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ティムとバーナード:「タイタンズ」における最も興味深い関係について

「タイタンズ」のファイナル・シーズンでティム・ドレイクのアイコニックな六尺棒(ボースタッフ)が登場し、視聴者は歓喜したことだろう。ところで、もしティムがとりわけ嬉しそうに見えたのであれば、それはおそらく六尺棒を彼に与えてくれた人物と関係しているだろう――そう、バーナード・フィッツマーティンだ。

本シリーズでジェームズ・スカリー演じるバーナードは、ドラマ「タイタンズ」シリーズのなかでは初めて登場したキャラクターだが、映画「バットマン」シリーズの三代目ロビンのファンにとってはよく知られたキャラクターだ。ティム・ドレイクとバーナード――コミックス内における名はバーナード・ダウド――の歴史は20年ほど前にはじまったのだが、2人の関係性が周囲から祝福されるものへと昇格したのはつい最近のことだ。そこでコミックスにおけるそんな2人の関係性をおさらいしてみよう。

ティム・ドレイクが高校時代の同級生であるバーナードと再会したのは昨年の『Batman: Urban Legends #4-6(原題)』の回である。誘拐犯が登場し、少々の反省も含んだ冒険が終わったのち、ティムはバーナードをデートに誘い出し、彼の人生の新たなステージが始まる。しかし、バーナードからの返事は即答ではなかった。ティム同様、バーナードも自身の性自認について理解するために時間を要したのだ。これは驚くべきことではない。というのも、バーナード・ダウドはもともと(少なくとも我々の認識している範囲では)クィアなキャラクターとして描かれていたわけではなかったからだ。しかし、彼の初期の登場時の振舞いが、2人のこの新たな関係性を作り上げる基礎になったことは確かである。

『Batman: Urban Legends #4(原題)』で再登場を果たすまで、バーナードはティムの人生において記憶には残るものの、あまり見せ場のないサポート的なキャラとしてしか認識されていなかったのだ。DCユニバースにはこれまでに6回しか登場せず、最後に登場したのは2005年だった。バーナードは『Robin #121(原題)』の回で、ティム・ドレイクがルイーズ・E.グリーブでの高校生活を始めたときの同級生として初登場する。バーナードはすぐにティムに興味を持ち、ティムがスクールカーストのなかでどの立ち位置になるかを見極めようとする。

「これこそが肝心なんだ」バーナードはティムに言った。

「みんな、自分のいるべき場所を模索し、そこにはまっていく。そうやってこの世界はできているんだよ」

この台詞から、バーナードは社会によって求められている自分の役割をまっとうしようとしている姿が読み取れる。

会話が進むにつれ、バーナードはティムに気になる女子とデートへ行くことを禁止し、破った場合は「おしおきする(!!)」と言っている。この頃は、バーナードは単に風変わりで過激な親友という印象だったが、この場面は『Batman: Urban Legends #6(原題)』を読んだ後の読者にとってはまったく別の意味合いを持つ。彼が次に登場する『Robin #122(原題)』では、2人の関係性はいっそう興味深いものへと変わっていく。ティムとバーナードがダイナーで談笑しているところに、同じ高校の人気者であるダーラ・アキスタが店に入ってくる。バーナードはティムに、実は自分は彼女に惚れているが、取り巻きである運動部の連中のせいで彼女に近づくことができないでいることを話すのだ。

この場面におけるバーナードの告白はどう受け取ればいいのだろうか?バーナードがクィアであることは今となっては判明しているが、だからといって彼が当時ダーラに恋心を抱いていなかったということにはならない。自分の性自認に気づくまで人によっては長い時間がかかることもあるし、この頃のバーナードはまだ自分の気持ちについて手探り状態だった可能性もある。また、違う考え方をするなら、バーナードは当時、自分の本心を隠しており、異性愛者であると周りに認識させるためにダーラに恋をしていると嘘をついていた可能性もある。確かに、ダーラのような高嶺の花であれば、とりわけ大きなアクションをせず憧れを抱いたままという状態でも、誰も不思議には思わないだろう。

