グリンデルバルドとダンブルドアの数奇な過去:深く掘り下げてみましょう

ルバス・ダンブルドアとゲラート・グリンデルバルドの関係性には、長く複雑な歴史があります。今回は、ふたりの過去がシリーズ最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』にどのようにつながる可能性があるのか探ってみたいと思います。

ふたりの出会い

アルバス・ダンブルドアがゲラート・グリンデルバルドと初めて出会ったのは、17歳のころで、とても辛い時期でした。当時のダンブルドアはホグワーツを卒業したばかりで、在学中はすべての科目において優秀で、主席に選ばれたり、呪文術に優れた魔術師におくられるバーナバス・フィンクリー賞をはじめとした数々の賞を受賞したりと、学校始まって以来の秀才だと噂されていました。ホグワーツ卒業後もダンブルドアには、希望に満ちた未来が続くはずでした。友人のエルファイアス・ドージと世界旅行に出かける予定だったのです。ところが、旅行に出発する前日に悲劇が起こります。母親のケンドラが事故で命を落としたのです。そのためダンブルドアはゴドリックの谷に戻り、弟のアバーフォースと妹のアリアナの世話をすることになりました。それは決して簡単なことではありませんでした。マグルの少年たちに襲われたアリアナは、それ以降、魔力を自分の内側に向けるようになり、精神的に不安定で危険な状態でした。そのため、いつもだれかが付き添っている必要がありました。

ちょうどその時期に、ダンブルドアの暮らすゴドリックの谷にもうひとり魔法使いがやってきました。ゲラート・グリンデルバルドです。グリンデルバルドは大おばのバチルダ・バグショットの家に滞在するためにやってきたのです。ダンブルドアと同じで、グリンデルバルドも優秀な若き魔法使いでした。しかし、リータ・スキーターによると(みなさんもご存知のとおり信頼できる情報源とはいえませんが)、グリンデルバルドはその才能を賞や輝かしい功績のためではなく、別の目的のために使っていました。その結果、ダームストラング専門学校から退学処分を受けたのです。

しかし、小さな村に閉じ込められた同年代の聡明な魔法使いふたりが、惹かれあった理由は簡単に想像することができます。ダンブルドアとグリンデルバルドはすぐに友だちになり、意見をぶつけ合い、また「死の秘宝」に夢中になりました。そして、魔法使いがマグルを支配する世界を創るという計画を思いついたのです。

母親の死後、小さな村で息苦しさ感じていたダンブルドアにとって、グリンデルバルドと話をする時間は、現実から逃れられるひとときでした。その間は、自分の好きなことを自由にできる未来を想像できたのでした。ダンブルドアは、グリンデルバルドとふたりで死の秘宝を3つすべて見つければ、圧倒的な力を手に入れ、「死を制する者」になるだけでなく、亡くなった両親を「蘇りの石」を使って呼び戻せると信じていました。そうすれば、自分の肩に重くのしかかった責任から解放されると考えていたのです。

しかし、ダンブルドアはすぐに兄弟たちによって現実を思い知らされることになります......。


『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』

決別

ふたりが出会った夏のあいだ中、ダンブルドアは弟と妹をないがしろにしていました。そんな兄の様子に弟のアバーフォースはすぐに気づきました。アバーフォースは、新学期にホグワーツに戻ることになっていて、ダンブルドアとグリンデルバルドの計画にうんざりしていました――さらに、妹のアリアナのことも心配していました。そして、兄であるダンブルドアにはっきりとこう言ったのです。精神的に不安定な妹を連れて、死の秘宝を探すなんてむりだ、と。ダンブルドアとグリンデルバルドは、自分たちの計画を台無しにされたことを受け入れられず、憤る気持ちを露にしました。

アバーフォースによると、このとき、怒ったグリンデルバルドに、ばかな子どもだと罵られたそうです。さらに、ダンブルドアとの計画が成功すれば、アリアナを世間の目から隠さなくてよくなる、だから邪魔をするな、と言われたようです。

残念ながら、アバーフォースとグリンデルバルドの口論はみるみるうちにエスカレートしていきました。ふたりは杖を手に取り、グリンデルバルドはアバーフォースに「磔の呪文」を放ちました。ダンブルドアが止めに入りましたが、三人の魔法使いたちの間で激しい戦いが始まりました。大きな音や閃光がアリアナを苦しめ、いつのまにかアリアナも戦いに巻き込まれていきました。アバーフォースは当時のことを振り返って、アリアナは三人を止めるために何かしたかったけど、どうすればいいかわからなかったのだろう、と語っています。呪文が飛び交う混乱のなか、アリアナは命を落としてしまいます。誰の放った呪いが彼女の命を奪ったのかはわかりませんが、その後グリンデルバルドは逃亡し、ダンブルドアとの友情は終わりを迎えました。


『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

「ファンタスティック・ビースト」シリーズで描かれる複雑な関係

わたしたちが「ファンタスティック・ビースト」シリーズで目にするダンブルドアとグリンデルバルドはあの夏から数十年が経った頃です。年月が過ぎても、理想の魔法界をつくりあげるというグリンデルバルドの決意はゆるぎなく、杖職人のグレゴロビッチから「ニワトコの杖」を盗みだし――死の秘宝のひとつを手に入れることに成功しました。

