映画『シャザム!』、TVシリーズ「ブラックライトニング」「クリプトン<シーズン1>」と続々DCの映像化作品が実現する中、今年劇場公開され、大ヒットとなった映画『アクアマン』がデジタル先行配信中!さらに7月3日(水)よりブルーレイ&DVDリリースとなる!梅雨の時期が終わり、本格的な夏に向けて是非本作をチェックしていただきたいが、気になるのが劇中の美しい"衣装"だ。本作では陸上ではもちろん海中でのシーンが多く、そこで登場するキャラクターの衣装はすべて一から造形されている。この優雅で美しい衣装は、言うまでもなく制作陣の努力の結晶だ。今回は衣装を担当したデザイナーのインタビューを元に、その努力の一端をご紹介させていただきたい。
本作の衣装を担当した女性デザイナー"キム・バレット"はインタビューの中で「ジェームズ・ワン監督の意向を尊重する一方で、原作ファンにも喜んでもらえる衣装づくりを目指した」と語る。今回はストーリーの主な舞台が深海であることを前提に素材を吟味し、なんと2,500点近い衣装を設えた。「海の中ですから、誰もが浮いたり、泳いだりしていますし、キャストは水中を舞台にしたアクションを演じるためにワイヤーを装着し、装置に乗らなければなりません。それでも水中で軽やかに見える装いを考えなければいけなかった。検討すべき課題が山積みでしたから、かなりの大仕事になりました。」とバレット氏は続ける。確かに本作は陸上よりも水中でのシーンが圧倒的に多く、ただ衣装を用意するだけでなく、一から造形するとなると、かなりの根気が必要なのは想像に難くない。
本作の衣装については、主人公アーサーの設えを語らずには始まらないが、もっとも大事な衣装なだけにその制作には別段力をいれていた。同じく衣装担当のバレットは「アー サーが王になるには逆境や不安を克服しなくてはなりません。戦いに勝つだけでなく、情の深い人間に成長していきます。映画のクライマックスでアーサーが着用するアトランティス直伝の戦闘スーツは、王としての自覚を促し、ヒーローとしての資質を表現するものでなければなりません。衣装チームの役割はジェイソン・モモアらしさとコミックヒーローのアクアマンらしさをブレンドすることでした。ただの戦闘服ではなく、新しい人格をまとっていることを表したかったんです。」と、ただ衣装をデザインするだけでなく、キャラクターの心情や、その意図、思いも打ち明けた。
だからこそこのスーツの制作には大変な手間がかかったそう。まず主演のジェイソン・モモアは撮影前のトレーニングにより肩幅がより広くなり背筋がついてウエストが絞られていたため、ぴったりなサイズを作るために厳密な採寸のやり直しから始まった。ゴールドのジャケットが完全に左右対称になるようにパソコン上でデザインし、3Dプリンターで型を制作。さらにこのスーツはとても複雑な作りをしており、複数のパーツに分かれているため、いくつかの分担したチームに分かれて、同時に制作を進行させた。努力の甲斐あって仕上がりはとても美しく神々しくなり、モモア自身も着心地・動きやすさともに満足していた。「初めて身に着けたとき、子供にも見せたくなって、写真に撮って送信したんだ。そしたら満面の笑顔が返ってきたよ。父親として誇らしかったね。僕自身もあのスーツを着て大はしゃぎしてしまった。すごくうれ しかったんだ。」とモモア自身の口から大絶賛の言葉が出るほど、出来栄えは完璧なものとなった。
一方、ヒロイン:メラ役のアンバー・ハードが劇中で主に着用しているのは光沢のあるボディスーツ。キム・バレットは衣装の色を選ぶ際、アンバー・ハードの肌や瞳が引き立つよう鮮やかなグリーンをチョイス。見るからにアクションヒロインらしいスーツだ。「私たちがイメージしたメラのスーツは海の生物を思わせるもの。色は清涼感のあるグリーンにし、アクアマンと並んだ時に見栄えがするようにしました。メラが酒場の外で水から現れるシーンは、とても印象的です。雨の夜に、光の中から浮かび上がるように登場する姿も、別世界から来た使者という感じです。」とバレットの思惑はしっかりと我々観客に伝わっていることは間違いない。
この仕事ぶりはもちろんメラ役のアンバー・ハード自身が一番身に染みて感じている。「キムは海の中にしか存在しないものをモチーフにしていた。どれをとっても、見事な出来栄えよ。」とモモアと同様大絶賛。しかしやはり撮影は難航したようで、「衣装チームのおかげで個性的な一着になったけれど、撮影中はハーネスやコルセットやいろんな装置と一緒に身に着けていたから吊られたり締め付けられたりして大変だった。」と撮影の苦労を包み隠さず明かした。凝った衣装づくりは演じる側の努力も相まって初めて完成することがよく分かる。
その他、パトリック・ウィルソン演じるオーム王の戦闘服は剣闘士風、ウィレム・デフォー演じるバルコの装いはサムライをイメージ。また、ニコール・キッドマン演じるアトランナのボディスーツは海の恵みをモチーフにし、「ヴィーナスの誕生」を思わせる姿をしている。
このように、映画製作の中でも別段衣装づくりにも力を入れている本作は、観客が自然と水中世界を受け入れられるような趣向が凝らされている。
日本でも本格的な衣替えの時期、トップクリエイターが生み出した美しい水中世界を、是非衣装にも注目して楽しんで欲しい。
映画/舞台/オペラの衣装を担当するオーストラリア出身の衣装デザイナー。 映画での最初の仕事は、恋愛ドラマ『ロミオ&ジュリエット』(96)。その後1999年『マトリックス』で革新的な衣装をデザインし、『スピード・レーサー』(08)、『クラウド・アトラス』(12)、『ジュピター』(15)といったウォシャウスキー姉妹と多くタッグを組んでいる。他作品としては、ファンタジー『エラゴン 意思を継ぐ者』(06)、コメディ『グリーン・ホーネット』(11)、アクションコメディ『ナイス・ガイズ』(16)、サスペンス・スリラー『ロスト・バケーション』(16)など、幅広く活躍。