DCコミックス

ピースメイカーって一体全体何者なんだ!?

非常に強い平和への想いと大量の武器を組み合わせたらどうなるのか。そう、ピースメイカーが出来上がる。彼は銃を持ち歩く「ヒーロー」であり、平和をこよなく愛するため、平和を守るためならば殺しも厭わない。「良いやつ」と呼ばれる人物にしてはらしくない描写に思われるかもしれないが、ピースメイカーは典型的な犯罪取り締まり人というわけではもちろんない。そして、その証拠をみなも間もなく目の当たりにすることになるだろう。世界一の平和主義者(ピースメイカー本人の言葉であり、私のものではない)は、ジェームズ・ガン監督の『スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』で銀幕デビューを果たした。そして、ドラマ「ピースメイカー」において、再びアイコニックなジョン・シナに息を吹き込まれ戻ってきた。今作も間違いなく下品で暴力満載になることだろう。大抵の平和主義者向けの映画がそうであるように。

もしもあなたがピースメイカーを映画『スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』を通してしか知らないのであれば、彼が一体どんな人物で、いったい…その…「ペニスまみれのビーチ」を食べまくることを自慢げに話すヒーローなんて、どんな奴なのかと気になることだろう。もし当てはまるのなら、このまま記事の続きを読んでほしい。ピースメイカーという人間を紹介しようではないか。

コミックスの読者たちが初めてピースメイカーに出会ったのは、チャールトン・コミックスから1966年に発売された『Fightin’5 #40(原題)』内においてである。クリストファー・スミスはジュネーブ軍事連合において、世界平和のためにスキルを駆使する外交官として働いていた。スミスは自分が平和主義者であり、どれだけ平和を愛しているのかについて周囲にしばしば話していた。それにも関わらず自身の邸宅には大量の武器が保管されていたのだ。

この邸宅は「ピース・パレス」と呼ばれていた。武器が溢れかえっている場所を表すのに大変適している名前だと思わないだろうか。このとき、スミスの頭のなかの吹き出しでは、そこに保管されている武器を絶対に使わないと心に誓っていた。しかし、そうであればなぜそれらをそもそも集めようと考えたのかが謎である。もしかすると、武器が流通するのを阻止しようとしたのかもしれない。

スミスの平和の使者としての仕事は、おのずと様々な国際的な脅威と隣り合わせになるものだった。そして、次第に彼は平和を守るためには戦うしかないということに気づくのだ。彼はこのことについて、次のように話している。「私は暴力を忌み嫌う。しかし、私が至らないばかりに多くの罪なき人々が死んでしまうかもしれない。それならば、自分が一生やらないと誓ったこと(武器を手に取ること)をやらなければならないだろう」

そうしてクリストファー・スミスはジャンプスーツを身に着け、噴射式の飛行装置を背負い、特別に武装されたヘルメットをかぶった(そう、銀色の便座に似ているあれだ)。こうして、彼はピースメイカーになった。彼は自身の象徴として白い鳩のマークを選び、本来の平和主義的な性質を表現した。それは、彼の手や頭に取り付けられている武器と対照的なものだった。ちなみにヘルメットからはレーザービームを噴射することができるのだが、それを使う度に、彼自身がどれほど暴力を嫌っているのかを読者に教えてくれる。

『Fightin’ 5(原題)』で2話分の出演を果たしてから、ピースメイカーは自身の名前を冠したコミックスにて5巻分の出番を与えられた。しかし、その後はなにも与えられなかった。彼のコミックスが終わってから、クリストファー・スミスはコミックスのページの隙間に埋もれていった。次に彼が掘り起こされたのは1980年代の、アメリカの物質至上主義の輝かしい大量消費社会の時代においてだ。その頃までにはDCはチャールトン・コミックスの権利を獲得していたので、結果としてピースメイカーは『クライシス・オン・インフィニット・アース』に登場することになり、その後同じチャールトン・コミックスに登場してきた仲間たちとともにメインのDCユニバースに統合される運びとなった。1988年になると、ピースメイカーは4号限定刊行シリーズのキャラクターとして登場した。彼の歯車が狂い始めたのはそこからだ。

