DCコミックス

DCのダーク・サイド:あらゆるタイプのホラーファンに贈る、背筋がゾッとする作品たち

アメリカで初めてのコミック・ブームが起こった当時、ほとんどのコミックスはその物語の舞台となるユニバースではなく、むしろそのコミックのジャンルを中心に考えられていたということを知っているだろうか?ちなみに“DC”という名前でさえも、もとはコミックのジャンルからきている。そう、“ディテクティブ・コミックス”の頭文字からきているのだ。そして、DCが私たちの愛するあのコウモリ漫画の象徴となる前にメインで扱っていたジャンルはというと、“ディテクティブ”の意味からもうお分かりだろう。そして数あるジャンルのなかでも、当時から常に人気上位に君臨してきたのが、ホラーのジャンルだ。現代の皆さんと同じように、1940年代や50年代の人たちも怖がることが大好きだったのだ。

今年のハロウィン、本記事ではその伝統を、せめてその精神だけでも復活させてみたいと考えた(実際、あの世の者たちが「復活」する時期でもあるのでね)。そこで、今回はコミックスがまだユニバース別ではなく、ジャンル別に分けられていた時代だったとしたら、どの現代DCホラーの名作たちがDCのホラー・アンソロジー(作品集)に入るべきかを考えてみたいと思った。

ちなみに今回、この記事でお勧めとして載せる作品たちはサブジャンルの色域をまたいでいる。ゾンビものや幽霊ものもあれば、夢のような世界が悪夢へと変わり、再び夢へと戻るようなものもあるし、それらをかいつまんでいるようなものなど、様々だ!そしてなにが最高かといえば、それらすべての作品が皆さんの家の近くの書店やオンラインショップか、「DC UNIVERSE INFINITE(英語のみ)」で今すぐ読むことができてしまうということだ!ただし、読む際は注意してほしい。これから紹介する作品にはヒーローがあまり登場しない。つまり、危険な場面にさしかかったとしても、一人きりで乗り切らないといけないのだから!

『The Nice House on the Lake(原題)』

ジェームズ・タイノンとアルヴァロ・マルティネズ・ブエノの『The Nice House on the Lake(原題)』はこのリストに入る比較的新しい作品だろう。しかし、新しいからといってこのハロウィン・ホラー・コレクションには必要ないということは決してない。この物語の始まりでは、奇妙な男が数人の男女をある場所――何を隠そう、湖畔にある素敵な家――へと招待し、一層奇妙な世界へといざなっていく。この物語はホラーあり、ドラマあり、ミステリーあり、そしてスリラーありのてんこ盛り作品だ。その上なにが最高かって?それは、この物語はどのユニバースにも属さない、完全に独立した物語であるため、予備知識なんて全く必要なく、楽しむことができるということだ。

『バットマン:アーカム・アサイラム』

バットマン・シリーズの中にはお勧めできるホラー要素満載の物語はたくさんあるのだが、中でもとりわけ恐ろしい作品を挙げるのならば『バットマン:アーカム・アサイラム』だろう。この物語はグラント・モリソンのクラクラするようなストーリーと、デイブ・マッキーンの精神を蝕むような作画とで構成されている。この作品はすでに広く知れ渡っている(そしてすでにかなり恐ろしい)あのアーカム・アサイラムを舞台にした物語だ。そしてこのアサイラムが作中において一層暗く怖い場所へと変貌する理由は、ここの住人たちがアサイラムを占拠し、バットマンを摩訶不思議な旅へといざなうことになるからだ。この作品は、コミックス作品が最も悪夢に近づいたものであると言えるだろう。

『スワンプシング』

「ボタニカル・ホラー」という言葉を聞いたことはあるだろうか?腐敗、腐食、寄生菌、(ゲーム『The Last of Us』をプレイしたことのある方やそのテレビドラマ版をご覧になった方にはお分かりかもしれない)、悪魔的なカビ、ポイズン・アイビーの花の毒…もう理解できただろう!『スワンプシング』、それはよろめく、ツタの絡まったクリーチャーであり、スーパーヒーローでもあり、自然界の力の源、は、ホラーのサブジャンルである「ボタニカル・ホラー」の最前線に立つ作品といってもいいだろう。ちなみに我々はアラン・ムーアが再構築したこのキャラクターの物語(『The Saga of Swamp Thing(原題)』としても知られる)を特にお勧めしたい。この物語は奇妙で、不安に駆られるようなビジュアル(作画を担当したスティーブン・ビセットに拍手)が満載な上、意識が高揚するような物語展開と、思わずヒヤッとする瞬間を楽しめること間違いないだろう。

