ドラコ・マルフォイ――ホグワーツきってのいじめっ子であり、(映画版のハーマイオニーいわく)「何て下劣なの ゴキブリ以下よ!」。そんな彼が、もしもグリフィンドールに組分けられていたら、何か変わっていたのでしょうか?今日はそんな「もしも」について考えてみましょう...。
ドラコ・マルフォイについては、あまりよくない噂が実に多く流れています――そして、残念ながらそのほとんどが言われても仕方のないものばかりです。彼は鼻もちならず、非情で、偏見まみれで、きわめつけにはかなりのうぬぼれ屋です。それでも、その性格の大部分は彼の育てられ方や、周囲の影響によるところが大きいかもしれません。もし、彼がグリフィンドールに組分けられていたら、今とは違う人物になれた可能性もあったのでしょうか?純血主義を重んじる自身の家族と同じ考え方を拒む可能性はあったのでしょうか?グリフィンドール生だった場合、ダンブルドアを殺す命令は彼に与えられていたのでしょうか?仮に与えられたとして、それは成功したのでしょうか?もしくは――ヴォルデモート自身を拒んだのでしょうか?そしてなにより、クラッブとゴイルはマルフォイがいなければどうなっていたのでしょう?ドラコ・マルフォイがスリザリン生でなかったらどうなっていたのか、考え始めると止まらなくなりますね。
ハリーがマダム・マルキンの洋装店でドラコ・マルフォイに初めて出会ったとき、ドラコに対する第一印象はよいものではありませんでした。マルフォイはこのときも(感心してしまうほどに)たった数分の間に自分がいかに無礼で、不快で、傲慢であるかを見せつけましたからね。このときのマルフォイは自分らしさ全開でした。なぜなら、自分がスターになれると信じていた新しい学校のための準備をしていたのですから。また、必ずやスリザリンに入り、家族の富や名声で確かな地位を得ることができるだろうと胸を張っていました。しかし、もしもこの自信を打ち砕かれてしまった場合――例えば、スリザリンでなくグリフィンドールをはじめとするほかの寮に組分けられてしまったとき――彼が自信満々に作り上げたプライドの壁はボロボロに崩される可能性はあったのでしょうか?
「まあ、ほんとのところは、行ってみないとわからないけど。そうだろう?だけど僕はスリザリンに決まってるよ。僕の家族はみんなそうだったんだから......ハッフルパフなんかに入れられてみろよ。僕なら退学するな。そうだろう?」
『ハリー・ポッターと賢者の石』
マルフォイが、自分が入りたくない寮に入っていたら――もしくは、自分の家族がよしとしない寮に入っていたら、苦しむのは目に見えますね。彼が持つこの不安定さは、彼自らの自信のなさを表しているかのようです。万が一、グリフィンドールに組分けられてしまった日には、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人でさえ、少し彼のことをかわいそうに思ったかもしれませんね。そして、ドラコがその同情の気持ちを利用する姿も容易に想像できます。抜け目のない彼であれば、一刻も早くも味方を作らなければいけないと思うでしょうし、あの有名人であるハリー・ポッターと友達になれれば、自分も多少は特別な扱いが受けられると考えることでしょう。
しかし、それでもやはりドラコがあの3人と仲良くなるのは難しかったと思われます。ドラコは家庭教育にのせいで実に根深い偏見を持っていました。特に、マグル生まれに対する偏見はかなりひどいものでした――そう、ハーマイオニーのようなマグル生まれにたいして。しかし、そんな不愉快な偏見はグリフィンドールではもちろん許されていませんから、思っていたとしてもドラコは黙っていなければならなかったでしょう。残念ながら、ハリーたちの時代、スリザリン寮の一部の生徒たちにとっては純血であることはまだかなり重要であると信じられていました――彼らの談話室に入るためのパスワードがある時期は「純血」であったほどですから。