ところが、ティムはそんなバーナードの言葉を鵜呑みにし、バーナードがダーラをデートに誘えるよう、運動部の連中を説得してしまう。このとき、ダーラがティムに対して熱い視線を送っていることに気づいたバーナードは顔面蒼白になり、一気に落ち込む。筆者がこれを読んだ2004年当時、バーナードは自分が想っている人をティムに横取りされそうになるのを心配したため落ち込んでいたのだと思われたが、現代のフィルター越しでもう一度この場面を見ると、そうではなくむしろティムを彼女に取られてしまうことのほう不安に思ったのではないかと勘繰ってしまう。

この出来事による予期せぬ影響は『Robin #123(原題)』で見られる。当時ステファニー・ブラウンと付き合っていたティムはバーナードに対し、自分はすでに彼女がいるのでダーラには何の感情も抱いていないと説明する。しかし、バーナードはその言葉を信じようとしない。

「その、ステファニーなんたらって子はどこにいるのさ」バーナードはティムに詰め寄った。

「どうして僕は彼女に会ったことがないんだ? もし僕に話したいことがなにかあるなら、ちゃんと話せよ。僕たちは友達だろ。どんなことでも、きっと受け止めるからさ。僕たちは第3000年紀を生きる現代の見識ある大人の男だぞ。空想上の彼女なんて作る必要はないんだよ」

えーと、どこから話し始めたらいいのだろう。

バーナードは明らかにティムをからかっているが、直近のカミングアウトを考えると、この場面はより深い意味合いを持つようになる。バーナードはティムに、閉ざしている心を解き放ってほしいと頼み込んでいるのだが、ティムの顔を立てるためにそれを冗談めかしに話しているのだ。また、もしかすると、バーナードはティムの本心を探るためにこのような話し方をしている可能性もある。いずれにせよ、この会話はティムに分かりやすいメッセージを送っている――クィアであることは大したことではないし、気軽に話してもらって構わないということだ。この場面は、バーナードがティムに、ダーラと付き合った場合の危険性について話すところで終わっている。ここからなにが読み取られるか、考えてみてほしい。

『Robin #126(原題)』では、バーナードはドレイク家の夕食会に招かれる。そこでは、バーナードはひたすらティムの継母であるデイナに媚びを売りまくる。そして、ティムと2人きりになったタイミングで、バーナードは自分がデイナに惹かれていると永遠と話し続けるのだ。この場面も、バーナードが自分の性自認を隠していると考えれば、やはりしっくりくる。すなわち、色恋に目覚めた、ヘテロセクシャルなティーンエイジャーを過剰なまでに演じていると考えられるのだ。そしてダーラのときと同じように、またしても射止めることができない女性を恋愛対象として選んでいる。しかし、ダーラの時はティムが2人を引き合わせようとして行動したかもしれないが、デイナで同じことはさすがにない。なぜならティムがバーナードを、自分の継母とくっつけようとするはずがないからだ。

バーナードが再び登場するのは『Robin #127(原題)』において、ティムとダーラと3人でつるんでいる場面だ。この場面では、バーナードはまさか自分の隣にいる人物こそがバットマンのパートナーであるということを全く知らず、バットマンが悪の組織に関与しているのではないかという陰謀論を展開する。そして残念ながら、この場面を最後にバーナードがティムと再び顔を合わせるまで17年もの月日が流れることになる。『Batman: War Games (原題)』での一連の出来事のあと、ルイーズ・E.グリーブ高校は閉校してしまい、ティムはブルードヘイブンへと引っ越ししてしまう。その後、バーナードが再び登場するのは『Robin #140(原題)』の回で、ダーラがティムを見つけ出すために彼に協力を求めた時だ。バーナードはダーラに、学校が閉鎖されてしまってからティムとの連絡が途絶えてしまったことを話すが、彼がブルードヘイブンにいるということだけ伝える。ダーラはその後、バーナードなしでティムを探し続け、バーナードが再び登場するのはそれからさらに月日が経った後の、2021年の『Batman: Urban Legends #4(原題)』であった。

この回では、ティムは数年ぶりにバーナードと再会をし、お洒落なレストランで食事を共にする。残念ながら、彼らの再会の時間はすぐに終わってしまう。というのも、バーナードがカオス・モンスターというカルト集団のリーダーにさらわれてしまうからだ。ティムによるバーナードの捜索の過程で彼はダウド宅にたどり着き、そこでティムはバーナードの両親について興味深い観察を行う。

「彼らは常にすべてを完璧にしないと気が済まないようだった。そして、バーナードは彼らの求める完璧さに添えるように努力しているが、いまいちその期待に応えきれていないようだ」ティムは思った。