「ヘルブレイザー」シリーズ

たしかに、「ヘルブレイザー」シリーズはかなり長い。それは認める。だがしかし、号数やグラフィック・ノベルの多さにどうか怖がらないでほしい(号数の多さよりも、ぜひストーリーで怖がってもらいたい)!このジョン・コンスタンティンの物語は数十年にもわたって展開されてきたものであることは確かだが、これはつまり、気になる話を選び放題だと捉えることもできるだろう。そして、素晴らしいことに、どの物語を選んだとしてもハズレはないのだ。もっとも初期の、1980年代後半の物語から始めても良いし、最新の物語から気軽に読んでみてもいい。いずれにせよ、読み終わるころにはきっと恐怖で青ざめていることだろう。もし皆さんが週替わりで新しいモンスターが登場するような物語や、オカルト系のミステリーが好きであれば、ぜひ一度「ヘルブレイザー」シリーズを読んでみてほしい。

「サンドマン」シリーズ

悪夢といえば、ニール・ゲイマン原作の「サンドマン」シリーズは悪夢だらけだ。しかし、そのシリーズの中でも、今回のホラー・アンソロジーに入れるに最もふさわしい、確実に恐怖で走り出す作品と言えばこれだろう。「24 Hours(原題)」だ。たった一話という限られたページ数の中で、ゲイマンとアーティストのマイク・ドリンゲンバーグの二人はページをめくるたびに読者をびくつかせるホラー・ストーリーを作り上げることに成功した。ちなみに、このエピソードはより大きいサンドマン・ユニバースに繋がっている内容でもあるので、ここから残りの「サンドマン」シリーズを読み進めていくことも可能だが、そこはお任せする。むしろ、右も左も分からない状態で途中から読み始めたほうが、一層怖い体験をすることができるかもしれない。

『The Low, Low Woods(原題)』

ジョー・ヒルのホラー専用レーベル「ヒルハウス・コミックス」に含まれる、価値ある数々のホラー作品のうちの一作。『The Low, Low Woods(原題)』は、全てのページにおいて、忍び寄ってくる恐怖を感じさせる作品だ。アパラチアの不吉な小さな町に、おどろおどろしく現実離れしたミステリーを混ぜ込んでいるこの物語は、この作品リストの中の他のどの作品とも一線を画していることは読めば分かることだろう。初めは正統派ミステリーとして始まる物語も、隠れた真実や奇妙な新事実で読者をゆっくりと町の奥深くへと取り込んでいく。そしてそのすべてが、ペンシルベニア州にあるこの架空の、“Shudder-to-Think(身の毛もよだつ)”という小さな町と繋がっていることが判明するのだ。

『DCeased(原題)』

さて、今回作り上げたアンソロジーをそろそろ終わらせるとしよう。最後に紹介するのは、今まで挙げてきたものの中でもっともスプラッター要素があり、知性に欠け、かつ私たちのよく知っているヒーローたちの、今までに見たことのない姿を拝める作品にしたい。これらすべての要素にぴったり当てはまる作品こそ、『DCeased(原題)』だ。この作品は反生命方程式により放たれた未知のウイルスの暴走により、世界中がゾンビのようなモンスターに変えられてしまうという、禁じ手なしの終末世界ものだ。これ以上にめちゃくちゃなシナリオはないだろうと読者が思うたびに、予想をはるかに超えた展開が繰り広げられる。この物語は、読み進めるにつれて狂気と血の量と野蛮さが増していく。それも、最高なかたちで、だ!ゾンビまみれの世界の終末と聞くだけでも最悪?では、そのゾンビたちがスーパーパワーまで持っていたらどうだろう?

ああ、DCホラー万歳!アンソロジーは今どきのものではなくなってしまったかもしれない。しかし、見てのとおり、このジャンルはまだ生きているのだ…。場合によっては、「不死」ともいえるかもしれない。では、楽しい読書の時間と、楽しいハロウィンを!

ライター:メイソン・ダウニー

注釈:この特集で述べられている見解や意見はメイソン・ダウニー個人のもので、必ずしもDCエンターテインメント及びワーナーブラザースの見解を反映するものではありません。また今後のDCの見通しを保証または否定するものでもありません。