一方で、ダンブルドアはまったく違う道を進んでいました。グリンデルバルドと決別した後、ホグワーツでだれからも尊敬される先生になっていました。ときには魔法省と対立することもありましたが、才能に恵まれた強い魔法使いとしての名声を確立していきました。ここ数年で、ダンブルドアはかつての友人であるグリンデルバルドがどんどん危険な存在になっていくのに気づいていました(『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の冒頭でMACUSA(アメリカ合衆国魔法議会)の拘束から逃れた後は特にそうです)。ところが、不思議なことにダンブルドアは、グリンデルバルドに対抗しようとはしませんでした――魔法界の多くの人たちは、グリンデルバルドを止められるのはダンブルドアしかいないと思っていたにも関わらず。

そのうち、ダンブルドアがグリンデルバルドを止めるために直接対決しようとしないのは、気が進まないからではなく、不可能だからだということがわかってきます。グリンデルバルドがパリで開いた集会の混乱のなか、ニフラーのテディがグリンデルバルドから宝石で装飾された小瓶を盗みます。その後、ニフラーが盗んだ小瓶はダンブルドアとグリンデルバルドの間で結んた「血の誓い」だったことがわかりました。これは、10代のころのふたりの関係をより深く知る手がかりになりました。きっと、互いを相手に戦わないと血の誓いを立てるほど、親しい仲だったのでしょう。

しかし『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の最後で、ニュートが血の誓いのペンダントをダンブルドアに渡しています。その後のダンブルドアとグリンデルバルドの関係がどうなるのか、想像せずにはいられません。ダンブルドアは血の誓いのペンダントを破壊できるのでしょうか。そもそも、破壊したいと思っているのでしょうか。わたしたちは、1945年の決闘までふたりが直接戦うことはないと知っています。ということは、ダンブルドアは黒い魔法使いを止めるために戦えるようになったということなのでしょうか。


『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』

晩年のふたり

「ハリー・ポッター」シリーズの物語が始まる何十年も前に、ダンブルドアはグリンデルバルドを倒しています。それでも、ふたりの歴史は語られるべきなのです――特に、グリンデルバルドの名前は「ハリー・ポッター」シリーズでも出てきていましたよね。

実は「ハリー・ポッターと賢者の石』で、すでにグリンデルバルトの名前が登場していました。ハリー・ポッターが人生で初めて蛙チョコを食べたとき、ハリーのチョコのおまけにはダンブルドアのカードが入っていました。そのカードには「特に、1945年、黒い魔法使いグリンデルバルドを破ったことなどで有名」と書かれていました――しかし、それ以降は『ハリー・ポッターと死の秘宝』までグリンデルバルドの名前があがることはありませんでした。わたしたち読者は、『ハリー・ポッターと死の秘宝』で初めて、ダンブルドアとグリンデルバルトの壮絶な過去と、ふたりが互いのことに詳しい理由を知るのです。また、グリンデルバルトの物語の結末も明らかになります。ヌルメンガード城の最上階に幽閉されていたグリンデルバルトは、ニワトコの杖を探し求めていたヴォルデモート卿によって殺されてしまいます。

興味深いのは、グリンデルバルトがヴォルデモートにニワトコの杖の場所を教えなかったことです。きっと、現在の持ち主がダンブルドアであることを知っていて、持ち主と一緒に墓の中で眠っているだろうと考えたのでしょう。グリンデルバルトはダンブルドアのせいで幽閉されたのだから、ニワトコの杖の情報を喜んでヴォルデモートに渡すのではないかと予想した人もいるかもしれません。しかし、実際はそうはしませんでした。グリンデルバルトがなぜ、ヴォルデモートにニワトコの杖の在処を明かさないことを決めたのか、語られることはありませんでしたが、その決断は素晴らしいですよね。

ヌルメンガード城で幽閉されていた50年の間に、グリンデルバルドは自分の行いを考え直していた、とも言われています。ヴォルデモートが死の秘宝を手に入れるのを阻止することで、少しでも自分の犯した罪を償おうとしたのかもしれません。一方で、これについてはハリーが興味深く納得のいく発言をしています。ハリーはこんなふうに語っていました。グリンデルバルドは、ヴォルデモートにダンブルドアの墓を荒らされないために、杖の在処を明かさなかったのかもしれない、と。もしそれが本当なら、壮絶な戦いを経てもなお、グリンデルバルドはかつての友に愛情や尊敬を抱いていたのかもしれません......。


『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』ではどうなる?

このふたりの物語について、始まりと終わりはわかっているものの、その間に何が起きていたのかは、まだ謎に包まれています。ですが、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』の予告を見る限りでは、謎に包まれていたふたりの過去が少し明らかになるかもしれません。少なくとも、ふたりの関係についてより深く知ることができるでしょう。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』では、今回の記事で触れた血の誓いについて、それからダンブルドアが血の誓いをどうするのか、そのあたりが詳しく描かれるのではないでしょうか。ダンブルドアが、妹であるアリアナの死を招き、弟のアバーフォースとの関係が険悪になり、もう二度と支配のために圧倒的な力を追求しないと心に決めたのは、間違いなくグリンデルバルドの出会いがきっかけでした。ダンブルドアは、これほどまでに複雑で長い歴史のある相手を倒すために動きだせるのでしょうか。

最後にもうひとつ、予告編で一瞬だけ映るダンブルドアとグリンデルバルドのツーショットがどうしても気になってしまいます。1945年のあの有名な決闘まで、ふたりが会うことはなかったというのは有名な話です......しかし、それは本当でしょうか。それとも、まだ語られていない複雑な歴史があるのでしょうか。ひとつだけ言えるのは、ふたりの魔法使いはまだ絆で結ばれているということです。ダンブルドアとグリンデルバルドの物語がどうなるのか楽しみですね。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』4月8日(金)公開
https://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/