2人が初めて出逢ったとき、バーナードがティムに対し、誰もがいるべき場所があり、そこにはまっていく必要があるといった話をしたことを覚えているだろうか?彼の両親のことを知った今、この発言の意味も、バーナードの過去の挙動についても説明がつくだろう。行間を読んでみると、つまりバーナードは自分の完璧主義の両親に対し、自身のセクシュアリティについて打ち明けることに抵抗を持っていたと考えることができるのだ。

『Batman: Urban Legends #6(原題)』でロビンがバーナードを救出する際、バーナードはこのボーイ・ワンダーに対し、自分が生きてこの場所から出られなかったらティム・ドレイクに伝言を残してほしいと伝える。その内容は「ティム・ドレイクに、彼のおかげで自分が何者なのかに気づくことができたと伝えてくれ」というものだ。

もちろん、ロビンは人を救出するプロなので、バーナードは無事に生きて帰ることができる。しかも、バーナードは自分を助けてくれたのがティム・ドレイク本人だということに気づかない。物語は、ティムがバーナードのもとを訪れる場面で終わる。バーナードはティムを正式にデートに誘い、ティムがそれを受け入れ、ファンたちは歓喜するのだった。

ティムのここまでの道のりは、しばしば議題としてファンの間で取り上げられてきたが、バーナードというキャラクターの進化も同じく検証する価値のあるトピックだ。バーナードは主人公ではないので、我々はティムと同じようには彼の心情を細かく理解することはできない。しかしながら、彼の今までの言動は描かれている絵の全体像を浮かび上がらせることができるくらいの大きなパズルピースとして十分なほどだった。ティム同様、バーナードは自分が何者なのか、そしてどこに当てはまるべき存在なのかが分からずにいた。抑圧的な両親のもとに育ち、自身のアイデンティティの一部を自ら拒絶した。両親や、彼を取り巻く社会が彼のために用意した役割を演じるために、自分の生まれ持った性のままの男子高校生になりきり、絶対に射止めることのできない女性に好意を持つようにした。しかし、ロビンに話した通り、ティム・ドレイクのおかげで彼は自分の本当の姿に気づくことができたのだ。

もちろん、ドラマ「タイタンズ」に登場するティムとバーナードはより年上として描かれており、既に自らの性自認で安定しているように見える。ティムが自分の性自認についてカミングアウトをしたり、自身がクィアであると言ったりする発言がシリーズにあった覚えはない――そのようなことをする必要がそもそもなかったし、今後も恐らくないだろう。しかし、ファイナル・シーズンのプレミアで、彼はバーナードに興味を持っていることを認めている。バーナードの性自認についてはまだはっきりとしていないが、ティムが興味を持っているということが明らかになっているのになにもないというのはまずないだろう(さらに言うなら、ファイナル・シーズンのトレーラーで2人がキスしかけているので、もうほぼ確定と考えてもいいだろう)。

バーナードと、ジェイ・リクルゴ演じるティムが登場するドラマ「タイタンズ」は、独自のストーリーで進んでいくだろうが、どのような展開になったとしても、それはバットマン・ファミリーやDCマルチバースがLGBTQIA+を歓迎している良い例であることは間違いない。そして、スーパーヒーロー・ワールドでは珍しく、コミックシリーズとテレビシリーズ、それぞれ2人の関係は同時に展開されていくことになる。果たして、コミックスで夕日に向かって仲睦まじくドライブしていく2人に対し、テレビシリーズのふたりは破局を迎える、なんてこともあるのだろうか?それとも、どちらもハッピーエンドとなるのだろうか。ドラマ「タイタンズ」と、現在連載中のティム・ドレイクのコミックシリーズ両方において何が起こったとしても、おそらくこれだけは変わらないだろう――バーナードは『Robin #3(原題)』と彼のファンに対し、ティムが何者なのかをしっかりと教えてくれる存在となるのだ。

「タイタンズ」ファイナル・シーズンは現在配信中&DVD好評レンタル中!

ライター:ジョシュア・レイピン=ベルトーネ
Xアカウント(英語のみ):@TBUJosh

注釈:この特集で述べられている見解や意見はジョシュア・レイピン=ベルトーネ個人のもので、必ずしもDCエンターテインメント及びワーナーブラザースの見解を反映するものではありません。また今後のDCの見通しを保証または否定するものでもありません。