DCコミックス

質問してみよう「ジョーカーの落書き「Ha Ha Ha」はいつ生まれたのか?」

アスク・ザ・クエスチョンにようこそ!私の名前はアレックス・ジャフィー。DC コミュニティーメンバーであれば私のHubCityQuestion名義の記事(英語のみ)をご存じかもしれません。DCユニバースという広大な世界の歴史から小さな出来事まで、みなさんの持つ疑問にお答えするのが私の役目です。どれほど些細であいまいな疑問でも構いません。いつでも私のバーチャルオフィス(英語のみ)に立ち寄って投稿してくれれば、後日、私の知識で可能な限りの回答をお届けします。では、さっそく答えていきましょう!

この記事を読みに来ているみなさん、思考を広げようじゃないか

IYQbdさんからの質問
ジョーカーが巨大な「HA HA HA」をそこら中に描き始めたのはいつからでしょうか?

ジョーカーの笑い声を表すグラフィティがこのキャラクターの象徴となったのは、2008年公開『ダークナイト』の広告ポスターで起用されたところからで、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』ではロビンのコスチュームの胴体部分にも描かれました。では、ジョーカーが落書きを通して自己表現を始めたのはいつだったのでしょうか。

ジョーカーの「HA HA HA」が初めて登場したのは、1946年出版の『Detective Comics#109(原題)』。しかし、この時はまだグラフィティとしてではなく、ジョークの館を建設中のジョーカーが並べるレンガに文字として書かれていたのです。さらに、同年に出版された『Detective Comics#114(原題)』では、街中の看板にいたずらをして「HA HA HA」の文字を残していきました。この段階でも、看板に元から書かれた文字やライトに手を加える方法だったので、まだあのスプレーを使った落書きではありませんでした。近しいことはしているのですが、同じものとは呼べないでしょう。

ジョーカーが初めて「HA HA HA」と壁にハッキリと落書きしたのは、1948年出版『Batman#46(原題)』でのことでした。長いメッセージの一部として書かれていたので、私たちに親しみのある巨大な文字とは違い、あくまでもメッセージを際立たせるための笑い声として書かれていました。

すぐ下の1949年出版『Detective Comics#149(原題)』の画像は、今回の質問とは全く関係ありません。ただみなさんに見せたかっただけです。

ここで少し時間を巻き戻します。「HA HA HA」の件はさておき、芸術的ないたずらが好きなジョーカーのイメージは、そもそもどこからやって来たのでしょうか。ポップカルチャーのなかで登場するバットマンの主要キャラクターを想像してみてください。多くの場合、1960年代のバットマンTVシリーズがモチーフになっています。今回も例外ではなく、シーズン2の『Pop Goes the Joker(原題)』というエピソードが元でしょう。ジョーカーと仲間たちが、アートギャラリーに忍び込み絵画に落書きをするのですが、そこから偶然ポップアートの流行が始まるというストーリーでした。1989年公開の映画『バットマン』での美術館強盗の有名なシーンに影響も与えています。似ている例として、60年代のTVシリーズでペンギンが市長に立候補する物語が、『バットマン リターンズ』のストーリーの元になったこともありました。

ふたを開けてみれば、私たちが慣れ親しむ「HA HA HA」がモチーフのグラフィティを初めて描いたのはジョーカーではありませんでした。1999年開始の『Batman Beyond(原題)』パイロット・エピソードのなかで、ネオ・ゴッサムを拠点とするギャングであるジョーカーズが、テリーの父親ウォーレンの殺害をほのめかす落書きを残します。グラフィティはその一部として描かれたのでした。しかし、事件の真相は異なり、デレク・パワーズの用心棒、Mr.フィックスが雇い主の命令でウォーレンを殺害したことが判明します。複雑な状況が絡んではいましたが、これ以降、笑い声のグラフィティはジョーカーを象徴するものになりました。その1年後「Batman Beyond: Return of the Joker(原題)」で、この落書きがバットケイブに描かれたほどです。次の逮捕理由は器物損害で間違いないでしょう…。

プライズ・ファイター

MiscellaneousSoupさんからの質問
ロイス・レインはピューリッツァー賞を何度受賞しているのでしょうか?受賞シーンがコミックス内で描かれたことはありますか?

