DCコミックス

「ドゥーム・パトロール」に見る:なぜコミックスの登場人物たちに惹かれるのか

DCユニバースに惹かれる理由は人によって異なる。現実逃避を目的としている人もいれば、素晴らしいアートワーク、ノスタルジア、はたまたそれらを掛け合わせたものなど様々だろう。私個人に関して言えば、長編連載の物語を追うのが好きだからだ。人によっては、コミックスの登場人物たちに憧れを抱き、お気に入りのスーパーヒーローと同じ能力や知恵を身につけたいと考えている方もいるかもしれない。

ドロシー・スピナーはまさに、憧れのスーパーヒーローのようになりたいと願っていた。ドラマ「ドゥーム・パトロール」を観てきた人なら、彼女が最近直面している問題について少し理解しているだろう。ファイナルシーズン第4話「ケイシー・パトロール」では、「ケツ末 」の物語(知っている人は知っている)から少し休憩をとり、ドロシー、モーラ・リー・コラプトと救急車ダニーの現状に焦点を当てている。この回はドロシーと、彼女のお気に入りのコミック誌に登場するキャラクターであるスペース・ケイスとの関係性が垣間見える興味深い内容となっている。

スペース・ケイスとは、ケイシー・ブリンクのスーパーヒーローとしての別名である。ケイシーは、ジェラルド・ウェイとニック・デリントンが描くはちゃめちゃ物語『ドゥーム・パトロール』の連載に登場するキャラクターだ。連載の中では、救急隊員として働いていたケイシーが、実は自分は『スペース・ケイス』というコミックスに登場するキャラクターで、なんらかの形で現実世界に迷い込んでしまった存在であるということに気づく。この事実は、彼女の世界を大きく変えるもので、当然ながら彼女はトラウマを抱えるようになる。スペース・ケイスは今回の「ケイシー・パトロール」で晴れてこのドラマシリーズでデビューを果たすが、ストーリーに多少新しい要素は加えられているものの、衣装も含め、大筋はもとのコミックスにかなり忠実に再現されている。

話を戻してドロシーに注目しよう。彼女は現在、すっかり臆病になってしまっている。ダニーが創り出す小次元の中に閉じこもり、外の世界を遮断している。ほとんどの時間をトレーラーの中で過ごし、ひたすら『スペース・ケイス』のコミックスに読みふけっている。ドロシーは誰からも切り離されたような孤独を感じており、モーラ・リーやダニーといった友人さえも押しやってしまう。しかし、ずっと憧れていたスペース・ケイスが現実となって目の前に現れた時だけは、その興奮を抑えきれない。

まあ、自分の隣人たちが全員洗脳されたサイボーグへ変えられている状況ならきっと誰もが彼女と同じくらい興奮してしまうとは思うが。もし、本エピソードを見返す機会があれば、是非、ケイシーが話すたびにドロシーがどのように反応しているのかに注目してほしい。

話が進むにつれ、ドロシーがなぜケイシーにこれほどまで惹かれているのかが明らかになっていく。ドロシーはまだ完全には自分の父ナイルスの死を受け入れきれずにおり、同時に自分自身の今までの育てられ方について気持ちの整理がついていないのだ。はじめ、ドロシーは自分で物語を作り上げることでこのモヤモヤを隠そうとした。その物語は、キャンドルメーカーとともに盗んだお守りにより、彼女が亡き父の魂と交信できるようになった、というファンタジーものだった。実際は、これは「デッドボーイ探偵社」に登場したストーリーをなぞっているもので、ドロシー自身は結局怖くてお守りを使えない。

そんなドロシーとは反対に、ケイシーは冒険することを恐れない。「デッドボーイ探偵社」をなぞる必要もなければ、空想上の友達に盗みをさせる必要もない。ケイシーの最大の敵であるトルミノックスは、彼女自身の父親が変異した状態なのだが、スペース・ケイスは彼と対決することについても、なんら不安を覚えない。

ここまで書けばもうお分かりだろう。そう、ケイシーはドロシーにとって難しいことをなんでもいとも簡単にやってのけるのだ。それゆえ、ドロシーにとってケイシーは憧れの存在なのだ。

しかしながら、回が進むにつれ、実はケイシーにはドロシーと共通点がかなりあるということが判明していく。スペース・ケイスが現実世界に出てきて、自分の行動に伴い様々な結果がもたらされることに気づいてから、彼女は徐々に自信を失っていくのだ。父親を完全に倒してしまったら二度と会えなくなってしまうのではと不安になり、彼と対峙することに怖気づいてしまう。そしてケイシーがこれらの不安を打ち明けることで、ドロシーは、彼女も、そして自分自身も、その恐怖と向き合わなければならないということに気づく。とりわけ、自分たちの父親に関する恐怖と。

私はさらにケイシーとドロシーの共通点について考えてみた。そして、番組内では明確には指摘されないものの、他にも似通った点が存在することに気づいたのだ。まず、二人とも現実世界から離れた、隔離され孤立した場所で育っている。ナイルスは、現実世界に娘が放たれてしまったときに起こる様々な問題を危惧し、ドロシーをダニーの中にずっと隠していた。かたやケイシーは、コミックスの中の登場人物の一人として生きてきた。しかし、現実世界に飛び出すことで彼女は「ドゥーム・パトロール」シーズン2におけるドロシー同様、「死」という概念と向き合わなければならなくなった。

二人のこの繋がりには、視聴者へのメッセージが隠されているように思えてならない。もしかすると、われわれは自分たちのお気に入りのスーパーヒーローと、自分が思っている以上にどこか重なる部分があるのではないだろうか?だからこそ、こんなにも彼らに惹かれるのではないだろうか?残念ながら、グリーン・ランタンやファイヤーストームがコミックスの中から飛び出して、自分たちが抱えているトラウマを語り出してくれる予定はいまのところない。そのため、ドロシーと同じようにはこの疑問を検証することはできない。しかし、「ケイシー・パトロール」を見ながら、われわれ自身が、自分の愛するキャラクターとの間にリンクするものがあるのではないかと思わずにはいられなかった。

自分のお気に入りのDCヒーローを思い浮かべてから、そのキャラクターと自分の共通点について考えてみて欲しい。そもそも、われわれが「ドゥーム・パトロール」にこれほどまで惹かれるのは、誰しもが「変人」だからかもしれない。もちろん、ロボットの体の中に入っている脳みそでもなければ、関係恐怖症を抱えたミイラ男でもないのは確かだ。しかし、彼ら同様、自分が周りと「違う」と感じたことは、誰しも経験したことがあるのではないだろうか。そういう意味では、つい次から次へと冒険をともにしたくなるこのシリーズのカラフルな登場人物たちとわれわれは、思っている以上に似ているのかもしれない。

「ドゥーム・パトロール」シーズン4は現在配信中だ。ところで色々なものを知覚できる歩くケツが変な動きをしているのを見ていないだろうか?見つけ次第、是非「ドゥーム・パトロール」の公式ページに報告してほしい。

「ドゥーム・パトロール」シーズン1~4は現在好評配信中!

ライター:ジョシュア・レイピン=ベルトーネ
Xアカウント(英語のみ):@TBUJosh

注釈:この特集で述べられている見解や意見はジョシュア・レイピン=ベルトーネ個人のもので、必ずしもDCエンターテインメント及びワーナーブラザースの見解を反映するものではありません。また今後のDCの見通しを保証または否定するものでもありません。