どんな世界にいたとしても、クリスマスというのは魔法のような心地がするものです。しかし、魔法界でのクリスマスは、その「魔法のような心地」が他のどこよりもいっそう強く感じられるに違いないはず...。
七面鳥の準備をしているマグルであれ、グレイビーソースをお玉が勝手にかき混ぜてくれているのを眺めている魔法使いであれ、クリスマスの季節というのは誰にとっても魔法に満ちています。当然のことながら、魔法界のクリスマスのほうがマグル界のものより少しだけ「魔法」そのものが色濃くなります。そしてその「魔法」によって、魔法界でのクリスマスは私たちの慣れ親しんだクリスマスにさらなるひとひねりが加えられるのです。彼らのクリスマスを知ってしまったら、もしかすると味気ないイルミネーションをそのままごみ箱に捨てたくなってしまうかもしれません。だって、優雅に飛び回っている本物の妖精と比べたら、きっとどんなものだってあっけなく感じてしまうでしょう?
魔法界のクリスマスの夕食は、マグルのものとそれほど変わりません。ホグワーツのクリスマスのディナーはおおかた七面鳥と、ブランデーでフランベしたクリスマスプディングであふれかえっていて、どんなに強力な魔法使いでもディナーが終わるころにはぐっすりと眠ってしまいます。ここまでは私たちのクリスマスと似ているのですが、マグルがどんなに頑張っても勝てない点がたくさんあるのです。
まず、おそらく最も大きな違いとしては、食べ物の量を永遠に増やし続けられる魔法があるということでしょう。これはつまり、終わりのないクリスマスのディナーということなのです。永遠に尽きることのないワイングラスがあったらどんな気分かちょっと想像してみてください。さて、魔法のことをひとまず置いて話をすると、魔法使いたちはマグルの伝統にちょっとした遊び心を足すことも好きなのです。例えば、マグルが6ペンス硬貨をクリスマスのプディングに隠すのと同じように、パーシーはデザートにシックル銀貨を隠され、あやうく歯を折るところでした。
魔法使いが魔法を使えるものであることを考えると、彼らのクリスマスプレゼントは他のプレゼントよりも少し魔法がかかっているのです。たとえばハリーは、私たちが知っている一般的なマグルのクリスマスと魔法界のクリスマスのどちらも経験していますが、プレゼントにはかなりの違いがありました。マグルのダーズリー一家からのプレゼントは、爪楊枝と50ペンス硬貨1枚だったのですが、魔法界のクリスマスでは透明マントやファイアボルト、魔法のペンナイフをもらえましたね。
とはいえ、マグルの世界で贈り物とそこまで変わらないものも、もちろんなかにはあります。たとえば、魔法使いでもキャンディや靴下、セーターなどを贈ることがあります。魔法界の服に描かれているのはスニッチやハンガリー・ホーンテールなのですが、お菓子はたいてい蛙チョコレートや、バーティ―・ボッツの百味ビーンズなんですけどね...。
魔法使いのクリスマスの伝統行事の多くは、マグルのものとかなり似ています。エッグノッグももちろん飲みますし、ヤドリギの下でキスもしますし、クリスマスの祝歌だって歌います。ただ、魔法界でそれを歌うのは酔っぱらった半巨人や、魔法がかけられた鎧兜なのですが...。
他にもいくつか、ある特定の魔法使いだけが自分のクリスマスの伝統として取り入れたものも存在します。たとえば、ロンのお母さんはお気に入りの歌手であるセレスティナ・ワーベックのクリスマス放送を聴くのが大好きでした。また、ハリーと彼の友達は魔法使いのチェスや、爆発スナップのゲームでよく遊んでいました。
それに、スラグホーンのクリスマスパーティーのことも忘れてはいけません。私たちのようなマグルが招待される可能性は低いかもしれませんが...。とはいえ、マグルのクリスマスと魔法使いのクリスマスはかなり似ているともいえるでしょう。しかし、魔法界のクリスマスでは、マグルのように「ハリー・ポッター」の映画を最初から鑑賞するようなことはないかもしれませんね...。
クリスマスの飾りつけを少しやりすぎでしまったことに罪悪感を抱く人もなかにはいますが、私たちの飾る質素なフェアリー・ライトは、クリスマスのホグワーツの大広間と比べると見劣りしてしまうのは間違いないでしょう。
マグルは、たった1本のクリスマスツリーを家まで引きずって持ち帰るのにさえかなり手こずるというのに、ホグワーツの大広間は数十本もの立派な木であふれかえっています。そして、すべての木にロウソクやヒイラギの実、さらには「本物のホーホーと鳴く金色のふくろう」で飾りつけられているのです。そこに永遠に溶けない氷柱(の雪も加えてみましょう。マグルがどんなに美しい色で部屋を彩ろうとも、これほど素晴らしい光景に勝る飾りつけなんてできませんよね。
また、魔法のクラッカーが素晴らしい音を響かせてくれることも、もちろん忘れてはいけません。魔法のクラッカーが贅沢な音で爆発すると、生きた二十日ねずみや目新しい帽子などが飛び出てきます。この帽子だって、頭に被せた瞬間に壊れてしまうような紙でできたペラペラのものをいっているのではありません。本物の、艦隊の最高司令官がかぶるような帽子が出てくるのです。
そんななか、ホグワーツの外ではフレッドとジョージ・ウィーズリーがこれまた型破りなデコレーションをしばしば試みたものでした。マグルたちが星や天使をクリスマスツリーのてっぺんに乗せていたのに対し、あの双子はチュチュの姿で、金色に塗られた天使をツリーに乗っけようとたくらんだのです。ときには、枠にとらわれない考え方をすることも大切ですね。