いまや世界中で親しまれるポップカルチャーになったアメコミ。多くの一流作品がひしめき合う中で新たにドラマ化された「ウォッチメン」は、スーパーヒーローの武勇伝でも、ヴィランの知られざる誕生秘話でもない。ヒーローが存在する世界そのものを描いた作品だ。
DCコミックスが1986年に刊行したグラフィックノベル「ウォッチメン」を手掛けたのは、「バットマン:キリングジョーク」の著者アラン・ムーアと、アーティストのデイブ・ギボンズ。それまでのアメコミ観にとらわれない世界観で熱狂的なファンを生みだした。受賞歴も華々しく“漫画のアカデミー賞”と呼ばれるアイズナー賞やSF界最高賞のヒューゴ賞を受賞。さらに米タイム誌が選ぶ「1923年以降に発表された長編小説ベスト100」にも選出。 コミックの枠を超え、20世紀を代表するフィクションとして語り継がれている。
2009年にはDC映画の仕掛け人、ザック・スナイダーが監督を務め、初の実写映画化。最先端の映像技術を駆使し、原作の世界観を忠実に再現した映画は新たなファンを開拓。そして今、ウォッチメンに新たな歴史が刻まれる――
世界中に熱狂的なファンをもつコミックの二度目の映像化にあたり、製作段階から高い注目を集めていた本作で主役を務めるのは、レジーナ・キング。『ビール・ストリートの恋人たち』でアカデミー賞助演女優賞を受賞した彼女が、二面性のあるキャラクター、シスター・ナイトことアンジェラ・エイバーを好演。
そのほかにも、アカデミー賞受賞俳優が勢ぞろい。『運命の逆転』でアカデミー主演男優賞を受賞したジェレミー・アイアンズや、『愛と青春の旅だち』でアカデミー助演男優賞を受賞したルイス・ゴセットJr.といった名実ともに一流の俳優たちが脇を固める。
さらに「特捜刑事マイアミ・バイス」でゴールデングローブ賞を受賞したドン・ジョンソン、 「サマンサ Who?」でエミー賞を受賞したジーン・スマート、『オー・ブラザー!』のティム・ブレイク・ネルソンなど、豪華キャストが集結。ここでしか見る事の出来ない豪華共演は必見だ。
緻密に練られた物語の壮大さから、ドラマでの映像化が長年熱望されていた「ウォッチメン」。ファンの夢を現実化したのは、世界のエンターテイメントを牽引する米プレミアムケーブル局、HBO®だ。「ゲーム・オブ・スローンズ」「ウエストワールド」といった超大作や、「チェルノブイリ」「ビッグ・リトル・ライズ」といった社会派作品などを次々と世に送り出すなど、革新的な挑戦を続けてきたHBO®が、「ウォッチメン」に秘められていた新たな可能性を導き出した。
製作総指揮を務めるのは、「LOST」で知られるデイモン・リンデロフ。原作・映画では1980年代中頃の米ソ冷戦時代としていた舞台を現代に移すなど、大胆な設定変更を実行。新鮮で斬新な「ウォッチメン」を描くことに成功した。全9話のうち3話の監督を務めるのは、これまでにもHBO®作品を手掛けてきたニコール・カッセル。一流スタッフが新たなウォッチメン、“ニュー・ウォッチメン”の世界へ誘う。
時は現代。かつて一世を風靡したコスチュームヒーローは過去のものになっていた。ベトナム戦争をはじめ、アメリカを、さらには世界を救い、数々の功績を残してきたヒーローたちの活動は取り締まられ、今では自警活動は違法と見なされていた。人々を守る役目は再び警察に。しかしその警察もまた、とある事件をきっかけにマスクで顔を隠し職務にあたることが義務となっていた。警察であることも口外してはならず、身分を偽って生活することが家族や友人、自分自身を守る術として徹底されていた。唯一顔を明かしているのは警察署長ジャッド・クロフォード。警察の顔である彼はテロ組織“第7機兵隊”の再来を宣言する。
