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予測不能なレディー ~ハーレイ・クインを彩る12の出来事

一人の精神科医が、いかにしてDCユニバースでも最も人気を誇るキャラクターになったのだろうか?ハーレイ・クインは誕生から30年以上の歴史を誇る。ハーレイが生み出した遺産を考えると驚かずにはいられない。ハーレイはジョーカーやバットマンの影から抜け出し、自らが主役を演じるコミックやアニメ、映画を持つまでになった。ここまでどうやってたどりついたのだろうか?彼女を今日のスーパースターに押し上げた12の出来事を振り返ってみよう。

1.初登場

1992年9月11日、世界中のDCファンが「バットマン: アニメイテッドシリーズ」を見るためにチャンネルを合わせていた。このとき、アニメシリーズの歴史が作られていたことを誰も知る由もない。エピソードのタイトルは『Joker’s Favor(原題)』。チャーリーという平凡な男を巧みに操る道化王子を中心にストーリーは展開される。このシリーズが始まったとき、ライターのポール・ディニは、ジョーカーの仲間に女性を入れたら面白くなるかもしれないと考えていた。アダム・ウェスト主演のバットマンシリーズに出てくる犯罪者の愛人のようなキャラクターだ。

ディニは、昼のドラマ「デイズ・オブ・アワ・ライブス」に道化師の格好をして出ていた友人のアーリーン・ソーキンを見て、彼女をこの役に抜擢することを思いついた。そしてこの思いつきは大当たりした。ソーキンの声はハーレイに滑稽で荒れ狂ったような個性を与え、後にこのキャラクターをスーパースターへと押し上げるきっかけを作ったのだ。

この初登場以降、キャラクターは驚くほどの進化を遂げた。『Joker’s Favor(原題)』のなかでは、ハーレイ・クインとジョーカーがカップルになるという予兆はどこにも見当たらない。また、ハーレイのセリフには医学部ではなく美容学校という言葉が出てくる。さらに、トーク番組の司会者である アーセニオ・ホールのジェスチャーをまねる場面などもあるのだ。(知らない人は両親に聞いてみるといいだろう。)

ハーレイの出演は元々この1回きりの予定だったのだが、ソーキンの演技には何か不思議な魅力があった。彼女の「ミスタア ジェイ」という言い方や、タイムリーに繰り出すジョークは、誰にとっても記憶に残るものとなった。もしハーレイ・クインが登場しなければ、DCユニバースは今とはまったく違ったものになっていただろう。

2.アイビーとの出会い

数か月後の1993年1月18日、視聴者は素晴らしい関係の始まりに立ち会うことになる。「バットマン:アニメイテッドシリーズ」のエピソード『Harley and Ivy(原題)』で、ハーレイ・クインとポイズン・アイビーがコンビを組んだのだ。その後は知ってのとおりだ。

ジョーカーにフラれた後、ハーレイはポイズン・アイビーと2人の魔性の女性たちと出会い、映画『テルマ&ルイーズ』のように次々とド派手な犯罪を繰り広げる。2人の相性は最初から抜群で、妖艶なアイビーを喜劇的なハーレイが引き立てる構図となった。この組み合わせは実に面白く、脚本家は、その後も2人をペアにしたエピソードや、抱き合わせのコミックなどを世に出し続けた。

アイビーとの友情は、ハーレイのキャラクターを根本的に変えることになった。彼女自身のキャラクターを確立させるとともに、DC史上最も魅力的な女性コンビのひとつとなった。

3.誕生の物語

1993年12月13日にDCは『The Batman Adventures: Mad Love(原題)』を刊行。これは評判の高いワンショット(読み切り)で、ここで初めてハーレイの起源が明かされた。フラッシュバックによれば、彼女は今でこそジョーカーの悪名高きパートナーとなっているが、かつては精神科医のハーリーン・クインゼル博士であった。アーカム精神病院に研修医としてやって来た博士はジョーカーを担当する。そして道化王子が、その機会を利用し博士を心理的に操っていく。やがてジョーカーに恋をしてしまったハーリーンは、自分の築き上げてきた人生を捨て、 “愛しのプリンちゃん”を一途に思うカリスマ的な混沌の案内人、ハーレイ・クインとなったのだ。

