この度、第35回東京国際映画祭(10/24~11/2)で特別招待上映作品(ガラ・セレクション部門)に出品され、10月27日(木)に "ジャパンプレミア"(特別招待上映)として日本初上映された本作の舞台挨拶が行われ、主演を務めた戸田恵梨香さん、共演の永野芽郁さん、山下リオさん、高畑淳子さん、そしてメガホンを取った廣木隆一監督が登壇しました!
湊かなえさん原作の新たな衝撃作であり、その日本初上映とあって高い注目度を証明するようにこの日のチケットは即完。この日を待ちわびていた満員の観客の前に、戸田恵梨香さん、永野芽郁さん、山下リオさん、高畑淳子さん、廣木隆一監督が登場すると割れんばかりの拍手で迎えられました。廣木監督が「ジャパンプレミア、日本での初めての上映にすごくドキドキしています。いろんなことを話したくなる映画になったと思いますので、楽しんでいってください」と緊張の面持ちも見せながら挨拶すると、戸田さんは「世代によってきっと感想が違うはずなので、皆さんの感想が本当に楽しみです。ようやくという感じも、いよいよという感じもします。」と目を輝かせ、永野さんも「ジャパンプレミアはいつもとちょっと違う雰囲気ですが、完成した作品を観ていただけるのが純粋に嬉しいですし、戸田さんをはじめ皆さんの演技がすごいことになっていますので、早く観て欲しいです」と力を込めるなど、日本での初上映に感無量の様子をみせました。高畑さんは「街でウワサの女を演じています。どうしてウワサなのか、観ていただければわかるはず。子供のころによく見たオバサンのような役で、他の登場人物は不思議な違和感がある人たちですが、一番わかりやすいのが私の役です!」と鮮烈な印象を残す自身の役をアピール、山下さんは「撮影したのはつい最近のように思っていたら、もうこの日が来て、たくさんの方に観ていただけるのが嬉しいです」と感慨深げな様子をみせました。
昨年4~5月に行われた本作の撮影は、戸田さんと永野さんの2人は初共演。振り返った戸田さんは「この映画が本当にヒリヒリとした内容なので、早く"敬礼"したいよね、と2人でよく話していました。(笑)」と、本作に続いて戸田さん&永野さんが共演し、女性警察官を演じた作品で、昨年7月期に放送され大人気となった連続ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』を引き合いに出し会場を沸かせると、永野さんも同調して笑いながら「戸田さんは作品に対して向き合う姿勢含め、一緒にいると本当に勉強になる方で、オフの時間にも、プライベートなことも含めていろんなお話をしてくださいました!」と話し会場はますます和やかなムードに。
クセの強い個性的なキャラクターの多い作品であり、廣木監督は撮影にも様々な困難があったのかと思いきや、「これだけの役者さんが揃って、僕はオーケストラの指揮者・コンダクターのようにやらせてもらった。皆さんがいろいろな音を奏でてくれるので、ちょっと楽をしていました(笑)」とキャスト陣への信頼をにじませした。
新境地となる愛情のゆがむ母役を演じた戸田さんは「やっぱり実際に母親になってみないと、自分が母になれるかなんてわからないと思うんですが、両親が『子どもたちが親にしてくれた』と話していたのを子どもながらに覚えていて、一緒に育むからこそ親子関係が築かれていくんだろうなと思うのに、この作品の母と娘は愛があってもどうしたってうまくいかなくていつも歯がゆい。私が演じた母の目線、そして娘の目線、火事のシーンではさらにそこには"事実"という3つの視点があり、演じ分けはとても難しかった」とこの難役を演じきるにあたっての苦労を明かし、その愛情をうまく受けられない娘役となった永野さんも「本当に難しい役どころでしたが、誰かの子どもである以上、誰しもが母親に対して気に入られたい、愛されたい気持ちは持っているんじゃないかと思っていたので、そこには共感しながら演じていました」と複雑な表現に挑んだ撮影を振り返った。
現在放送中のNHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」で演じる"ばんば"が日本中を暖かな心で包み話題沸騰中の高畑さんは、その真逆とも言える口の悪い義母役を受けた決め手について「湊かなえさんの作品がとても好きで、なぜ惹かれるのか答えが出ないんですが、今回の映画も答えを探ってやっていた。いまはそれがこの作品の魅力なのかなと思っていて、"母性"という感情がこんな風に描かれるのが不思議な感じ。"母性"というタイトルですがいろいろなことに置き換わる作品だと思います」と話しました。感情をぶつけ合うシーンも多かった戸田さんとの撮影については「ご飯を食べるシーンが多くて、これは撮影後に食べる分、などと取り分けておくのがとても上手(笑)」と微笑ましいエピソードを披露すると、戸田は「私のファンの方にはあるあるだと思うんですが、消えモノはいかに合間に食べるか、をもはや課題としていただいております(笑)」と満足気に返答。戸田さん、永野さん、山下さん、高畑さんの4人が共演するシーンはほとんどが食卓を囲んでいる状況で、高畑さんも「永野さんの娘役が、すごく正確なことをストレートに言うんですが、それを無視して私は食べる!という感じ(笑)」と振り返り、緊張感が走る劇中のシーンとは対照的に、カットがかかっても皆で和気あいあいと食事を続けていたそう。他にも永野さんが「皆が田植えに向かうのを私が見送るシーンがあって、自分の母親であるルミ子がすごくかわいそうで、戸田さんが背中を丸めてついていく姿がすごく切なかったのを覚えています」と目を潤ませるなど、物語のポイントになる4人の共演シーンには要注目であることをうかがわせました。
戸田さんはさらに、作中でも際立つ高畑の強烈な演技を間近に体験した共演シーンについて「毎シーン、どういう風にお芝居されるのかとても楽しみでした。自分が想像するよりもはるかに上をスーっといくのですが、私の中には持ち得ていない表現だったりするのですごく勉強になりました」と語ると、高畑さんと母娘役という役どころになった山下さんも続けて「高畑さんは、悩んでいらっしゃったなんて衝撃です!水を得た魚のようで(笑)、私も高畑さんのお芝居を拝見するのが楽しみで、わーっと心が動く瞬間がたくさん。合間は気さくに話しかけてくださり、大好きなお母さんになりました」と告白、さらに「私は廣木監督には15年くらい前からお世話になっていて、先ほど自由にやらせてもらったように仰っていましたが、私はめちゃくちゃダメ出しされていました(笑)。でも私の迷いが役とリンクしたときに、こういうことかと思う瞬間があって、監督に惑わされて有難かったです」と"母性"に惑わされる物語とも重なる廣木演出について明かしていました。
最後に戸田さんは改めて、「私が今までに携わってきた作品は、いち視聴者として客観的に作品を観てきたけれど、この作品は初めて客観的に観られませんでした」と長いキャリアの中でも初めての経験を明かし、「改めて"母性とは"と聞かれるまで、そんなお話だということをすっかり忘れていたくらい、劇中の母娘関係があまりに成立していなかったような、母親を演じた感覚がないくらい。世代によって見え方がまるで違うものになると思いますし、きっと男性が観るとまた刺さるところが違うんだと思います。本当に皆さんの感想が楽しみです」と挨拶。全国公開まで1か月を切り、日本初上映をむかえた『母性』がこれから日本中を大いに惑わしていくことを予感させるジャパンプレミアの舞台挨拶となりました。