私たちが知っているなかでは、1967年出版『Superman’s Girl Friend, Lois Lane #80(原題)』にて、ジャーナリズム界で最も権威があるピューリッツァー賞を一度受賞しています。しかし、どの記事が認められて受賞したかは語られていません。今日に至るまで、ピューリッツァー賞を受賞した記事で文字として記されたものは2006年公開『スーパーマン リターンズ』にしか出てきません。

映画のなかでロイスが書いた受賞記事のタイトルは、「世界がスーパーマンを必要としない理由」でした。この記事が執筆されたのは、スーパーマンが地球を長期的に離れていた時期でした。この時期が初代スーパーマンのクリストファー・リーブから次代ブランドン・ラウス出演の映画までの間であることが暗示されています。スーパーマン不在によって不安に駆られたメトロポリスの住民に向けて自信を取り戻すように語り掛ける内容の記事だったのです。

しかし、これまでルイスの功績に関する議論が無かったわけではありません。ニューヨーク・タイムズ編集者であり、コミックス関連の記事を書いているジョージ・ジーン・ガスティネスは、2019年にこの疑問について現代版ロイス・レイン・シリーズのクリエイティブ・チーム担当である、グレッグ・ルッカ とマイク・パーキンスに質問をぶつけました。ルッカとパーキンスは2通りの回答をしました。スーパーマンが初めて現れた際に書いた記事でピューリッツァー賞を受賞したという見解のルッカ。一方で、スーパーマンが現れる前にすでに受賞はしていて、スーパーマン関連の名物レポーターになる前に記者としての信頼を得ていたという意見のパーキンス。ルッカに最大限の愛と敬意を払ったうえで個人的な意見を言うとすると、ここだけの話パーキンスの説の方がいいと思います。

影響力の乏しいシィナー

jetblackrlsh.82332さんからの質問
ひと昔前、DCマルチバースを生み出したのはシィナーであることが『Rann-Thanagar: Holy War #6(原題)』で明言されていました。しかし、最近になってパーぺチュアこそがDCマルチバースの創造者であることが確定しました。『Infinite Frontier(原題)』の重要な構想の1つは、過去に起きた全ての出来事を歴史として確立することだったはずです。ということは、パーぺチュアとシィナーが2人でDCマルチバースを創ったということでしょうか?もしそうであれば、シィナーとパーぺチュアには何かしらのつながりがあるのでしょうか?将来的にこのキャラクターたちが関わり合うことはありますか?

執政官シィナーと、スコット・スナイダー作『ジャスティス・リーグ』の パーぺチュアの関係性について言及している作品は存在しません。もともとシィナーは、ジェム(サターンの子)の敵として1980年代に登場していました。しかし、DCの歴史上で脚光を浴びてこなかったコズミック・キャラクターを集めた2008年出版のジム・スターリンによるミニシリーズ以降は全く登場していません。これではシィナー自身の話と食い違っているように見えますが、みなさんに納得いただける説明をいくつかします。『ジャスティス・リーグ』とつながっている『Dark Nights: Death Metal(原題)』のなかで、パーぺチュアこそがアンチモニター やダークサイドなどの歴代ヴィランたちを通して、DCユニバースに悪影響を及ぼし続けていた黒幕であることが判明しました。つまり、シィナーの行動さえも、パーぺチュアが裏で糸を引いていたとも考えられます。『Holy War(原題)』のなかでシィナーが語っていますが、想像から万物を創り出す力を彼に授けた「神」こそが、パーぺチュアだったかもしれません。

もう1つの説明は見落とされがちですが、『Dark Nights: Death Metal(原題)』と、それに続く『Infinite Frontier(原題)』の物語で描かれた卓越した結末に関わるものです。そもそもDCコミックスのなかで起きた出来事の全てを歴史として認める必要はありません。主要キャラクターたちは、自分に複数の過去があることを認識し始めたのです。そのため、各キャラクターが現在の世界とは異なるバージョンの過去を複数覚えていることもありえます。つまり、アダム・ストレンジやホークマンが記憶している過去の一つがシィナーによって生み出された世界であっても、現在進行形の世界を創ったのが別の存在であることもあり得るのです。