このワンショットは「バットマン:アニメイテッドシリーズ」を世に送り出したクリエーターであるディニとブルース・ティムによって書かれた。ネットワークテレビの制約から解放され、ハーレイを突き動かしているものや、負の側面であるジョーカーとの関係を掘り下げることができた。また読者がこれに大いに反応し、このコミックはアイズナー賞の最優秀ワンショット賞(1号読み切り)を受賞する。また後の1999年に「The New Batman Adventures(原題)」のなかでアニメ化された。もしハーレイ・クインのキャラクターを熟知したいのであれば、『The Batman Adventures: Mad Love(原題)』は必読だろう。

4.初のアクションフィギュア

1997年にケナー社から、『The Adventures of Batman and Robin(原題)』のおもちゃの一部として、ハーレイ・クインのアクションフィギュアが発売された。これがなぜ重要かというと、2022年の今日、ハーレイ関連の商品は巷にあふれているからだ。数えきれないほどのアクションフィギュア、スタチュー、人形、Tシャツ、バックパックなど、商品として考え付くものなら何でもある。もしコミコン(あるいはネット通販のホットトピック)に行ったことがあるなら、おそらくあなたも目にしていることだろう。

しかし全ては、この控え目なアクションフィギュアから始まったのだ。つまりこの13センチの美女は歴史的観点からしてとても貴重である。ハーレイの初フィギュアにはボクシンググローブが先端についたロケットランチャーとフラッグガンがついてきた。もしこの初代フィギュアを持っている人がいたら、大事にすることをおすすめしたい。なにせ、ハーレイ・クインの歴史を語る宝物を持っているのだから。

5. DCのメインストリームへ

1999年までに、ハーレイがゴッサム・シティにかつてないユニークさを吹き込んだことは間違いない。唯一の問題は、メインストリームの継続性のなかに取り込まれていないことだった。しかしそれも、今も根強い人気がある『Batman: Harley Quinn #1(原題)』が発行されたことで変化した。これはバットマン・ファミリーの活躍を描く1年間続いたシリーズ『No Man’s Land(原題)』のストーリーの一部として書かれ、DCユニバースにおけるハーリーンの位置を確立した。ハーレイを生み出したディニが再び脚本を執筆し、アニメイテッドシリーズで既に描かれたハーレイの起源に近い設定となった。また、ポイズン・アイビーとの友情や、ジョーカーとの健全とはいえない関係も描かれた。ハーレイ・クインはついに確立されたものになり、ゴッサム・シティはより魅力的な場所になった。(彼女の被害者にならない限りはだが…。)

6.アーカムゲーム

2009年にロックステディ社から発売された『バットマン アーカム・アサイラム』は、画期的な家庭用アクションアドベンチャーゲームで、ダークナイトの世界観を見事に表現している。「バットマン:アニメイテッドシリーズ」や、その類いを見て育った大人のファンを意識し、バットマンはケヴィン・コンロイ、ジョーカーはマーク・ハミルが声を担当した。となれば、ハーレイ・クイン役にアーリーン・ソーキンが復帰するのも自然な流れだろう。

このビデオゲームでは、メイド・オブ・ミスチーフは完全なイメチェンを図っており、ピエロのコスチュームに代わり、赤と青のビスチェを着て、太ももまでのブーツを履いている。『バットマン アーカム・アサイラム』とその後続くことになるシリーズは、ハーレイのコミックや関連商品がこの新しい衣装を取り込むようになるほど人気を呼び、ゴッサムで人気の問題児をさらに多くの人たちに広めることになった。なかでも最も喜ばしいのは、ハーレイがこのシリーズにおいて欠かせない要素のひとつになったことだ。アーカムユニバースの彼女の最新アドベンチャーである『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティスリーグ』も発売されたばかりである。

7.ハーレイ・クインへの非難

DCユニバースが「New52(原題)」で再始動した際、ハーレイ・クインは劇的な変化を遂げた。新たな外見、新たな起源、そして完全に新しいチームに所属することになった。2011年の『The Suicide Squad #1(原題)』で、ハーレイはタスク・フォースXの一員となり、それ以来、この最凶チームから逃げ出そうと企んでいる。この新しい設定になって以来、ハーレイ・クインはスーサイド・スクワッドを象徴するキャラクターとなり、コミックにも何度となく登場し、スーサイド・スクワッドの2つの映画にも出演している。(映画については後ほど触れる。)

再始動の一部として、ハーレイの起源も再考された。『The Batman Adventures: Mad Love(原題)』で構築された要素の大部分は残されたが、ジョーカーの起源と同様に、彼が化学薬品のタンクにハーリーンを突き落としたことでハーレイが誕生した設定になった。この件で精神に異常をきたすとともに、彼女の肌は薬品の酸によって白くなってしまった。以前の彼女の青白い肌は、メーキャップで作られていたのだ。さらに、コミックの「New52(原題)」でもピエロの衣装は封印され、アーカムビデオゲームで身に着けていた衣装に近いものとなった。

