2018年、ショーシャンク刑務所内にある30年間閉鎖されていた建物の地下牢から、謎の青年が発見される。発見者は看守デニス・ザレフスキ。指紋登録も犯罪記録もないため、身分証明を行うことができず、正体不明のまま。定年退職を目前に自殺したデール・レイシー前所長に代わり、ショーシャンク刑務所の新所長を務めるテレサ・ポーター赴任後早々の不可解な事件。「何者か」という問い掛けに「ヘンリー・ディーヴァー」と答えたことが唯一の手掛かりだ。ヘンリー・ディーヴァーとは27年前に発生した謎の失踪事件により、一時行方不明になった少年で、今はヒューストンで死刑囚専門の弁護士を務めている。一体なぜ、彼の名前を口にしたのか。謎の青年は何者で、誰が、いつ、どのような理由で閉じ込めたのか。キャッスルロックに不穏な空気が漂い始める...。
1991年1月9日、キャッスルロックに住む少年ヘンリー・ディーヴァーが忽然と姿を消した。神父マシュー・ディーヴァーと妻ルースの養子として育てられたヘンリーは、事件前夜に父と出かけるところを隣家に住むモリー・ストランドによって目撃されていた。懸命に捜索活動が行われるも、強い寒波の影響により警察当局は打ち切りを発表。しかし失踪から11日後、氷上にたたずむヘンリーを保安官アラン・パングボーンが発見する。ヘンリーに事件前後の記憶はないが命に別状はなく、無事ルースの元に届けられた。一方マシューはヘンリーの捜索活動の最中に瀕死の状態で発見され、3日後に死亡。その犯人としてヘンリーを疑う声が上がったのだった。空白の11日間、ヘンリーに何があったのか?真相は謎に包まれたままだ。
謎の青年が姿を現す直前、ショーシャンク刑務所所長のデール・レイシーが定年退職を目前に、キャッスルレイクで自殺を図った。囚人によって不正が暴露されたノートン所長も含め、これまでに4人の所長が在職中に死亡している。さらに、謎の青年と相部屋の囚人が一夜にして病死。不可解な事件に当局も頭を悩ませている。キャッスルロックでは過去にも様々な怪事件が発生。線路脇で少年の遺体が発見された事件、狂犬病の犬が町を襲った事件、絞殺魔事件、火災とともに店主が行方不明になった事件、そして27年前の謎の失踪事件…。キャッスルロックの歴史を語る上で欠かすことのできない奇妙な事件の数々。住民の中にはキャッスルロックを“呪われた町”と呼ぶ者もいる。不運が連続しているだけなのか、それとも…
キャッスルロックの天と地を見たディーヴァー家と、
一家を支える保安官
精力的に布教活動に励み人望の厚かった神父マシュー・ディーヴァー。妻ルースと養子ヘンリー・ディーヴァーは3人で仲睦まじい生活を送っていた。しかし、27年前に発生したヘンリー失踪事件によって一家は崩壊。ヘンリーの捜索中にマシューは死亡し、犯人としてヘンリーを疑う声は今もなお根強く残っている。居心地の悪い故郷を離れ、新たに家族を築いたヘンリー。ひとりぼっちになってしまったルースの面倒を元保安官のアラン・パングボーンがみていた。行方不明だったヘンリーの発見者でもあるアランだが、二人の間には距離がある。
ショーシャンク刑務所で
運命が交錯する人々
町の数少ない働き口のひとつであるショーシャンク刑務所。規則通りの日々が繰り返されているこの場所で、謎の青年が発見されたことで、人々の運命がゆがみ始める。レイシー前所長に代わり赴任したばかりのポーター新所長。入所者を増やすべく、30年間封鎖されていた建物の調査を命じたことで厄介な事件に巻き込まれることになり、後悔し始めていた。一方、発見者の看守ザレフスキもまた、子の誕生を前に安心と安定した生活を求めるが、真面目さゆえに謎の青年のことが頭から離れず、精神に支障をきたすように…。謎の青年が発するのは「ヘンリー・ディーヴァー」という言葉だけ。彼の頭の中は誰も知る由がない。
狂気の町で希望を売る
M・ストランド・アソシエイツ不動産
故郷で生き続けることを決め、町おこしに力を入れるのは、モリー・ストランド。M・ストランド・アソシエイツ不動産を経営し、町の再生のため動いていた。訳アリ物件だらけのこの町で事業を成功させている彼女は、キャッスルロックの不動産女王だ。しかし精神的に問題を抱えており、薬物を服用中。そんな彼女は“人の感覚や思考がわかる”力をもっているという。特に隣人だったヘンリー・ディーヴァーとは強いつながりがあるようで…。彼女のアシスタントを務めるのはジャッキー・トランス。本名はダイアンだが、『シャイニング』でスキー場で妻子を斧で殺そうとした叔父ジャック・トランスにちなみ、あえてジャッキー・トランスと名乗っている。奇妙な事件に飢えた噂好きの彼女がとる行動は予測不能だ。