第7機兵隊とは、オクラホマ州のタルサを拠点とする白人至上主義組織。かつてのヒーロー、ロールシャッハのマスクで顔を覆い、「誰でもなく 誰でもあり 姿を見せず 決して妥協 しない」を合言葉に、警察へ宣戦布告してきたのだった。覆面警官の正体を暴きたい第7機兵隊と、事態悪化の前に手掛かりをつかみたい警察の間で高まる緊張感。誰もが恐れていた事件が起こり、町全体が混乱する中、FBIが捜査に参加。派遣されたFBI捜査官は元ヒーローのローリー・ブレイクだった。コスチュームを脱ぎ捨てたローリーは、マスクを纏った警官たちと捜査に挑む。
第7機兵隊の拠点を突き止めようと奔走するのは黒いマスクで顔を覆った刑事シスター・ナイトこと、アンジェラ・エイバー。将来有望な刑事である彼女は、ベーカリーを営みながら 3 人の娘を育てる母として姿を隠していた。あまりにもかけ離れた二つの生活を両立させる彼女の人生を、車椅子に乗った一人の老人が一変させる。一見無力に見える彼がもつ力の大 きさを、この時アンジェラは知る由もなかった。
とある犯罪現場に姿を現した謎の老人によって、アンジェラはこれまで知らなかった過去を知ることに。アンジェラがその真実に翻弄されている裏で、謎の老人はレディ・トリューと名乗る女性と、ある計画を進めていた。ベトナム出身という共通点をもつアンジェラとレディ・トリュー。彼らは何者なのか。その思惑とは...。
警官と第7機兵隊の緊張状態や、秘密裏に進められる人類の命運をかけた作戦をよそに、一人優雅な生活を送る男がいた。広大な野原を馬で駆け、豪華な屋敷に住み、多くの使用人を抱えるその男は、かつてオジマンディアスと名乗り、ヒーロー活動に励んでいたエイドリアン・ヴェイトだった。
戯曲「時計職人の息子」を手掛けるなど、創作活動に励み、現実離れした世界で悠々自適に過ごす日々。しかし“世界一賢い男”として名を馳せたエイドリアンには、壮大な計画があった。紳士の仮面の奥に秘めた“世界平和”への執着。狂気じみた一面が明かされるとき、はたして“熱力学的な奇跡”は起きるのか...。
細部にいたるまでこだわりが詰まった見応え抜群のドラマ「ウォッチメン」には、
観る者に“正義とは何か”を問いかける個性豊かなキャラクターが数多く登場する。
刑事と主婦、ふたつの顔を使い分ける主人公シスター・ナイトことアンジェラ・エイバー。出身地のベトナムで幼い頃に目の前で両親を亡くした彼女は、人一倍正義感が強く、困難に打ち勝つ根気強さと絶対に諦めない粘り強さをもつ。そんなアンジェラに家族という癒しを与えるのが夫カル。常に危険と隣り合わせの妻の仕事を理解し、娘たちの面倒を見る良き父だ。そんなエイバー家の前に現れた謎の老人。彼もまたアンジェラの人生に大きく関わっている人物だということが、次第に明らかになっていく...。
両親のいないアンジェラにとって、警察署長のジャッド・クロフォードは父のような存在。家族ぐるみで親交を深め、ジャッドに絶対的な信頼を置くアンジェラだったが、そんな彼にも隠し事があることを後に知ることになる。同僚には赤いマスクを被った“レッドスケア”、パンダの被り物で顔を覆った“パンダ”など、観る者を飽きさせない変わり者が揃うが、中でもアンジェラと行動を共にしているのが、鏡のように反射するマスクを被った“ルッキングラス”。得意とする尋問以外は寡黙で、淡々と任務をこなすルッキングラスだが、大きなトラウマを抱えていた。
その元凶ともいえるのが元ヒーローのオジマンディアスことエイドリアン・ヴェイト。過去に世界平和という大義名分のため犠牲を伴う決断をした彼は、世間と距離を置き、立派な屋敷で生活していた。元ヒーロー、シルク・スペクターことローリー・ブレイクも登場。現在はFBI捜査官として自警団員を取り締まる。彼女の元恋人Dr.マンハッタンは火星にいて、地球から交信することも可能とか、可能でないとか...。
その他、先端医薬品と生体医療技術で財を成した億万長者で、謎の時計塔を建てるレディ・ トリューといった新キャラクターも要注目。
原作・映画を見ていなくても楽しめるドラマ「ウォッチメン」。魅力的な新キャラクターと長きに渡ってファンに親しまれてきたお馴染みのキャラクターの豪華コラボレーションは必見だ。