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ハイメ・レイエスが新世代のヒーローである理由

ブルービートルは、大学を卒業した青年が、古代エイリアンのスカラベに寄生されることでさまざまな能力を手にし、地球上最強の力を持つスーパーヒーローのひとりとなっていく物語である。そしてこの高揚感あふれる作品は、単なるアクションやアドベンチャーだけにとどまらない。ブルービートルには、運命、責任、自己価値といったストーリーが丁寧に描かれている。何よりもこの作品は、これまでのDC映画ではあまり描かれることのなかった家族とレガシーについての物語なのだ。

ブルービートルが本当の意味で特別なのは、等身大のヒーローが抱える普遍的なテーマが、コミックの世界に現実感(リアリティー)を与えているからだ。これはDCユニバースではあまり見られないヒーローの姿であり、今後の手本となっている。ここからはなかでも目立った点についてさらに深く掘り下げてみよう。

個性あふれるキャラクター

主人公のハイメ・レイエスは22歳。借金を強いられ貧しい暮らしをする家族を助けるため、大学を卒業後、稼ぎがよい仕事を求めて故郷のパルメラシティへと戻る。ショロ・マリデュエニャが熱演するハイメには、家族への責任感と忠誠心があふれている。ハイメは、自分が故郷を離れ、学生生活を送っている間に家族が経験してきたさまざまな苦労に深く悲しみ、手助けをすることができなかった自分を責める。

これは、原作のキャラクターを忠実に表現しており、ハイメの世界を救う旅は、自分自身の家族を救うところから始まる。ともすれば悲劇のヒーローにもなりかねないこのキャラクターに、マリデュエニャ演じるハイメが、活気と芯の強さ、そして魅力を吹き込んでいる。真面目ではあるがユーモアがないわけでもなく、親しみやすい笑顔と若さゆえのエネルギーで、ハイメは次第に自信をつけていき、最後の闘いに向け急成長を遂げていく。人類の窮地を救うというハイメの信念が、多くの素晴らしいアクションシーンを生み出し、見る者は心を揺さぶられる。これは定番のスーパーヒーロー映画だととらえられるかもしれない。しかし、この映画を観ればきっと誰もがブルービートルを応援したくなるだろう。

さらには、若手からベテランまで幅広い役者がマリデュエニャの脇を固め、主人公の陽気な家族を演じている。母親のロシオ(エルピディア・カリロ)、父親のアルベルト(ダミアン・アルカサル)、叔父のルディ(ジョージ・ロペス)、妹のミラグロ(ベリッサ・エスコベード)、そして家族の最愛の祖母であるナナ( アドリアナ・バラーサ)。原作と同じく、彼らはハイメの強力なサポーターであるが、エイリアンとなったハイメを目の当たりにしたとき、さまざまな反応を見せた。

ハイメの家族が他のヒーロー映画に登場する家族と明らかに違う点は、ブルービートルとなったハイメの人生において、彼ら家族が果たす役割が非常に大きいということだ。ハイメ同様にハイメの家族もまた、恐怖、興奮、苦悩、決断といったさまざまな局面に遭遇する。これは意外にも、この映画の特徴であり、近年のスーパーヒーロー映画のなかでも際立たせる要素となっている。アルベルトの優しさと忍耐強さ、ロシオの確固たる姿勢、ルディの創作力、ミラグロの知恵、ナナの統率力(他にも驚きのスキルを持つ)。この映画は、主人公の活躍のみを描くのではなく、家族の共演というアンサンブルに近い映画となっている。

これ以上はネタバレになるので控えるが、ハイメとその家族がこの映画の見どころであることは間違いないだろう。

レガシーのテーマ

DCユニバースの礎となっているのは、これまで数多くのシリーズで生み出されてきたヒーローたちのレガシーである。ブルービートルはよく見落とされがちだが、その伝統をしっかりと受け継いでおり、ハイメ・レイエスは原作では3代目のブルービートルとなっている。映画のなかでは、ジェイミーの叔父であるルディとジェニー・コード(先代ブルービートルの娘)の2人を通してブルービートルの歴史が語られる。やがてハイメの前に巨大な世界が姿を現し、単にハイメはレイエス家で初の大卒というだけではなく、それ以上に人生をかけた運命を背負うことになる。

この映画は、昔からの原作ファンを大いに喜ばせるだけでなく、DCの世界観を発展させる役割を担っており、スーパーパワーを見せつけるだけの単純なストーリーにはなっていない。

レガシーのテーマはハイメ以外のキャラクターにも当てはまる。映画の序盤で、ハイメが父親のアルベルトに人生の意義について問うと、アルベルトは「自分もいまだに分からない」と答える。その一方でコード社を率いるヴィクトリア・コードは、武器の投資家になるためにきょうだいのテッド・コードの会社を引き継ぎ、自分たちの父親が築いた遺産を守ることが使命だと考えているのだ。

そして叔父のルディ。政府やテクノロジーに対する妄想癖のせいで、ルディとごく普通の家族との間には溝ができていた。そして人生半ばで、彼も人生の意義を考えるようになる。

ストーリー全体を通して、それぞれのキャラクターが自分自身の器量や価値を見つめ直しながら、失敗を恐れる姿が描かれている。しかしお互いにその葛藤に気付くことはなく、世界を救うという使命を果たすために結束していく。

アクション

もちろんブルービートルはただ星を眺めて、未来に思いをはせているだけではない。結局のところ、これはコミックブックの映画化である。アクションシーンについていえば、実現できないものはない。ハイメはあらゆるハイテク兵器を自在に操り、さらには彼が頭に思い浮かべたものは、スカラベがすべて具体化できてしまうのだ。

そしてありがたいことに、この映画は出し惜しみをしていない。戦うごとに、ハイメは自身に備わったパワーを次々と発見していく。OMAC(オマック) ソルジャーやヴィランのカラパックスとの戦いでは、エネルギー砲、ソード、ウィング、パルスシールドといったさまざまな武器が披露され、映画の終盤に向けてアクションは次第に激しさを増し、赤色に照らされた通路で行われる迫力ある戦いへと発展していく。登場人物たちが死力を尽くして戦う爆破シーンは独創的かつ強力なインパクトがある。激しいぶつかり合い、壮絶な破壊力に劇場では観客からの素晴らしい反応が見られた。DC映画において、このような戦闘シーンはここしばらく見たことがない。

最後に

ブルービートルはスーパーヒーローのジャンルを塗り替えるのではなく、再確認することを試みた満足度の高い作品だ。等身大で好感の持てるキャラクター、原作への敬意と揺るぎないテーマがストーリーに深みを持たせ、古くからのブルービートルファンはもちろん、初めて彼を知る人にとっても見逃せない完璧なスーパーヒーロームービーに仕上がっている。2006年の登場から、大規模ではないものの熱狂的なファンの層を築いてきたブルービートルは、若いヒーローがDCの名だたるヒーローたちと肩を並べ、来るべきDC映画を担っていくチャンスを与えたといえるだろう。

アンヘル・マヌエル・ソトが監督を務め、ショロ・マリデュエニャがハイメ・レイエス役で出演する『ブルービートル』は12月20日(水)よりデジタルレンタル、ブルーレイ、DVDリリース予定。

ライター:ドノバン・モーガン・グラント
Xアカウント:@donoDMG1(英語のみ)

注釈:この特集で述べられている見解や意見はドノバン・モーガン・グラント個人のもので、必ずしもDCエンターテインメント及びワーナー ブラザースの見解を表すものではありません。また今後のDCの見通しを保証または否定するものでもありません。