ハグリッドがくれた心温まる瞬間

ビウス・ハグリッドはホグワーツの鍵と領地を守る番人で、どんな魔法生物も愛する、あらゆる意味における「巨大な魔法使い」。(すべてではありませんが)この愛すべきキャラクターがくれた心温まる瞬間をご紹介します。


ホグワーツへの入学前に、心配いらないとハリーに伝えた時

考えてみれば、ハグリッドはハリーを魔法界に導くのにぴったりな人物でした。ダーズリー家を怖がらせるほど強烈でしたが、優しくて、自然体で、親身になって話してくれます。まさに、優しい巨人です。また、他の人と少し違う過去を持つ苦しみを知っていたので、ホグワーツでのハリーの生活は楽ではないと分かっていました。だからこそ、誕生日にダイアゴン横丁へ出かけたときの言葉にはグッとくるものがあります。まっすぐで思いやりにあふれた言葉でした。その言葉からはハグリッドの人柄がにじみ出ていたといってよいでしょう。

「ハリー、心配するな。すぐに様子がわかってくる。みんながホグワーツで一から始めるんだよ。大丈夫。ありのままでええ。そりゃ大変なのはわかる。おまえさんは選ばれたんだ。大変なことだ。だがな、ホグワーツは、楽しい。俺も楽しかった。いまも実は楽しいよ」
『ハリー・ポッターと賢者の石』

マルフォイの侮辱からロンを助け、ハーマイオニーを慰めた時

2年生になる頃、マルフォイの意地悪は日常茶飯事になっていましたが、ハーマイオニーを「穢れた血」と呼んだのはやり過ぎでした。杖が逆向きになってロンが自分でナメクジを食らった時、事態を収拾させてくれたのは......。もちろん、ハグリッドでした。ハグリッドはロンのしたことを認め、(「出てこんよりは出たほうがええ」(『ハリー・ポッターと秘密の部屋』)と)次から次へと出てくるナメクジを吐き出す場所を与えました。そして深く傷ついたハーマイオニーに対し、ハグリットは誇りに思っていると伝えました。彼女を慰める最善の方法を知っていたからです。

「それに、俺たちのハーマイオニーが使えねえ呪文は、いままでにひとっつもなかったぞ」
ハグリッドが誇らしげに言ったので、ハーマイオニーはパーッと頬を紅潮させた。
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』

悪口は自分に返ってくるのだと、いつもどおりどっしり構えて教えたのでした。(それでも、マルフォイはナメクジを食らうべき。)

ハリーへの寄り添い方

ハグリッドは、自分がトラブルに巻き込まれようとも仲間を守りました。アラゴグなら、きっと分かってくれるでしょう。ハリーが、ほとんど首なしニックとジャスティン・フィンチ‐フィレッチリーが石になったのを発見してダンブルドアの校長室に連れていかれた時、ハグリッドがハリーを守るために飛び込んで来たのも不思議ではありませんでした。それから数年後、ハリーが三大魔法学校対抗試合の4人目の代表に選ばれたと分かった時も、ハグリッドはハリーの説明を何の疑問も持たずに受け入れた数少ない者の一人でした。

「それじゃ、僕が入れたんじゃないって、信じてるんだね?」
ハグリッドへの感謝の気持が込み上げてくるのを、顔に出さないようにするのは難しかった。
「もちろんだ」ハグリッドが唸るように言った。「おまえさんが自分じゃねえって言うんだ。俺はおまえを信じる――ダンブルドアもきっとおまえを信じちょる」
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

どんな状況でも、ハグリッドのハリーに対する寄り添い方は完璧なものでした。それはハリーに家族の写真を渡すことや、セドリックを失った悲しみを認めること、あるいは彼をひたすら信じることでした。

リータ・スキーターが書いた、巨人に関する記事への反応

最初は引きこもってしまったハグリッドでしたが、ダンブルドア、ハーマイオニー、ハリー、ロンが、半巨人であることは何の問題もないと伝えると、やる気を取り戻しました。

「『恥じることはないぞ』って、俺の父ちゃんはよく言ったもんだ。『そのことでおまえを叩くやつがいても、そんなやつはこっちが気にする価値もない』ってな。親父は正しかった。」
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

