原作であるリアーン・モリアーティのベストセラー小説を映像化した本作。製作するのは様々なターゲットに刺さる作品を世に送り出してきたケーブル局HBO。中でも「セックス・アンド・ザ・シティ」や「GIRLS/ガールズ」など、その時代に生きる女性たちを赤裸々に描いた先駆的な作品は、フェミニズムに大きな影響を与えた。そんなHBOが手掛ける“母”たちの物語に、全米では放送前から話題沸騰。予告編が公開されると、Facebookのオフィシャルページで3100万回、Youtubeで500万回という視聴回数を記録した。満を持して封切られた第1話はテレビ視聴、オンライン配信合わせて計200万人の視聴者数を記録。幅広い世代から支持され大ヒットとなった。
社会的に大きな反響を呼んだ本作の脚本を務めたのは「アリー my love」など数々の人気ドラマを手掛けてきたデイビッド・E・ケリー。監督は、『わたしに会うまでの1600キロ』で組んだリース・ウィザースプーンからの依頼で、『ダラス・バイヤーズクラブ』で知られるジャン=マルク・バレが務めた。
主演はオスカー女優のニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』)とリース・ウィザースプーン(『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』)。私生活でも親友のふたりは、本作のドラマ化を熱望し、映像化権獲得のため奔走。製作総指揮にも名を連ねた。さらにローラ・ダーン、シェイリーン・ウッドリー、ゾーイ・クラビッツといった豪華女優陣が出演。男優陣もアレクサンダー・スカルスガルド、アダム・スコット、ジェームズ・タッパー、ジェフリー・ノードリングなど人気俳優が勢ぞろい。
異例とも言えるハリウッドが誇る主役級のキャスト&スタッフが本気で挑んだTVシリーズ。歴史に名を刻む名ドラマの誕生だ。
新年度に心を躍らせる子供たちと、何かと心配事が尽きない保護者たち。その不安は的中し、子供同士のトラブルに発展。レナータの娘アマベラが首を絞められたというのだ。赴任したばかりの担任は生徒と保護者を集め、犯人捜しを開始。アマベラが指したその先にいたのはこの街にやってきたばかりのジギーだった。否定するジギーとその言葉を信じる母ジェーン。しかし新参者のシングルマザーの言葉に耳を貸す者は少なく、保護者間で力を持つレナータに同情が集まる。そんな状況を見兼ねた正義感の強いマデリンはジェーンの肩をもち、マデリンと仲の良いセレステも自然とジェーンの味方に。新学期早々台頭した二大派閥。その後事態は思いもよらぬ方向に進むのだった。
舞台はカリフォルニア州モントレー。西海岸の壮大な景観を臨む高級住宅街に、高いレベルの教育が受けられることで知られる小学校があった。例年開催される父母による資金集めのパーティー。夜の集いが盛り上がりをみせる中、謎の事件が起きる...。保護者の証言によって徐々にあぶり出されていく保護者同士の裏の顔。作り上げられたイメージや噂に翻弄され、捜査は難航する。事故か殺人か...、一体事件の裏に何があったのか。すべての元凶は入学説明会のある出来事だった。
こうして二分化した保護者たち。マデリンvsレナータの戦いは、専業主婦vsワーキングママの戦いとなって炎上する。多勢に無勢という言葉にならって、派閥拡大のため囲い込み合戦が勃発。ターゲットはママ友から先生にまでおよび、華やかな誕生会や優雅なお茶会、熱心なPTA活動など、あの手この手を使い奔走。それもすべて、子供を守るため...。日を追うごとに人間関係はより複雑化してゆく。
そんな見栄と虚飾にまみれたママライフの実態は、答えのない育児に頭を悩ませる日々との闘いでもある。元夫との間に大学進学を控えた娘を、現夫との間に小学生の娘をもつ専業主婦のマデリンは、変わりゆく子供たちとの関係に頭を抱える。一方、キャリアウーマンのレナータも、子供との距離に悩んでいた。シングルマザーゆえの子供への影響を心配するジェーン、出張で留守が多い夫に代わり双子の子育てに奮闘するセレステ、独自の育児方針で突っ走るボニー。それぞれ“母親”という役割をまっとうするため、手探りながらも全力を尽くす。嘘、噂、嫉妬...母たちの本能が掻き乱す小さくて独特な“ママ友”の世界。そこに眠る、計り知れない苦悩や葛藤が暴かれる。
一方、女としての自分を模索するマデリン。次第に近づいてきた子離れの空虚感を埋めるかのように市民劇場での活動に力を入れるが、心は満たされないまま。子供が手を離れ、突如生まれた“時間”が目覚めさせた“女”としての自我が辿り着く先とは...。
