映画『ハリー・ポッター』シリーズより 原作にはない忘れられない瞬間

『ハリー・ポッター』シリーズの映画が公開されると、本にはなかった場面やせりふ、新しい登場人物たちとの出会いがあります。ここでは、映画版で追加された忘れられない瞬間をあつめました。




ぎこちない握手

『ハリー・ポッターと秘密の部屋(2002)』で、バジリスクが退治され、石になった生徒がもとにもどり、無実の罪でアズカバン送りにされていたハグリッドが帰ってくると、ホグワーツは歓喜に包まれました。原作も映画も、安堵感に満ちたこの大切なシーンを同じように描いています。ただ映画では、ハーマイオニーとロンの間に生まれているぎこちなさが描かれています。みんなのところにもどったハーマイオニーは、ロンとはハグをしようとしません。ハグの代わりにしたのは......握手でした。

ナイジェル!

ナイジェルは、純粋でかわいいグリフィンドール寮生。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(2007)』で初めて登場します。ナイジェルは映画にしか登場しませんが、原作でいうコリン・クリービーのような人物で、ハリーたちの手助けをする笑顔が素敵な下級生です。

マクゴナガル先生とダンス

4年生になったハリーたちは「クリスマス・ダンスパーティー」に招待されます。原作では、マクゴナガル先生が生徒たちに「(クリスマス・ダンスパーティーは)羽目をはずすチャンスです」としぶしぶ話しています。しかし、映画のマクゴナガル先生は原作よりもう少しパーティーを楽しみにしています。ダンスのお手本として、恥ずかしがるロンと踊ってみせます。マクゴナガル先生はダンスが上手そうだと思っていましたが、わたしたちの直感は当たっていたようです。

「いいぞ ジェームズ」

これは、楽しいシーンのせりふではありません――むしろ衝撃的なシーンと言っていいでしょう。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(2005)』の最後、神秘部の戦いの最中にシリウスがハリーに向かって「いいぞ ジェームズ」と声をかけます。このせりふにより、シリウスの死は、一層深く胸に突き刺さるものとなりました。原作では、シリウスがいまは亡き親友の姿をハリーに重ねているように思える場面が何度か描かれています。その結果、シリウスはウィーズリー夫人に「この子はジェームズじゃないのよ!」と言われ、激しく言い争いになっていました。

映画版ではシリウスの思いが浮き彫りになっています。シリウスはともに戦うハリーを――ほんの一瞬――いまは亡き親友の名前で呼びます。そして、無情にもその数秒後には殺されてしまうのです。短いせりふですが、記憶に残るシーンになりました。

「でも、ぼくは選ばれし者だよ」

ハリーは有名人ですが、うわさをされたり自分のことを騒ぎ立てられたりすることを嫌がっていました。しかし『ハリー・ポッターと謎のプリンス(2009)』の図書館でのおもしろいやりとりで、ハリーにも自分の状況を笑いに変えるユーモアがあることが示されました。ハーマイオニーが、同級生のロミルダ・ベインがハリーを見つめていることに気づくと「あの子の狙いは"選ばれし者"よ」と警告します。

それに対する「僕のことだ」というハリーの答えはなかなかなものです。ずっとヴォルデモート卿に狙われてきたハリーだからこそ言えるジョークですね。

ハサミも忘れずに

ハリーは、スラグホーン先生の記憶を引き出すために、飲んだ者に必ず幸運をもたらす「幸運の液体」フェリックス・フェリシスを飲みます。これは原作でも映画でも重要なシーンとして描かれているのですが、ダニエル・ラドクリフがコミカルに演じた「幸運の液体」を飲んだハリーは最高でしたね。なかでも、大きなはさみを持った巨大グモのまねを始めるシーンは笑ってしまいます――アクロマンチュラのアラゴグのお葬式で、本当なら悲しいシーンのはずだったのですが......。

杖を掲げる

感動的なシーンを一つ。ダンブルドアの死後、生徒やホグワーツの職員は特別な方法でダンブルドアを追悼しました。杖に明かりを灯し、空に向かって掲げたのです。原作ではダンブルドアのお葬式が描かれていましたが、映画に登場するこの動作に涙があふれました。

「O Children」

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1(2010)』で分霊箱を探す旅の途中、ハリーとハーマイオニーは初めての状況に立たされます――ふたりを残してロンが去ってしまうのです。原作では、ロンが去ってからの場面は、落ちこむふたりの様子が静かに描かれていました。映画では、テントの中でラジオから流れるニック・ケイヴの「O Children」にあわせて、ハリーとハーマイオニーがダンスを踊る、心揺さぶるシーンとして描かれています。

短いですが意味のこめられたこのシーンは――第一に、ハリーとハーマイオニーの純粋な友情が描かれています――ふたりの間で何かが起きているのではないかと心配するロンの様子をみると、ますますいい演出だと思えますね。それから、このシーンにはハリーとハーマイオニーが抱えていたと思われる様々な感情や疲労が表現されています――ロンがいなくなって落ち込む気持ち、目の前の問題に対する焦燥感、終わりのみえない分霊箱探しへの絶望感。短くシンプルなシーンでしたが、とても印象的なものとなりました。

ヴォルデモートに取りこまれていく

ドラコ・マルフォイはヴォルデモート卿とその部下の死喰い人の動きに巻きこまれていくのですが、その先には試練が待ち受けていました。ドラコは6年生になると、暗い場所に追い込まれていきます。映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2(2011)』で、ヴォルデモート卿から......ハグをされた瞬間、ドラコを取り巻く状況はいっそうおかしな方向にむかっていきます。ドラコ役を演じたトム・フェルトンの表情からも分かりますね。

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