そのため、ドラコが3人と友達になる代わりに、ハリーとロンを操って、なんとかハーマイオニーを2人から引き離そうとする姿なら想像できます。もちろん、自分の本当の気持ちを隠して。もし、彼が仮に引き離すことに成功した場合(可能性は限りなく低いとは思いますが)、「ハリー・ポッター」シリーズはもっと早く終了していたことでしょう。ハリーとロンはハーマイオニーなしで賢者の石までたどりつけなかったでしょうし、ひょっとしたらヴォルデモートが勝利を収める結末になっていたかもしれません。
スリザリン出身者だらけの一族に1人だけグリフィンドール生として混ざっていたら、かなり気まずい思いをしたに違いありませんよね。自分の家では、マグルに対する嫌悪感をこれでもかというほど両親からつぎ込まれたでしょうが、グリフィンドールの談話室では、そういった考えは当然、多くの生徒たちの反感を買ったでしょう。スリザリンという安全な場所がなければ(そしてなんでも横で肯定してくれるクラッブとゴイルがいなければ)、マルフォイは自分の考えをそこまでオープンにしなかったでしょうし、周りに敵意をむき出しにすることもなかったでしょう。とはいえ、静かであったとしても内心は全く変わっていない可能性のほうが高い気はしますが。
マルフォイの性格の大部分は彼自身のステータスからくるものであるため、恥をかくことや、ひとりきりになってしまうことにあまり慣れていません。しかし、かなり計算高いところもあるので、恐らく仲間が自分から離れないようにするために、学校では本心を隠し通すことはできたでしょう。ハリーやロンのような生徒たちに囲まれることで、ものごとに対する偏見は少し和らぐかもしれませんが、それでも満ち足りたマルフォイ家の特権を手放すようなヘマはしないでしょう。それに、自分の家族に歯向かうことはとても大変なことです。ドラコの性格上、しょっちゅう威張り散らしてはいますが、おそらく家族に立ち向かうほどの勇気は持てなかったことでしょう。
だからといって、彼と同じような状況に置かれた人なら誰もが尻込みしてしまうだろうといっているわけではありません――こんなときに対照的な例として思い浮かぶのが、シリウス・ブラックです。シリウスは、なにが正しいのかを心のなかでしっかりと分かっていました。そのため、自分の家や、家族との関係を犠牲にすることも恐れませんでした。マルフォイには、シリウスと同じ強さはなかったといってよいでしょう。自己保身欲が強いマルフォイは、贅沢な生活を手放すことがきっとできなかったのです。それに、富のある家族と疎遠になる必要などありません。シリウスは正しい選択をしたいという思いが強かったのに対し、マルフォイはより楽な道を選びたがるように思えます。マルフォイなら、学校で人気者になることよりも、自分の家族や彼らの価値観に賛同して得られる恩恵のほうをきっと選んだことでしょう。
これは注目される問いかけです。もし、ドラコがグリフィンドール生だったとしても、彼の両親とヴォルデモート卿との繋がりは強かったでしょうし、伯母もベラトリクスであることは変わりありません。そのため、マルフォイの館はヴォルデモートにとってはよいアジトであることも変わりはなかったでしょう。ダンブルドアも大きな脅威のままだったでしょうし、マルフォイがダンブルドアに近づくのにちょうどよい存在であったことは容易に想像ができますね。それゆえ、仮にドラコがグリフィンドール生であったとしても、ダンブルドアを殺す命令を受けていた可能性は限りなく高いといえます。