結婚、出産を経て大きく変わる女性の人生。その分岐点に立たされた母であり、妻である女性たち。“完璧”の裏側に秘められた、幸せを模索する女性たちの赤裸々な現実が明らかになる。
ママ友の世界で競争の対象になるのは子育てだけではない。いかに夫婦関係が良好か、いかに女性としての人生を謳歌しているかも、ママカーストの位置づけを決める要素となる。
誰もが羨む美男美女のエリート夫婦ペリーとセレステ。年齢や人目を気にせずイチャつく姿が度々目撃され、噂好きなママ友の間で注目の的になっていた。そんな甘い夫婦関係には大きな秘密が...。
成功者としてすべてを手に入れたレナータとゴードン。しかしその代償に夫婦関係は冷え切っていた。仕事や子育てを優先するあまり、忘れてしまった妻としての顔。共働きキャリア夫婦はかつての情熱を取り戻すことはできるのか...。
マッケンジー家
趣味の延長で市民劇場の活動をする専業主婦のマデリンとウェブデザイナーとして一家を支えるエドは再婚で結ばれた。長女アビゲイルの父は元夫ネイサン、次女クロエの父は現夫のエドである。社交的な性格で厚かましい面もあるマデリンは、目の前に幸せな生活があるにも関わらず、ネイサンへの怒りや憎しみを捨てることができない。さらにアビゲイルが自分よりもネイサンの再婚相手ボニーを慕っていることにも焦りを感じている。絶えずどちらがより幸せか比べる妻を、温厚な性格のエドは一途に愛すが、時に衝突することも。
ライト家
弁護士としてキャリアを築き活躍していたセレステは、若くして成功した裕福なビジネス マンのペリーと結婚するに当たり専業主婦になった。遊び盛りのやんちゃな双子の男児マックス&ジョシュとの4人家族。出張で家を空けることが多いペリーは、限られた時間を大切にしたいという気持ちが強く、子供と妻への愛情表現を欠かさない。そんな思いに応えようと自分磨きを怠らないセレステ。美しさと人柄の良さで、多くの人から愛されている。誰もが羨む美男美女夫婦。しかし、それは偽りの姿だった...。
チャップマン家
新学期に合わせてこの街に引っ越してきたジェーンと愛息子のジギー。若くしてシングル マザーになったジェーンは、新学期早々いじめの加害者とされた我が子を守ろうと奔走。一方、ある男性との過去のトラウマに悩まされており、新たな一歩を踏み出せずにいる。セレブだらけの街で生きていくことを決意したチャップマン親子。二人三脚で新たな生活を歩み始める。
クライン家
妻レナータは会社のCEOを務めるキャリアウーマン、夫ゴードンも企業の重役という共働きキャリア夫婦。レナータは学校の委員も務め、積極的に学校運営に参加。キャリアと母親業の両立を模索している。そんな妻の並外れた競争心や向上心の強さにゴードンは少々お疲れ気味。感情的なレナータと理性的なゴードンで、いじめ被害にあう愛娘アマベラを守る。
カールソン家
マデリンの元夫ネイサンが再婚相手に選んだのは、年下のスピリチュアル・ヨガインスト ラクターのボニー。ストレスフリーで自由奔放な生活を送っている。ふたりの愛娘スカイ がクロエと同じ学校に通うことになったため、マデリンと保護者同士に。過去の結婚生活 の反省を活かし子育てに積極的に参加しているネイサンに苛立つマデリンから敵対心をむき出しにされるボニーだが、心を掻き乱されることを嫌い、衝突を避けようと歩み寄る姿勢を見せる。
全米のマスコミをはじめとする批評家や視聴者から大絶賛された本作は、賞レースを席巻。第69回エミー賞<リミテッドシリーズ/テレビムービー部門>では、受賞数トップとなる8部門を受賞。さらに第75回ゴールデングローブ賞<リミテッドシリーズ/テレビムービー部門>において、4冠の最多受賞を記録した。
賞レース中に表面化したハリウッド映画界での性暴力問題は、「#MeToo(私も)」運動や「Time's Up(もう終わりにしよう)」運動といった世界的な抗議運動へと発展。こうした中で開催された第75回ゴールデングローブ賞の式典では、本作の出演者を含む数多くのハリウッドスターたちが被害者との連帯を示すため黒い衣装で出席。差別、暴力、抑圧の根絶を求め、声を上げる新たな時代の到来を感じさせた。
受賞スピーチで“声を上げることの重要性”を訴えたキッドマンやダーン。運命的なタイミングで生み出され、前述したムーブメントに後押しされるかのように時代の象徴となった本作。女性が製作に携わり、女性が主役を務め、女性の生き方に一石を投じた、今最も注目すべきドラマだ。