手掛けた著書は世界中で翻訳されベストセラーになり、次々と映像化される小説界の巨匠スティーヴン・キング。デビューから半世紀近く経つ今もなお、筆を執り続け、モダンホラーの頂点に君臨するキングの作品は、同一世界の出来事として繋がり、ひとつの世界“キングバース”を形成している。そのキングバースの繋がりのひとつが、キングが故郷メイン州に創り上げた架空の町“キャッスルロック”。「クージョ」や「デッド・ゾーン」など、数々の名作の舞台として登場し、いわばキングが創り出す壮大な世界の中心であるこの町で、新たな物語が誕生した。
絞殺魔でも狂犬でもなく“町”を主人公にしたドラマ「キャッスルロック」で製作総指揮に名を連ねるのは、ハリウッドきってのヒットメーカーJ.J.エイブラムス。キングとエイブラムスがタッグを組み制作したTVシリーズは「11.22.63」に続き二度目。「11.22.63」では同名の長編小説を映像化した2人だが、本作ではTVシリーズのためだけに新たなシナリオが用意された。日常に潜み静かに忍び寄る恐怖。世界中の読者に強烈なトラウマを植え付けてきたキングのホラーに、新たな歴史が刻み込まれる。
「キャッスルロック」がキングバースの集大成と言われる所以は、ストーリーだけではない。キャストもまた、過去にキング原作の作品に出演したゆかりのある俳優が揃う。
ヘンリー・ディーヴァーの母ルースを演じるのは『キャリー(1976)』で主演を務めたシシー・スペイセク。キングのデビュー作にして、初の映画化作品である『キャリー』でアカデミー賞候補にもなった彼女は、40年以上の時を経て再びキング世界を彩る。さらに謎の青年役には2017年に公開された『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』で、ピエロのペニーワイズを演じたビル・スカルスガルド。キング実写化作品で歴代1位のヒットを記録した同作からは、ルーザーズクラブの一員マイクを演じたチョーズン・ジェイコブスもヘンリーの息子役で出演している。その他、レイシー夫妻を『死霊の牙』に出演していたテリー・オクィンとTV版「ザ・ミスト」に出演していたフランセス・コンロイが演じ、ヘンリーの隣人モリーを「ローズ・レッド」のメラニー・リンスキーが演じる。キングの恐怖描写に精通した俳優たちが、作品を盛り上げる。
キングバースを網羅するのは至難の業。ここでは「キャッスルロック」をより深く味わうために押さえておきたい3つのポイントを紹介しよう。
まずは“キャッスルロック”が登場する作品たち。“キャッスルロック”はどのような町なのか。不気味な恐怖が漂う町であることは作中で次第に明らかになるが、町の歴史を知ればさらに理解が深まるに違いない。キャッスルロックを舞台にした作品には「デッド・ゾーン」「クージョ」「スタンド・バイ・ミー」「ダーク・ハーフ」「ニードフル・シングス」などがある。この他言及があった作品を加えれば「ザ・スタンド」や『ショーシャンクの空に』として映画化された「刑務所のリタ・ヘイワース」など多数に及ぶ。
次に押さえておきたいポイントは“27”という数字。キングバースにおいて27という数字は度々現れ、重大な意味をもっている。例えば「IT」では27年おきに“それ”が町に現れ、「ダーク・タワー」でも“狼”と呼ばれる集団が27年周期で町の子供をさらう。「キャッスルロック」でも謎の青年が地下牢から発見されたことで、ヘンリー・ディーヴァーは“27年ぶり”に故郷へ戻ることに…。
最後はキングの産物の数々。謎の青年が発見された“ショーシャンク刑務所”や出所後に滞在する“ジュニパーヒル精神科病院”といった施設もキングバースに度々登場。特に精神科病院には「IT」に登場する元不良少年ヘンリー・バワーズをはじめ、恐ろしい異常者が集っているとされている。さらにアラン・パングボーン保安官は「ダーク・ハーフ」と「ニードフル・シングス」にも登場した人物。この繋がりがどのような意味を持つのか、注目集まる。