暴露後にハグリッドが逃げ出したくなった気持ちは理解できましたが、ダンブルドアからの信頼をありがたく感じて自信を取り戻したのは、すばらしかったです。そして、のちにハーマイオニーがリータ・スキーターに悪意ある記事を書かれて腹を立てた時、ハグリッドは自身の経験をもとに彼女を慰めました。

「あぁぁー、心配するな」ハグリッドがハーマイオニーを見下ろしてやさしく言った。「俺も、リータ・スキーターが俺のおふくろのことを書いたあとにな、そんな手紙だのなんだの、来たもんだ。......」

(省略)「やつらは、頭がおかしいんだ。ハーマイオニー、また来るようだったら、もう開けるな。すぐ暖炉に放り込め」
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

ヴォルデモートの復活に対する受け止め方

ハリー、ロン、ハーマイオニーに伝えたように、ハグリッドはヴォルデモートが復活すると知っていました。彼は、ファッジのように現実から目を背けたり、シリウスのように危険に立ち向かったりしていません。冷静に受け止め、きっと大丈夫だと信じながらも、もしもの時は戦うと決めたのです。そして最悪の事態を想定しつつ、セドリックの死を嘆くハリーを慰めました。

「くよくよ心配してもはじまらん」ハグリッドが言った。「来るもんは来る。来たときに受けて立ちゃええ。ダンブルドアが、おまえさんのやったことを話してくれたぞ、ハリー」
ハリーを見ながら、ハグリッドの胸が誇らしげに膨らんだ。
「おまえさんは、おまえの父さんと同じぐらい大したことをやってのけた。これ以上の褒め言葉は、俺にはねえ」
ハリーはハグリッドにニッコリ微笑み返した。ここ何日かで初めての笑顔だった。
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

シリウスの死後、ハリーを慰めようとした時

5年目は、ハグリッド自身も波乱万丈の日々を過ごしていました。グロウプをしつけ、腹を立てたケンタウルスから疎外され、アンブリッジ先生にクビにされたうえに、彼女の子分たちに攻撃されていました。しかし、ハリーを想う気持ちは変わりませんでした。シリウスの死から数日後、ハリーがホグワーツを当てもなくさまよっていた時、ハグリッドは慰めの言葉をかけました。シリウスの気持ちを想ったハグリッドの言葉は、おそらくハリーが聞き入れるべき真実でした。

「ええか......」ハグリッドがテーブルの向こうから、ハリーのほうに身を乗り出した。「シリウスのこたぁ、俺はおまえさんより昔っから知っちょる......あいつは戦って死んだ。あいつはそういう死に方を望むやつだった――」
「シリウスは、死にたくなんかなかった!」ハリーが怒ったように言った。
ハグリッドのぼさぼさの大きな頭がうなだれた。
「ああ、死にたくはなかったろう」ハグリッドが低い声で言った。「それでもな、ハリー......あいつは、自分が家ん中でじーっとしとって、ほかの人間に戦わせるなんちゅうことはできねえやつだった。自分が助けに行かねえでは、自分自身に我慢できんかったろう――」
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

ダンブルドアの死後、ホグワーツを離れることを拒否した時

ダンブルドアのいないホグワーツと同じく、ハグリッドのいないホグワーツも想像できませんでした。だからこそ、失意のどん底にいるハグリッドがホグワーツにとどまると話した時は、大きな安堵感がありました。

「そりゃ、俺はとどまります」
ハグリッドが言った。大粒の涙が目の端からぼろぼろこぼれ続け、モジャモジャ髯に滴り落ちていた。
「俺の家です。十三歳のときから俺の家だったです。俺に教えてほしいっちゅう子どもがいれば、俺は教える。......」
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

(かなり軽率でしたが)「ハリー・ポッター応援」パーティーを開いた時

分霊箱を見つける旅で、笑顔になれる場面はあまりありませんでしたが、ロンがハリーとハーマイオニーに「ポッターウオッチ」を聞かせた時は、うれしい驚きがありました。ハグリッドが「ハリー・ポッター応援」パーティーを開いたうえに、拘束は免れたと分かったからです。ハグリッドの判断は最善ではありませんでしたが、ハリーたちは危機的状況にあっても揺るがないハグリッドとの絆を確認できました。先の見えない状況に明かりが灯されたのです。