上記の説よりもシンプルかつ一番筋が通るものがあります。『Holy War#6(原題)』を読む際に注意してほしいのは、この情報の出所です。シィナーは自分自身が究極の力を持っていると偏執的に信じる暴君です。だとすると、読者に対して万物を創り出したのが自分だと言うのは当たり前でしょう。思い込みが激しいタイプかもしれません。しかし、オリンポス山の支配者がマキシー・ゼウスではないように、スーパーヴィランがいうこと全てを真に受けないほうが賢明であることはアドバイスしておきましょう。

私たちの神聖なる天使たち

Wrightline1.42741さんからの質問 今回の質問は、スペクターの存在に関する私の理解(もしくは誤解)についてです。神が創造したもの(地球やそのほかの世界)が常人には対処できない危機によって脅かされるとき、なぜスペクターは時々しか現れないのでしょうか?

彼は、神の化身として私たちが住む美しい惑星に存在しているはずです。だとすると、危機を取り除くために行動を起こすべきではないでしょうか。あるいは、地球の危機は彼にとっては管轄外ということなのでしょうか。

Wrightlineさん、あなたからの疑問はまさに、これまで多くのスペクターの物語で取り上げられてきた葛藤についてです。刑事のジム・コリガンは殺された後、人間の姿をした神の使いスペクターに選ばれます。彼自身は与えられた力で人類を守りたいと考えているのですが、神から授かった強力な力を持つスペクターには、他のスーパーヒーローとは大きく異なる点があります。どの事件に介入するかを自分では決めることができないのです。

信仰のなかに天使の存在がある宗教では、各天使に1つずつの役割が与えられており、その役割こそが存在意義であるため道を踏み外すことができないといわれています。人間の宿主にスペクターの力を与える天使アスターも例外ではありません。それぞれが個別の役割を担う天使のように、神の意思全体ではなく、その一部である「神による報復」の化身がスペクターなのです。スペクターは災厄を事前に防ぐことは出来ません。背けば個人の意思の押し付けとなり、役割から逸脱する行為になるからです。あくまでも既に起きた悪事に対してのみ罰を与えることができます。これまでにコリガンが自分の意思で事件に関わることを許された際、彼の神聖な力の大部分は使えなくなりました。条件さえそろっていれば、スペクターはDCユニバースのなかで最も強力な存在の一人なのです。しかし、同時に自身の役割から外れた場合は無力になります。

ただ、興味深い哲学的な矛盾がここで生じます。どのような神が報復の化身を生み出しておきながら、守護の化身を生み出さないのか。神の存在意義が創造しその秩序を守ることであれば、慈悲の心が無いのはなぜなのか。みなさんがこの質問に答える前に、私から逆に質問をさせてください。そもそも数多くのスーパーヒーローが地球に集まることになり、その全員が天文学的な確率で強力な能力を授けられたのはいったい誰のお陰なのでしょうか。。

発音ステーション

KookieSuperApeさんからの質問
Chemoの正しい発音は、「キーモ」と「ケモ」(もしくはその他)どちらでしょうか?

キーモセラピー(化学療法)と似ているところから「キーモ」と言いたいところですが、これまでにこのキャラクターがアニメ化された作品、『Batman: The Brave and the Bold(原題)』、『the DC Nation Metal Men shorts(原題)』、『Batman Unlimited: Mechs vs. Mutants(原題)』の全てで「ケモ」と発音されています。

今回はこれで以上です。私たちの大好な世界を形作る無数のキャラクターたちへの疑問と回答をまた読みに来てくださいね。私は耳を傾け続けますよ!みなさんが質問をしてくれる限り。

ライター:アレックス・ジャフィー
Xアカウント(英語のみ):@TBUJosh

注釈:この記事で語られた見解や意見はあくまでもアレックス・ジャフィー個人の見解によるもので、必ずしもDCエンターテイメントやワーナー・ブラザースの意向と一致するものではありません。