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    「ウォッチメン」ジャーナルVol.1、2が到着!

    2020.05.12 DCコミックス, 海外ドラマ

    海外TVシリーズ「ウォッチメン」をデジタル先行配信中です。また、6月3日(水)よりブルーレイ・DVDを発売、DVDレンタルを開始いたします。

    本作は「ゲーム・オブ・スローンズ」のHBO と、『ジョーカー』のDCが最強タッグを組み、アメコミ最高峰ともいわれる原作「ウォッチメン」から34年後の物語―。現代アメリカを新たに描き出す、異色の歴史改変SFアクションだ。

    デジタル先行配信中の「ウォッチメン」だが、6月3日のブルーレイ・DVD発売、レンタル開始に向けて、本作をより深く楽しめるコラム情報【WatchmenJournal】を計3回にわたりお届けする。Vol.1では、海外ドラマライター幕田千宏によるHBO®製作ならではのクオリティや見逃せないポイントを解説。Vol.2はアメコミ界の申し子、アメコミ系ライター杉山すぴ豊による、アメコミ愛がむき出しの熱い解説だ。

    【ジャーナルVol.1】アメコミとの初タッグで魅せるHBO®の新境地!視聴者の心を鷲掴みにする、その理由に迫る!

    数々の傑作ドラマを世に送り出してきたアメリカの有料ケーブルテレビ放送局HBO®が初めて手掛けるアメコミTVシリーズ「ウォッチメン」。今や映画でもドラマでも一大ジャンルを形成するアメコミ作品だが、やはりハイクオリティ・ドラマの代名詞となっているHBO®のアメコミTVシリーズともなると一味違う。グラフィックノベルの傑作と名高い原作を、HBO®らしい作家性の高いクールな作品に仕上げている。

    本作の製作総指揮デイモン・リンデロフは単に原作をドラマ化するのではなく、続編的な位置付けで「ウォッチメン」の世界を再構築した。「LOST」や「LEFTOVERS/残された世界」など、謎とツイストの効いた作風が持ち味のリンデロフだけに、この新たな「ウォッチメン」もなかなか一筋縄ではいかない複雑さが面白さを生み出している。

    もはや"HBO®作品あるある"状態になりつつあるが、この作品も原作や2009年の映画版の続編的な位置付けでありながら、予備的説明描写はほとんどされないまま物語が始まる。原作や映画版を知らない人は突然「ウォッチメン」の世界に放り込まれる事になるが、そうした視聴者にツレない仕様がハンデにならない事は、「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ウエストワールド」といった同局の作品が証明している。本作もまた、予備知識があればドラマの世界観に入りやすいが、予備知識がなくとも、むしろ知らないからこそ楽しめる仕掛けが施されている作品だ。

    物語の舞台は2019年のオクラホマ州タルサ。スマホやインターネットといったテクノロジーは存在せず、それでいて別のテクノロジーは現実世界よりも発展しているこのもうひとつのアメリカでは、なぜか時折空からイカが降ってきて、天気予報よろしくイカ予報が流れている。しかも大統領はロバート・レッドフォードだ。なんじゃそりゃ、と思っているうちに、この世界のスーパーヒーローは超人的な能力を持つわけではなく、警察に属しながら第7機兵隊という白人至上主義のテロ組織と激しい攻防を繰り広げているという事が分かる。

    そこからはもう、過去と現在を行き来しながら次々と浮かんでくる謎めいたストーリーにどんどん魅せられていく。なぜイカが降ってくるの か、大邸宅で二人の使用人と小芝居を繰り広げている人物は何者なのか、史実がどのように反映されているのかなどなど、思わず誰かと語り合いたくなる深堀り要素が巧みに散りばめられ、気がつけばドラマの世界観にのめり込んでしまうこの没入感も「ゲーム・ オブ・スローンズ」や「ウエストワールド」に通じる面白さだ。