しかしながら、この場合ひとつだけ、大きな違いがありました。それは、スネイプ先生との関係です。マルフォイがグリフィンドール生だった場合、彼とスリザリンの寮監であるスネイプは、そこまで親しい間柄にはなっていなかっただろうと予想できます(たとえ、スネイプが実際はホグワーツのなかでヴォルデモートと繋がっている人物であったとしても)。しかしながら、そうであったとしてもダンブルドアは殺されていたでしょうし、スネイプは変わらずドラコを守るための「破れぬ誓い」を結ばされる人物の候補として残っていたことでしょう。しかし、この場合、スネイプはマルフォイと深く関わるというよりは、遠くから彼を見守るような役割をしていたのではないでしょうか。あまりにも近すぎる場合、スリザリンの寮監(しかも、自分の寮以外の生徒を毛嫌いすることで有名な)がグリフィンドール生のマルフォイに近づいていたら、マルフォイ自身も彼を本当に信頼してよいものかと悩んでしまったかもしれませんしね。スネイプとゆるぎない関係性が築けていなければ、マルフォイは頼れる相手が誰もおらず、1人で重責を担わなければならなかったでしょう。
しかし、そうなっていたとしても、天文台の塔での悲しい夜の出来事は起こっていたでしょう。ボージン・アンド・バークスのことを話したのはマルフォイの父親だったので、ドラコは姿をくらますキャビネット棚のことは知っていたでしょうし、吸魂鬼をホグワーツに招き入れることもできたはずです。ダンブルドアはドラコの魂を守りたいと思ったでしょうから、結果的にダンブルドアの命を終わらせる役目はスネイプになっていたでしょう。こういったことから、仮にドラコがグリフィンドール生だった場合でも、恐らくドラコはダンブルドアを殺そうと試みた(そして失敗に終わる)という結末になっていたと想像できます。
そうなった場合、ここで気がかりなことはただひとつ――ハリーは同じ行動をしていたかという点です。ハリーは、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のなかですでにドラコの様子がおかしいことに気づいていました。もし、彼らが同じ寮に所属していて、しかも友人だったとしたら、ハリーはドラコの様子をより間近で気づくことができたのではないでしょうか?
もし、「いじめっ子とはどんな人なのかを説明してください」と言われたら、恐らく誰もがドラコ・マルフォイの特徴をそのまま話すでしょう。マルフォイは、人をみじめな気持ちにさせることに実に多くの時間とエネルギーを費やし、かつそれによって得られる(と思い込んでいる)力を十分に感じているようでした。もしも、ドラコがグリフィンドールに組分けられていたら、周りの人たちにあからさまに嫌な態度を取ることはしなかったかもしれません。しかし、それは彼が本性を隠しているがゆえの結果だったでしょう。彼は心の底で感じていた不安定さから、自分が使える人間をそばに置いておきたいと思うでしょうから、いじめるのとは少し違う手段を取ったかもしれません。
あからさまにいじわるをするよりも、恐らくすぐに感心してしまう人たちを巧みに操ろうとしていたのではないでしょうか。そんな操りにまんまと引っかかってしまいそうなグリフィンドール生は数人思い浮かびますよね。例えば、シェーマス・フィネガンです。シェーマスの母親はヴォルデモートの復活を信じていなかったとき、彼女はその考えを息子のシェーマスにも植えつけました。そしてその結果、影響されやすかったシェーマスはしばらくの間、ハリーを拒むようになったのです。このことから、マルフォイがまるで毒をゆっくりと浸透させるかのようにグリフィンドール生たちに影響を与え、シェーマスのような生徒に対し、自分より下に見ている生徒をのけ者扱いするように仕向ける姿が目に浮かびます。
また、マルフォイが自分の命令を聞いてくれる手下候補をつのる姿も想像できます。スリザリンのマルフォイの両脇には常にクラッブとゴイルがいました。グリフィンドール生だった場合、マルフォイはネビルのような人物を自分のそばに置こうと考えたかもしれません。ネビルは純血で、しかも操りやすそうだと思われていた可能性があります。しかし、ネビルは見た目よりもずっと勇敢であることを私たちは知っていますから、きっとマルフォイはネビルを従わせるのに手こずったことでしょう――そうなると、今度はネビルを手下ではなくいじめのターゲットにしようとしたかもしれません。マルフォイはグリフィンドール生になればあからさまな形で人をいじめることこそなかったかもしれませんが、根も葉もないことを周りに言いふらし、自分は「正しい」人としかつるまないようにして、自分よりも弱いと思っている生徒をいづらくするように仕向けたのではないでしょうか。
