ビッグ・リトル・ライズ<シーズン1>ニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンが世の女性達に送る本作に隠された力強いメッセージとは?

2018.09.20 海外ドラマ

海外TVドラマシリーズ「ビッグ・リトル・ライズ<シーズン1>」のDVDを好評発売中、レンタル中です。本作は、「セックス・アンド・ザ・シティ」のHBOが贈る最新作。衝撃のラストまですべてが緻密に計算された珠玉の極上スタイリッシュサスペンスです。

今年のエミー賞では女性が主人公のドラマが多くノミネートされ、俳優のギャランティ男女格差が取り上げられた「ザ・クラウン」が主演女優賞を受賞するなど、今現在も世界中で広がりを見せる#Me Too運動。それを象徴する作品のひとつとして、昨年のエミー賞やゴールデングローブ賞など、名だたる賞を総なめした本作の製作総指揮を務めた、ニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンが、「ビッグ・リトル・ライズ」を通して、世の女性たちに伝えたかったメッセージとは、そして製作の裏側に隠された秘話に迫ったレポートが到着いたしました。

ニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンが世の女性達に送る本作に隠された力強いメッセージとは?

2017年10月に、ハリウッドの暴君だった大物プロデューサーのセクハラ騒動が勃発した。そこから端を発した#Me Too運動は、世界的な広がりを見せている。「ビッグ・リトル・ライズ」が、そうしたムーブメントを象徴する作品の一つとなったことは、ハリウッドにおける事件だった。現代女性が抱える問題の数々を、あくまでも一級の娯楽作品として描き出した完成度の高さは、エミー賞を筆頭とする数々の賞を総なめにした実績からも証明されている。だが、本作がカリスマ的な存在として輝きを放っているのは、ニコール・キッドマンやリース・ウィザースプーンら主演女優たち自身が体現するフェミニズムが、世の女性たちに対する力強い応援メッセージとなっているからだ。

本作のように、女優がプロデューサーに名を連ねる例は少なくない。特にテレビではロングラン作品において、シリーズが進む中で主演格の俳優が製作を手がけることは普通にある。だが、本作でニコールとリースが成し遂げたことは、自ら企画し、作品を実現させた実行力だけではない。各々が運営する自身の制作会社を率いて、製作面でも現場でも女性主導で作品を作り上げた点にある。

こんな話がある。リースたちは当初、各社が争奪戦を展開していたこの企画を、業界大手のスタジオと進めていた。ところが、同社から要求されたのは「オスカー女優のヌード」だった。いくらなんでも、それは古いと思うかもしれないが、例えば、先にあげたプロデューサーに対する女優サルマ・ハエックの告発を思い出して欲しい。映画『フリーダ』を作るために、女優としてというだけでなく人間として、どれほど自尊心を踏みにじられ、濡れ場を強要されるなど精神的にボロボロにされたことか。ハリウッドでは、こうしたことが繰り返されてきたのだ。しかし、ニコールとリースは毅然とした態度でノーを突きつけ、彼女たちのクリエイティビティを尊重するHBOと組むことにした。劇中で過激なセックスシーンやヌードシーンはあるが、それは彼女たちが納得した形で撮影されたものである。全ては女優たちの意思であることが重要なのだ。

女性が、もっと主体的に作品作りに関わること。そして、その状況を加速させること。ニコールやリースたちが目指すハリウッドの女性の活躍のあり方は、まだまだ発展途上だ。しかし、彼女たちの姿勢は、後に続く多くの女性たちに勇気を与えている。そういう意味でも「ビッグ・リトル・ライズ」は特別な作品なのである。

TEXT 今 祥枝

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