    原作が当時の社会情勢を取り入れていたように、ドラマで描かれる警察とテロ組織の攻防にはトランプ政権下で分断化が進む現在のアメリカの世相が反映され、別世界でありながら社会派要素もある現代的なテーマが本作をより骨太なものにしている。この作品の世界観にさらなるリアリティをもたらしているのが、実力派揃いの俳優陣だ。主人公のシスター・ナイトことアンジェラを演じるレジーナ・キング、大邸宅で奇行を繰り広げる謎の人物を演じるジェレミー・アイアンズ。

    そして、アンジェラの前に現れる老人を演じるルイス・ゴセット Jr.という3人のオス カー俳優が揃い踏みし、彼らを筆頭にひとクセあるキャラクターを確かな説得力をもって演じる実力派俳優たちの豪華共演はそれだけでも見応え抜群だ。とりわけ、主人公のタフネスさを体現すると同時に微妙な心の動きも繊細に演じ、本作の世界観をしっかりと支えるレジーナ・キングの強烈な存在感、あまりにナチュラルに奇人ぶりを発揮するジェレミー・アイアンズには釘付けになることだろう。

    文/幕田千宏

    【ジャーナルVol.2】これまでのアメコミTVシリーズとは一線を画す。アメコミライターが語る、大人が唸る社会派ドラマ超大作とはー

    ■原作が長編小説並みの「ウォッチメン」は、TVシリーズとの相性抜群。
    「ウォッチメン」のTVシリーズは「ゲーム・オブ・スローンズ」のHBO®と『ジョーカー』を生んだDCが手を組んでいるので、海外ドラマファン、そしてアメコミファンにとって大注目の作品なんです。特にアメコミ好きには原作コミックが傑作中の傑作として知られているので、いやが上にも期待はあがりますね。「ウォッチメ ン」は2009年に映画化されていますが、原作は長編小説並みのボリュームと濃さがあるので、じっくり描こうとするならばTVシリーズの方が相性はいいハズです。結論から言うと、TVシリーズにしたのは大正解で見応えのある傑作に仕上がっています。しかしその内容は、とりわけ原作や映画版を知る人にとって大いにビックリするコンテンツだったのです。というのも、"あの原作"をドラマ化したのではなく、そこから34年後の世界を描き出した続編的内容だったからです。当初僕は原作の内容をTVシリーズとして楽しむつもりだったので第1話を見た時、正直唖然としました。ではつまらないのか?No!では、"あの「ウォッチメン」"を知らないと楽しめないのか?No!です。パワフルでやみつきになるドラマです。その魅力を、そもそも「ウォッチメン」とは何かを交えながら解説したいと思います。

    ■"ヒーローが出てくるが、ヒーローものではない"、ポリティカルな要素もある社会派大人向け作品。
    原作は1986年に発表されたアメコミ。ただその内容はとても大人向けで、グラフィックノベルといわれたりもします。出版社はバットマンやスーパーマンに代表されるDCですが、いわゆるDCヒーロー物とは別の世界観で描かれています。作者の1人アラン・ムーアは、ジョーカーを描いた「バットマン:キリングジョーク」という作品も大変有名で、僕が冒頭で"『ジョーカー』を生んだDC"と言ったのはそのためです。「ウォッチメン」は、いわゆるヒーローが出てきますが、ヒーローものではありません。ヒーローが実在するという設定のアメリカを舞台に、迫りくる第三次世界大戦=核戦争への恐怖を描いた作品だったのです。発表当時は米ソの対立が実際に高まっていた時期で、ポリティカル・フィクション(フィクションの手法で政治的なテーマを描いた作品)でもあります。とても大雑把にいうと、『シン・ゴジラ』が巨大怪獣の来襲という筋立てで日本政治の仕組みや危機管理をうまく描いていましたね。ヒーローたちを狂言回しにして当時の社会不安を描いた作品だと思ってください。

