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    ピックアップ記事:「三人兄弟の物語」がハリー・ポッターシリーズをどのように形作ったか

    2018.09.07 ウィザーディングワールド, ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信

    吟遊詩人ビードルの有名な物語には、ハリーの冒険を形作るテーマがたくさんでてきます。それではみていきましょう。

    『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1』

    死から逃れることとヴォルデモート卿

    「三人兄弟の物語」の根底にあるのは、死は逃れることができるもの、という考えです。三人の兄弟は、「死」を欺きますが、それは長くは続きません。三人は、来るべき「死」に一生追いかけられるのです。

    三人兄弟の状況は、ヴォルデモートとよく似ています。ヴォルデモートは人生をかけて、不死を手に入れ、その恩恵を受けようとしていました。結局、三人兄弟と同じで、「死」がヴォルデモートに追いつき、「死」を支配することで力を得ようとした彼の旅は終わりをつげました。

    ハリーとロンとハーマイオニーが「三人兄弟の物語」をゼノフィリウス・ラブグッドから聞いたのは、ヴォルデモートの運命について、大きな話題になっていた時期でした。そのときハリーたち三人は、分霊箱を捜し出し、ヴォルデモートを倒そうと考えていました。なので、三人の兄弟たちが死を欺いても結局は失敗してしまう、というこの物語が、ハリーたちをどんなに勇気付けたか想像できますよね。

    だれよりも深く不死の道へと入り込んでいたこの俺様が、そういう状態になったのだ。おまえたちは、俺様の目指すものを知っておろう――死の克服だ。

    「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」より

    『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

    自分の欲望に支配されないこと

    決して恵まれているとは言えない環境で育ったハリーは、最初から謙虚さが身についていました。自分と同じように虐げられてきた人たちを思いやることのできる優しい男の子で、めったにうぬぼれた態度をとることはありません。

    もちろん、これは物語が進むにつれ変化していきます。ハリーには、譲れない部分ができて、人間的に強くなっていきますが、父親のようになろうとは考えません。それでも、最初のころに比べると控えめな部分が減っていきますが、「三人兄弟の物語」は、ハリーにとって、いろいろな意味で重要な警告になっているのです。

    兄弟のうち、唯一、歳をとってから死んだのは、「死」のまなざしから逃れて安らげる場所を求めた三男だけでした。「死」は、三男が見えなくなり、追いかけることができなくなってしまったのでした。悲惨な目にあって死んでいった兄弟に比べると、三男は幸せに暮らし、穏やかに死にました。

    これは、ハリー・ポッターシリーズを通して語られているテーマでもあります。ヴォルデモートは、謙虚さとは正反対で、自分の壮大な野望によって破滅に導かれ、身を滅ぼすことになりました。わたしたちは、ヴォルデモートの姿から、善い選択をすること、自分の欲望に心を支配されないことの大切さを学びます。

    © JKR/Pottermore Ltd. ™ Warner Bros.

    ハリーは、死の秘宝のことで頭がいっぱいになりますが、最後にはこの教訓を学び、強大な力を持つニワトコの杖を手放します。のちにハリーの家族に代々受け継がれていく透明マントを持っていた「三人兄弟の物語」の三男のように、ハリーは、死は立ち向かうものではなく、受け入れるものだということを知るのです。

    しかし三番目の弟は、『死』が何年探しても、けっして見つけることができませんでした。三番目の弟は、とても高齢になった時に、ついに『透明マント』を脱ぎ、息子にそれを与えました。そして三番目の弟は、『死』を古い友人として迎え、喜んで『死』とともに行き、同じ仲間として、一緒にこの世を去ったのでした。

    「吟遊詩人ビードルの物語」より

    魔法で悲しみが消えることはない

    © JKR/Pottermore Ltd. ™ Warner Bros.

    「三人兄弟の物語」を通して伝えられていること、ハリーのような子にとって特に大切なメッセージは、魔法で悲しみが消えることはない、ということです。「三人兄弟の物語」で、次男は「死」から蘇りの石をもらって、死んだ恋人の魂を呼び戻しました。しかし、蘇りの石で呼び戻した恋人の姿は、生きていた頃の亡霊に過ぎませんでした。次男は望み通り恋人と暮らしますが、最後には自殺してしまいます。

    驚いたことに、そしてうれしいことに、若くして死んだ、その昔結婚を夢見た女性の姿が現れました。しかし、彼女は無口で冷たく、二番目の兄とはベールで仕切られているかのようでした。この世にもどってきたものの、その女性は完全にはこの世にはなじめずに苦しみました。

    「吟遊詩人ビードルの物語」より

    魔法で悲しみを消すことはできない、というメッセージは、ハリー・ポッターシリーズを通して何度も登場します。分霊箱には、命を完全に代用する力はありませんでした。どんなに価値のある方法を使ったとしても、どんなに必死に頑張っても、自分の死をまぬがれることはできません。賢者の石には、寿命を伸ばす力がありますが、不死を手に入れることはできません。元気の出る呪文でさえも、効果は永遠に続かないのです。

    『ハリー・ポッターと賢者の石』

    幽霊たちは、死後も現世で生き続けますが、生身の人間に戻ることはありません。ほとんど首無しニックが言っているように「儚い生の擬態」なのです。「三人兄弟の物語」には、愛する人が死んだ悲しみを魔法で消すことはできない、悲しみを魔法で癒すことはできない、というメッセージが込められています。

    傲慢は自分の身を滅ぼす

    ニワトコの杖をもらった長男と、ヴォルデモートの運命のあいだにある関係性を見つけるのは難しいことではないでしょう。もちろん、ハリー本人は当時気づいていませんでしたが、「三人兄弟の物語」の長男とヴォルデモートには類似点があります。それは、ニワトコの杖を所有した長男は、自分の力に対する傲慢さと、力への欲望から命を落としてしまったということです。

    ヴォルデモートも同じように、傲慢さと、自分が最強の魔法使いだという過信が原因で命を落とします。相手の力をみくびって戦いに挑んだせいで、ヴォルデモートの野望は叶うことはありませんでした。

    『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2』

    CREDIT: COURTESY OF POTTERMORE
    出典:POTTERMORE
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