私たちが愛してやまないあの屋敷しもべの誕生日を記念して、今回は私たちが特に気に入っているドビーの登場シーンをいくつか振り返ってみましょう――彼が(私たちにとってはちょっと首をかしげたくなるような)ハリー・ポッターを助ける試みから、素敵なファッションセンスまで、とくとご覧あれ...
ドビーの第一印象は強烈なものでしたよね。なにせ初登場して数分も経たないうちに、彼はハリーの人生を大いに狂わせてしまったのですから...。それもすべてはハリーを守るためでした(あくまでドビーにとっては...)。それにしても、ドビーの簡単な呪文ひとつでバーノン・ダーズリーの商談が失敗に終わり、ペチュニアおばさん力作デザートは台無しになり、ハリーがホイップクリームまみれで言い訳ができない状態になったのには正直、笑ってしまいました。
皿が割れ、ホイップクリームが、窓やら壁やらに飛び散った。ドビーは鞭を鳴らすような、パチッという音とともにかき消えた。
食堂から悲鳴があがり、バーノンおじさんがキッチンに飛び込んできた。そこにはハリーが、頭のてっぺんから足の先までペチュニアおばさんのデザートをかぶって、ショックで硬直して立っていた。
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
ドビーはいかなるときも、なんとしてでもハリーの命を守ることを貫きます。未成年であるハリーが魔法を使ったように見せかけたり(あの、気の毒なデザート)、キングスクロス駅から9と4分の3番線につながっている入口を通れないようにふさいだり、ブラッジャーにハリーを何度も追い回させたりと、とにかく、ドビーは自分の決めたことを絶対に曲げようとしませんでした。なかでも、特に記憶に残る場面といえば、ドビーが自分の行動について説明して、その彼なりの正義を主張しようとしたときです。なぜなら、彼は決してハリーを殺したいわけではなかったのですから...。ただ大怪我をさせたかっただけなのです(それはもちろん、ハリーを守るために)。
「殺すのではありません。めっそうもない!」ドビーは驚愕した。「ドビーめは、ハリー・ポッターの命をお助けしたいのです! ここに留まるより、大怪我をして家に送り返される方がよいのでございます! ドビーめは、ハリー・ポッターが家に送り返される程度に怪我をするようにしたかったのです!」
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
マルフォイ一家を主(あるじ)に持つことがどれほど最悪なことか、私たちは想像するほかありません。彼らのように残酷で、見栄っ張りで、偏見にまみれ、精神的にも不安定な家族のもとで働かされることは、この上なく辛かったことでしょう。また、彼らはドビーに恐ろしいほどひどい扱いをしました。あんなに愛らしいドビーが、マルフォイ家から邪険に扱われるのを目にしたり、耳にしたりするたびに胸を痛めたものです。だから、ドビーがそんな絶望的な家族から解放されたことを知った瞬間は、間違いなく私たちのお気に入りの場面のひとつなのです。ドビーはもう自由の身になったのです...。その事実に、ルシウス・マルフォイはどうすることもできないのでした。
バーンと大きな音がして、マルフォイ氏は後ろ向きに吹っ飛び、階段を一度に三段ずつ、もんどり打って転げ落ち、下の踊り場に落ちてぺしゃんこになった。怒りの形相で立ち上がり、杖を引っ張り出した。が、ドビーが長い人差し指を、脅すようにマルフォイ氏に向けた。
「すぐ立ち去れ」ドビーがマルフォイ氏に指を突きつけるようにして、激しい口調で言った。
「ハリー・ポッターに指一本でも触れてみろ。早く立ち去れ」
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』では、ドビーは、これまでとは全く違う新しいファッションへの扉を開いたのです。もう古ぼけた布巾や枕カバー、雑巾を身にまとう必要はありません。心のままに、好きな服を着てもよいのです。ドビーはこの自由を全身で受け止め、なかなかのファッショニスタへと変貌を遂げました。自分の好きな服を身に着けるようになり、それが控えめにいって奇抜すぎだと周りから指をさされても、全く気にしませんでした。しかし、ドビーにはひとつだけ、必ず守り抜いているルールがあったのです。それは、左右の靴下を絶対にそろえないことでした。