    ■舞台はオクラホマ州タルサ、1921年に起きた"タルサの虐殺"という史実に基づき描かれている。
    というわけでコミック、映画版は1985年が舞台ですが、TVシリーズ「ウォッチメン」は2019年のアメリカ、オクラホマ州のタルサが舞台。この街では1921年に"タルサの虐殺"と呼ばれる、白人による黒人たちへの集団暴力事件が起きており、多くの黒人が虐殺されたという暗い史実があります。主人公アンジェラは黒人女性でこの街の警察官。街では"第7機兵隊"とよばれる秘密結社が暗躍しており、彼らは極めて過激な白人至上主義者の集まりです。メンバーの証として覆面を被っています。かつて"第7機兵隊"は、黒人の味方をするタルサ警察に敵意を抱き、警官たちの自宅を一斉に襲うというテロ行為(=ホワイトナイト事件)を起こします。以来、タルサの警察官は自分と家族の身を守るため、みな覆面をして、その職務と素顔を隠すようになったのです。一般の警察官は黄色いマスク、刑事はそれぞれが独自のマスクとコードネームで身分を隠し、アンジェラは<シスター・ナイト>と名乗り、まさに戦う修道女(シスター)のようなコスチュームに身をつつみ"第7機兵隊"を追うのです。しかし、タルサ警察の署長が殺されたことからアンジェラの運命は大きく変わっていきます。

    警察とテロ集団がそれぞれ覆面をしている、という異常さを除けば、署長殺しの裏に隠された陰謀とは?を描いていくクライム・サ スペンスなのですが、ここで描かれるアメリカ社会は僕らが知っているアメリカとはちょっと違います。"タルサの虐殺"は史実なのだけれど、ここに登場するアメリカこそ、映画やコミックの「ウォッチメン」で描かれた"もう一つのアメリカ"なのです。物語を見続けていけば、一応これらの設定がわかるようにはなっているのですが、以下の「ウォッチメン」メモでざっと説明しますね。

    TV シリーズ「ウォッチメン」 観る前のこれだけメモ
    ●1938年に頭巾を被ったフーデッド・ジャスティスというヒーローが現れ、彼に賛同した者たちがミニッツメンというヒーロー・グループを結成し、アメリカの治安を守ることに貢献した。
    ●ミニッツメンの伝統を受けて、その後のアメリカ社会には"覆面ヒーロー"たちが多数現れるようになる。
    ●覆面ヒーローたちは超能力を持っておらず、いわゆる腕っぷしの強い生身の人間。
    ●しかし、科学実験の事故から生まれた超人Dr.マンハッタンという真の超人が現れる。全身が青く、あらゆる物理現象を操り、また独特の時間の概念を持つ。
    ●Dr.マンハッタンの介入により、アメリカはベトナム戦争で勝利する。ベトナムのサイゴンはアメリカの州となっている。
    ●1985年アメリカとソ連(=現ロシア)の対立が高まり、核戦争ギリギリのところまでいくが、NYで人類史上最も恐ろしい事件が起き数百万人の命が奪われる。米ソは対立を止めて手を組むことになり、世界に平和が訪れる。(これが原作、映画版のメインストーリー部分)
    ●この事件を機に、地球一の頭脳を持つといわれたエイドリアン・ヴェイトことオジマンディアスというヒーローが表舞台から姿を消し、また、Dr.マンハッタンも人類と別れを告げて火星に引きこもってしまう。さらに、Dr.マンハッタンの恋人であり、女性ヒーローだったシルク・スペクターことローリーも引退する。
    ●その後、あの俳優ロバート・レッドフォードが大統領になる。

    ■4話くらいからの伏線回収、もうそこからは引き返せない。
    クセのあるHBO®らしい重厚なストーリー、トンマナとかすごくかっこいいです。全9話中4話ぐらいから色々と繋がってきて、そこからはもう引き返せない面白さです。観終わった後、ああ面白かった!と言える作品なのは間違いありません。ただ、このTVシリーズが描いているのは偏見と差別によるアメリカの分断だったりもします。原作や映画版では、第三次世界戦争への懸念が大きなテーマでしたが、このTVシリーズではアメリカの分断。そう、ヘイトクライムは核戦争と同じくらい悪しきものなのかもしれません。ふとそんなことを思ってしまいました。

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