ヴォルデモート卿や、その信者たちと強い繋がりのある家族を持っていれば、ドラコ自身もヴォルデモートをサポートする立場になっていたことは間違いないでしょう。たとえドラコがグリフィンドール生だったとしても、ヴォルデモートの支持者になることは容易です。ピーター・ペティグリューもグリフィンドール生でしたが、ヴォルデモートのために友人たちを裏切ったことは忘れられるはずがありませんよね。しかも、彼はドラコよりもヴォルデモートとの接点は少なかったはずです。
確かにマルフォイは純血かつ、なによりも血筋を価値あるものとする死喰い人の家系の生まれです。しかし、このことを抜きにしても、彼は恐らくヴォルデモートに強い関心を抱いていたと考えてよいでしょう。ドラコは私利私欲に突き動かされる人物であり、自分自身が他人よりも優位であると思っています。それゆえ、ヴォルデモートの言葉にも聞き入っている姿が思い浮かびます。ヴォルデモートが勝った場合、その支持者たちは間違いなく魔法界の食物連鎖の頂点に立てるでしょうし、自分に反発する者に気を遣う必要もなくなります。他のグリフィンドール生の前で自分の本当の姿を隠すことも、自分の家族とヴォルデモートの関わりについて控えることも必要なくなりますからね。
しかしながら、心に留めておくべきこととして、ドラコは成長するにつれて性格が温厚になったというのも事実です――これはおそらく彼の妻、アステリアによるところが大きいでしょう。アステリアもドラコと同じく純血の家系の生まれですが、反マグル感情は認めませんでした。そのため、夫婦は自分たちの息子スコーピウスにもそのような感情を抱かせないように育てることを決意します。
しかしこれはヴォルデモートの死後のことでした。では、ヴォルデモートが力に目覚めたころであった場合でも、ドラコは変わることができたのでしょうか?もしくは、すでに彼の家族によって偏見まみれになってしまっていたのでしょうか?もしかすると、ヴォルデモートの死こそがマルフォイを本当の意味で変化させたと言えるかもしれません...。
マルフォイがグリフィンドールに組分けられていたとしたら、どれほどの影響が忠実な子分のクラッブとゴイルにあったかは、計り知れません。マルフォイがリーダーとして存在しなければ、頼りにできるのはお互いの存在だけだったことになります。もしかすると、まったく別の生徒の子分になっていた可能性すらあるかもしれませんね。
もしも、マルフォイに盲目的に従わず、彼の誤った判断に付き合っていなければ、彼らの学校生活はより穏やかなものになっていたことでしょう。そうなっていたら、彼らもヴォルデモートを支持する家族に育てられましたが、さまざまな出来事にそこまで積極的に加わることもなかったはずです。もしもマルフォイとの繋がりがそこまで深くなければ、クラッブが死ぬことはなかったのでしょうか?マルフォイがいなければ、必要の部屋で起きた悪霊の火の出来事は起こらなかったのでしょうか?リーダーであるマルフォイがいないクラッブとゴイルは舵なしの船に乗っているようなものだったのでしょうが、そこまで暗い道を歩まずに済んだのかもしれません――とはいえ、彼らの両親は死喰い人だったので、希望的観測に過ぎないかもしれませんね。
あなたはどう思いますか?もしも、マルフォイが人生の分岐点で違う道を歩んでいたら、さまざまな結末も変わっていたのでしょうか。
私たちと一緒に、あらゆる「もしも」を考えてみましょう。例えば...
もしも、ダンブルドアがハリーに、彼こそが「選ばれし者」であることをもっと早く告げていたとしたら?
もしも、ハリーでなくネビルが「選ばれし者」になっていたら?
想像するだけで、ワクワクしてきますね。
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