ追放されていた“ママ”が登場。元夫である神への復讐に燃えるママを、ルシファーは別宇宙へ追放したのだった。そして全てをクロエに打ち明けようと決意したその瞬間、何者かに頭を強打されたルシファーは、見知らぬ荒野で目を覚ます。背中には失ったはずの天使の羽が戻っていた...。果たしてこのままルシファーは天使に戻ってしまうのか?そして父なる神は、いったい何を“計画”しているのか?サード・シーズンでは、いよいよ物語も佳境を迎える。
自由と享楽に生き、“愛”などという感情を否定し、翼の無い堕天使という自分に強い執着心を抱いていたルシファー。そんな彼に天使の羽が復活するというまさかの事態で終えたセカンド・シーズン。サード・シーズンでは“愛”の感情をめぐって、天使、悪魔、人間が入り乱れて様々なドラマが描かれる。ルシファーとクロエの“じれった過ぎる”関係には新たに赴任してきたクロエのボス、ピアース警部補という刺客が。積極的にデートに誘うピアースに、好意を抱き始めるクロエ。嫉妬するルシファーはどんな行動に出るのか...。
“新キャラ”ピアース警部補を演じるのは、あの“不死身の男”トム・ウェリング。人気を博したTVドラマ「ヤング・スーパーマン」で、若き日のクラーク・ケントを演じたことで知られるウェリングも、今や40代のナイスミドル。ルシファーを演じるトム・エリスとはまた違った、脂の乗り切った男の魅力を存分に見せてくれる。
その他、地獄からルシファーに付いて来た親友メイズ、肉体関係と引き換えにルシファーへアドバイスを与えてきた精神科医リンダ、クロエの元夫である刑事ダン、“ママ”に憑依されていた弁護士シャーロットなど、それぞれ複雑な悩みを抱えるオトナたちによる、属性を超えた恋愛模様から目が離せない。

ドラマ「LUCIFER/ルシファー」は“愛”への渇望の物語だ。
かつて天使だったルシファーは、他の兄弟天使のように父なる神の寵愛を受けられず、反旗を翻しために地獄へと追放された。同じく父に捨てられた母のこともあり、ルシファーの“愛”に対する感情は非常に卑屈なものになってしまった。それが地上でのプレイボーイ生活につながり、クロエとの噛み合わない“感情のすれ違い”を生み出していると言えるだろう。
兄弟の関係において差別的に親の愛情を受けた場合、兄弟以外の関係にも影響を与えてしまうという。心理学者のユングは、これを“カインコンプレックス”と名付けた。聖書の『創世記』に登場するアダムとイヴの息子カインに因んだものだ。カインは弟アベルだけが神に愛されたことに腹を立て、アベルを殺すことで人類初の殺人を犯してしまう。そしてそのことを隠蔽し、嘘をついた。怒った神は、カインをエデンの東へ追放してしまったという。
サード・シーズンの見どころは、ルシファーが己のコンプレックスをどう克服していくのかというところにあるだろう。
