プロダクション・ノート
 シッチェスでのロケは、俳優たちにとってもユニークな体験だった。国内での仕事であれば、その日の撮影を終えて家に帰ると現実に戻る。しかし、シッチェスに滞在することで、杜王町の住人であるという気持ちが途切れず、それぞれの役に集中できた。
 仗助に扮する山﨑賢人はクランクイン前から、作品に深く関わってきた。筋トレを積んで肉体を作り、衣装もきちんと着こなしていた。撮影に入ってからも、連日ランニングをしていた。山﨑がセットを済ませると、完全なる仗助がそこには立っていたのだ。
 当代随一の演技派として知られる神木隆之介。康一が血を吐く演技はあまりに真に迫り過ぎていたため、周囲にいたスタッフが本当に苦しいのではと心配したほどだった。
 アンジェロ役の山田孝之は映画の冒頭、女子大生のマンションにろう城したアンジェロがオムライスを食べるシーンがあるが、彼はまるで人体を解剖するようにナイフを使ってオムライスを解体し、シリアルキラーの異常性を発散。同様の演技は、レストランの場面でも見ることができる。また、アンジェロが仗助とスタンド・バトルを繰り広げるシーンでは、水たまりでのた打ち回るハードなアクションをこなした。一同は固唾を呑んでその鬼気迫る演技を見守り、場の空気がピーンと張りつめた。
 年長者では承太郎役の伊勢谷友介もまた、山﨑にとって良き先輩となった。共演シーンの撮影時には山﨑の質問に丁寧に答え、承太郎と仗助にも似た先生と生徒的な関係が実際にも築かれていたのだ。また、彼は現場でもムードメーカー的な役割を果たすことも多かった。