何度か話した通り、ピースメイカーの狂暴性は彼の本来の平和主義的な性質と矛盾している。ライターのポール・クパーバーグはその矛盾を受け入れることで、スミスのことを狂人として描いた。このテイクのなかでは、ピースメイカーはナチス党員であった父親の霊に脅かされている人物として描かれている。父親であるウルフガング・シュミットはスミスがまだ子供だった頃に自殺をし、そのことが幼きスミスにトラウマを植え付けた。そのトラウマは一体どれほどひどいものか。ピースメイカーはミッションに挑むたびに、父親の霊の幻聴が聞こえるのだ。そしてその声は、彼の一挙手一動作を非難する。例えば自分の人生の解説ナレーションが入ったDVDがあるとしよう。そして、そのナレーションを担当している人物が自分のことが大嫌いなファシストであり、サイコパスだとしたらあなたはどう思うだろうか。そう、そんな奴が頭のなかで自分のことを永遠と罵倒し続けてくると考えれば、ピースメイカーが多少狂っていたとしても仕方がないと思えるのではないだろうか。

さらに、ピースメイカーは自身のヘルメットのなかには自分が今まで殺してきたすべての人たちの魂が宿っていると信じていた。これはとても怖い。こんな人物に、様々な武器を与えて大丈夫なものなのだろうか。そんな彼の闇がどれほど深くても、自分自身がその闇に引き込まれなければ問題ないと判断したアマンダ・ウォラーは、ピースメイカーを秘密作戦決行のためのエリート集団に誘ったのだった。その名もシャドウ・ファイターズ(ウォラーは、ピースメイカーはタスクフォースXには適していないと判断したのかもしれない)。そんなわけで、ウォラーはエクリプソを倒すべくシャドウ・ファイターズを送り出した。しかし、このヴィランは1993年の『Eclipso #13(原題)』のなかでファイターズのチームメンバー全員を惨殺してしまう。結局、スーサイド・スクワッド(訳すと、自殺部隊)というチーム名のほうが適していたと言えるのかもしれない。

死後、ピースメイカーは同様に亡くなったDCヒーローたちと一緒に煉獄へと送られた。彼は『Day of Judgement #3(原題)』において、ヒーローたち(生死にかかわらず)とともに、煉獄軍団と戦う様子が描かれている。その後、魔法のように生き返り、しばらくの間は三代目ブルービートルであるハイメ・レイエスのメンターとして活動した。

では、そんな彼は今、なにをしているのだろうか。最近、ピースメイカーは再びアマンダ・ウォラーのもとで働くようになったようだ。これにより、彼は失敗から学ばない奴だということが証明されたと言えるだろう。2019年には、『Inferior Five(原題)』においてスミスは自分専用の後方部隊を得て、自身の精神状態が崩壊していきながらもウォラーのために様々な作戦に駆り出された。ちなみに、この物語のなかで登場するピースメイカーは大半の時間を自分の被っているヘルメットと口論しながら過ごしている。それを見ていると、つい、ウォラーにもう少し真剣に人を選んだほうがいいのではないかと助言したくなる。しかし、それでもピースメイカーもやるときはやる男だ。物語のある場面では、ピースメイカーはKGビーストの顔を焼くためにヘルメットビームを使った。彼はそのムーブを「平和の幻影」と呼んだ。

ピースメイカーは現在はというと、『スーサイド・スクワッド』に登場している。そこではアマンダ・ウォラーから与えられる様々な秘密作戦を遂行するために他のタスクフォースXのメンバーたちとともに暗躍している。言い換えれば、われわれが最後に彼を銀幕で観たときと同じことを今もやっているのだ。クリストファー・スミスは彼のルーツであるジュネーブからだいぶ遠くまで来たが、胸に描かれている鳩は今でも、彼が平和の使者であるということを表している。そして、その平和を守るためなら老若男女問わず殺す、ということも。

ジェームズ・ガン監督、ジョン・シナ主演のドラマ「ピースメイカー」は現在好評配信中。

ライター:ジョシュア・レイピン=ベルトーネ
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