こうした変更が物議を醸すことは分かっていたが、「New52(原題)」はさらなる設定の変更を行った。多くのファンも支持はしていたのだが、その変更というのはハーレイとジョーカーの永遠の別れだ。2012年の『Suicide Squad #15(原題)』で、ハーレイはジョーカーの舌を噛みちぎってまで、ジョーカーとの決別を宣言したのだ。2人はそれまでにも何度となく別れているのだが、ハーレイがすぐに彼の元へと戻り、負の連鎖を繰り返していた。しかし今は、ジョーカーからの解放が彼女のストーリーの一部として受け入れられ、更に期待されるようになった。

8.ジャスティスリーグへの参戦

2013年、ネザーレルム・スタジオズ社がビデオゲーム『インジャスティス:神々(ヒーロー)の激突』を発売。「モータルコンバットシリーズ」を引き継いだ格闘ゲームで、ゲームの続編、人気のコミックシリーズ、そして2021年にはアニメーション映画が公開されるなど、次々にフランチャイズが生み出された。

『インジャスティス:神々(ヒーロー)の激突』は、スーパーマンがジョーカーを殺した後に勃発したバットマンとスーパーマンの間におけるスーパーヒーローの内乱を描いていたものだ。衝撃的な裏切りや、人気キャラクターの劇的な死などが展開されるなか、ハーレイがかつてないほど前面に押し出されたということは見過ごされがちだ。最初のゲームでは、ハーレイがバットマンの軍に加わり、バットマンと彼の仲間と共に戦う。そして続編では、ハーレイはバットマンの右腕となり、ジャスティス・リーグの一員となるところで終わる。タイアップコミック『Injustice: Ground Zero(原題)』は物語がハーレイの視点で描かれていて、読者は彼女の心理的な変化を垣間見ることができる。ジョーカーの死を受け入れるまでの葛藤や、過去にジョーカーから受けた虐待が原因となったハーレイのPTSD、そして徐々に足を踏み入れていくヒーローの世界、さらにはグリーンアローとの絡みもある

タイトルは“インジャスティス”かもしれないが、極悪ではない役を演じるハーレイを見ることを望んでいるファンにジャスティスをもたらしている。

9.ジミー・パルミオッティとアマンダ・コナー

さらに2013年には、ジミー・パルミオッティとアマンダ・コナーのクリエーターコンビによる4年に及ぶハーレイ・クインの物語が新たに始まった。より深く再考されたキャラクターは、ハーレイに新たな世界観を吹き込み、コミックの世界を飛び出していくことになった。

パルミオッティとコナーが共同で脚本を書き、コナーはカバーのイラストも書きおろしている。

コナーとパルミオッティのハーレイ・クインは、拠点をゴッサム・シティからコニーアイランドに移し、そこで新たな生活を始める。ローラーダービーのチームに入り、一風変わった住人たちの住むアパートの大家となった。彼女のコスチュームは再び変更され、オリジナルのピエロの要素と、アーカムゲームのビスチェとホットパンツを組み合わせた衣装になった。このシリーズはDCのベストセラーとなり、2016年のDCリバースイベントの一部としても続いた。

実際、コナーとパルミオッティのキャラ付けは際立っており、生みの親であるポール・ディニとブルース・ティム以来、彼らは最もハーレイのキャラクター構築に関わったクリエーターだといえるだろう。

10.ハーレイとアイビーのファーストキス

1993年に初めて出会って以来、ハーリーン・クインゼルとパメラ・アイズリーは切っても切れない関係にある。2016年まで、2人はコミックのなかで数えきれないほど共演してきており、2人の名が冠されたリミテッドシリーズや、キャットウーマンと共に「ゴッサム・シティ・サイレンズ」のメンバーにもなっている。彼女たちがベストフレンドであることは周知の事実だったが、それ以上の何かがあるのではという憶測も飛び交っていた。1997年の『Batgirl Adventures(原題)』でその考えがほのめかされたが、2人が恋人同士であるというアイデアは、長いことファンフィクションのなかや掲示板でささやかれるにすぎなかった。ほのめかされることはあっても、正式に認められることはなかったのだ。しかしそれを『DC Comics: Bombshells(原題)』が覆した。