ドビーがマルフォイ家で働いていたときは、いつも同じ、汚れた枕カバーを着ていた。しかしいまは、ハリーが見たこともないような、へんてこな組み合わせの衣装だ。ワールドカップでの魔法使いたちのマグル衣装よりさらに悪かった。帽子代わりにティーポット・カバーをかぶり、それにキラキラしたバッジをたくさん留めつけていたし、裸の上半身に、馬蹄模様のネクタイを締め、子供のサッカー用パンツのようなものを履き、ちぐはぐな靴下を履いていた。その片方には、見覚えがあった。ハリーが昔履いていた靴下だ。ハリーはその黒い靴下を脱ぎ、マルフォイ氏がそれをドビーに与えるように計略を仕掛け、ドビーを自由の身にしたのだ。もう片方は、ピンクとオレンジの縞模様だ。
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
自由の身となった屋敷しもべの生活はそれほど楽ではありません。魔法界の多くの人たちは、タダで使える労力に対してお給料を支払いたくないからです。そのため、ドビーは誰からの指図も受けなくなったのですが、依然として厄介な立場に置かれていたのは事実でした。だからこそ、彼を再びホグワーツで見られるようになったのは、私たちにとっては非常に嬉しいことでした。大好きなハリー・ポッターのそばにいられるだけでなく、働いてもお給料がもらえないなんていう心配もなくなったのですからね。
「ドビーは丸二年間、仕事を探して国中を旅したのでございます!」
ドビーはキーキー話し続けた。
「でも、仕事は見つからなかったのでございます。なぜなら、ドビーはお給料がほしかったからです!」
興味津々で見つめ、聞き入っていた厨房中のしもべ妖精が、この言葉で全員顔を背けた。ドビーが、何か無作法で恥ずかしいことを口にしたかのようだった。
しかし、ハーマイオニーは、「そのとおりだわ、ドビー!」と言った。
「お嬢さま、ありがとうございます!」
ドビーがニカーッと歯を見せてハーマイオニーに笑いかけた。
「ですが、お嬢さま、大多数の魔法使いは、給料を要求する屋敷しもべ妖精をほしがりません。『それじゃ屋敷しもべにならない』とおっしゃるのです。そして、ドビーの鼻先でドアをぴしゃりと閉めるのです! ドビーは働くのが好きです。でもドビーは服を着たいし、給料をもらいたい。ハリー・ポッター......ドビーめは自由が好きです!」
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
この場面ではドビーが大活躍しました。ハリーはなんとか三大魔法学校対抗試合の2つ目の課題が湖で行われるということまでは分かっていたものの...どのようにして1時間も、水中で息を止めることができるかについては解決策が見つかっていませんでした。ここで、ドビーが大活躍するのです。ドビーはハリーに鰓(エラ)昆布を持っていきました。このおかげで、ハリーは水中でも呼吸をして、大切な「ウィージー」を無事に見つけ出すことができたのでした。
「あなたさまのウィージーでございます。ウィージー――ドビーにセーターをくださったウィージーでございます!」
ドビーはショートパンツの上に来ている縮んだ栗色のセーターを摘んでみせた。
「何だって?」ハリーは息を呑んだ。「水中人が取ってったのは......とってったのは、ロン?」
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
ハーマイオニーは、屋敷しもべ妖精たちを解放するという使命に駆られていました。たとえ、本人たちがそれを望んでいないとしても―。その結果として、屋敷しもべ妖精たちは(隠された帽子のおかげで)グリフィンドールの談話室の掃除を放棄し、ドビーはワードローブいっぱいの新しい帽子を山のようにゲットできたのでした。(ラッキー!)とりわけ面白かったのは、ドビーが帽子ひとつでは求めている着こなしができないと判断したことです。ドビーが最終的にたどりついたのは、まるで塔のように積みあがった数多くの帽子のてっぺんに、ホーホーと鳴くヘドウィグがとまっているスタイルでした...。ハーマイオニーの編み物が(少なくともドビーには)評価されてよかったですね。
ハーマイオニーが残していったニットの帽子が半ダースほど置いてあるテーブルの脇に、屋敷しもべ妖精のドビーが立っていた。大きな尖った耳が、山のような帽子の下から突き出ている。ハーマイオニーがこれまで編んだ帽子を全部被っているのではないかと思うほどで、縦に帽子を積み重ねて被っているので、頭が一メートル近く伸びたように見えた。一番てっぺんの毛糸玉の上に、たしかに傷の癒えたヘドウィグが止まり、ホーホーと落ち着いた鳴き声をあげていた。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
ドビーの頭の片隅には、常にハリーがいるようです。それは、ドビーが選んだクリスマスの飾り付けにもよく表れていました。ハリー自身はあまりよく思っていなかったかもしれませんが、ドビーの選んだ飾り玉は素敵でした。必要の部屋いっぱいに、自分の顔が飾り付けられるのが嫌な人なんて、きっといないですよね。ハリーの好みではなかったかもしれませんが、ドビーのハリーに対する忠誠心や、彼の面白いひらめきはぜひとも評価したいものです。ハリーがあのクリスマスっぽく飾られた大混乱な部屋に足を踏み入れたときの顔を、ハエになってでも見てみたかったですよね...。
休暇前のDA会合で、ハリーは早めに「必要の部屋」に行った。それが正解だった。松明がパッと灯ったとたん、ドビーが気を利かせてクリスマスの飾りつけをしていたことがわかったのだ。ドビーの仕業なのは明らかだ。こんな飾り方をするのはドビー以外にありえない。百あまりの金の飾り玉が天井からぶら下がり、その全部に、ハリーの似顔絵とメッセージがついていた。「楽しいハリー・クリスマスを!」
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
シリーズを通して、ドビーはハリーにとても...ユニークなプレゼントを贈っています。しかし、そのなかでも最も印象的なプレゼントがひとつあります。それは、ドビーが描いたハリーの肖像画です。ハリーに似せようと頑張って描いているドビーを想像すると、思わずほほえんでしまいますね。――最終的に「まるで殴られたテナガザル」のようだと評価されてしまいましたが...
「ところで、これは何のつもりかな?」フレッドが目を細めてドビーの絵を眺めた。「目の周りが黒いテナガザルってとこかな」
「ハリーだよ!」ジョージが絵の裏を指差した。「裏にそう書いてある」
「似てるぜ」フレッドがにやりとした。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
ドビーのあふれんばかりのハリーへの愛については、いくらでも冗談めかしに話せますが、とどのつまるところ、ドビーはハリーにとって誰よりも忠実な友達であったといえるでしょう。ドビーのハリーに対する愛情は、一度も揺らぐことはありませんでした。それが最も伝わるのは、ドビーがハリーと仲間たちをマルフォイ邸から救い出すために現れた場面でしょう。自分をずっとひどい目に遭わせてきた場所と人のもとへ戻ることは、ドビーにとって心底怖かったに違いありません。それでもこの勇敢な屋敷しもべ妖精は躊躇せずその場所へ戻り、友人たちを一人残らず助け出しました。この章での悲劇的な結末についてはみなさん知ってのとおりですが、ドビーが自分のかつての雇い主に立ち向かい、自分が真の自由の身となったことを証明した勇敢な瞬間のことは忘れずにいたいものです。
「ドビーにご主人様はいない!」
しもべ妖精がキーキー声で言った。
「ドビーは自由な妖精だ。そしてドビーは、ハリー・ポッターとその友達を助けにきた!」
『ハリー・ポッターと死の秘宝』
あなたが選ぶドビーのお気に入りのシーンは入っていましたか?それともここには書かれていない別のシーンが思い浮かびましたか?