売れ筋のDCスタチューコレクションをベースにした『DC Comics: Bombshells(原題)』は、DCの人気女性キャラクターを第二次世界大戦時におけるヒーローとヴィランとして再考したオルタネイトユニバースだ。『DC Comics: Bombshells #42(原題)』で、ハーレイとアイビーは雪がちらつくベルリンの街を楽しそうに歩き、輝く月明かりの下でいちゃつき始める。そして少しじゃれ合った後、アイビーからキスを誘う。コミックの冒頭を飾るのは抱擁を交わす2人の美しい姿だ。これは、ファンではなくDCが公式に描いたハーレイとアイビーのキスシーンだ。これによって2人の関係は永遠に変わることになる。その後もキスはメインストリームのなかにも取り込まれ(2017年 『Harley Quinn #25(原題)』)、2019年のアニメイテッドシリーズにおいても2人のラブストーリーが物語のベースとなった。

11.マーゴット・ロビーの加入

いろいろな意味でマーゴット・ロビーの抜擢は、果てしない数のコスプレを生み出すことにつながった。2016年にデヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』でタスク・フォースXが映画デビューを果したが、もちろんそこにハーレイ・クインも名を連ねた。

ロビーが演じたハーレイは、このキャラクターに新たな息吹を吹き込んだ。ハーレイの映画デビューとなったこの作品で、才能豊かな女優が全身で体現したハーレイはファンの関心をさらった。どのコミック・コンベンションへ行っても、ロビーの演じたハーレイのコスプレをした人たちに出くわすことになる。数人どころか大勢いるのだ。

ロビー演じるハーレイは絶大な人気を得ることとなり、後に自身が主役となる映画が制作された。2020年の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』だ。2021年には、ジェームズ・ガン監督の『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』に、再びタスク・フォースXの一員として参加し、視聴者に笑いとアクション、そして無償のバイオレンスを届けている。

12.テレビ番組で主役に

2019年、ハーレイ・クインはアニメーションに復帰した。しかし今回はスターとしての出演だ。

「ハーレイ・クイン」(HBO Maxでシーズン3が終了した)はメイド・オブ・ミスチーフ役にケイリー・クオコを迎え、愉快でときにぶっ飛んだ自己発見の旅を繰り広げる。大人のユーモアがあちこちにちりばめられているが、単なるコメディーにとどまらない。ハーレイの旅は、ジョーカーの元を去り、彼から虐待を受けていた事実を受け入れ、最終的にベストフレンドのポイズン・アイビーに恋をするという、情緒に訴える側面がある。さらには、70代のサイボーグ(彼はコナーとパルミオッティのコッミクで初登場した)とモンスターの妹との和解、サイドストーリーとしてのジョーカーの贖罪、にわかには信じがたい梟の法廷の狂乱、ベインの行動をからかった無数のジョークなど内容は盛りだくさん。手短に言うと、私たちの愛するハーレイのすべて、つまり純粋さや楽しさが詰まった完全無欠のカオスなのである。そしてこの勢いはすぐには止みそうにない。シリーズは第4シーズンを控えており、このシリーズで一際目立ったカイトマンのスピンオフも予定されている。

たった1話のエピソードに出演するだけの予定だったキャラクターにしては上出来だったといえるだろう。

多くの人が30歳になる前に成功したいと願うものだ。その点では、ハーレイはすでに達成したので安心していいだろう。初登場から30年以上、ハーレイのキャラクターは大きな成長を遂げ、ジョーカーの影から抜け出し、見事に独自路線を突き進んできた。これには私たちも驚きを隠せない。さらに、初登場から30年以上を迎えたキャラクターとして注目に値するのは、彼女の旅がまさに始まったばかりということだ。果たしてハーレイは、ゴッサムにおける最高のヒーローの1人となれるのか?元々の役回りであるヴィランに回帰するのか?ポイズン・アイビーとの関係は、DC史上最も長く続くカップルとなり得るのか?さらなる映画が製作されるのか?ビデオゲームは?あるいは実写版のテレビ番組か?(既にオーディオシリーズは準備が進んでいる。)

この先何が起こるかは未知数だが、ハーレイから学んだことが1つあるとすれば、彼女は私たちの期待を決して裏切らないということだ。

ライター:ジョシュア・ライパン=ベルトーネ
Xアカウント(英語のみ): @TBUJosh

注釈:この特集で述べられている見解や意見はジョシュア・ライパン=ベルトーネ個人のもので、必ずしもDCエンターテインメント及びワーナー ブラザース の見解を反映するものではありません。