さまざまな「もしも」を考えることがありますが、今回は、もしもスネイプがリリー・ポッターと同じ寮に組分けられていたら、彼の人生がどう変わったのかを考えてみましょう。
かつて、アルバス・ダンブルドアは「我々の行動の因果というものは、常に複雑で、多様なものじゃ。だから、未来を予測するというのは、まさに非常に難しいことなのじゃよ......」と言っていたことがありますが、まさにその通りなのです。運命や予言といったものは、『ハリー・ポッター』シリーズ全体を通してしばしば気まぐれに顔を出してきました。結果的にハリー・ポッターが「選ばれし者」になりましたが、この物語にはさまざまな展開を迎える可能性がありました。例えば、ヴォルデモートがハリーの代わりにネビルの家に向かっていた場合や、アルバスがトム・リドルをホグワーツ魔法学校へ招いていなかった場合が考えられるでしょう。
しかし、これらを全て頭に入れたうえでも、おそらく組分け帽子が11歳の若きセブルスの頭の上で高らかと「スリザリン!」と叫んだその瞬間から、魔法界の運命はもう決まったも同然だったといえるでしょう。それでは、もしセブルスがスリザリンに組分けられていなかったとしたら、どんなふうに物語が変わっていたのかをさっそく見ていきましょう。
まず始めに、愛すべきスリザリン生たちにこれだけはいわせてください。スリザリンはもちろん、素晴らしい寮です。頭の回転が速く、野心的な生徒たちであふれていますし、他の寮と同じくらい尊敬できる寮です。しかしながら、ヴォルデモートの力がより強力なものになり、信者を増やしていたころ、スリザリンの評判はよいといえるものではありませんでした。また、創設者であるサラザール・スリザリンの影響で、トム・リドルから50年後のマルフォイにいたるまで、「純血」であることがその他の魔法使いたちよりも優れているという考えを持つようになった生徒もいたほどです。
スネイプが初めてリリーと出会ったとき、ふたりはすぐに意気投合し、たちまち親しくなりました。セブルスは魔法についての知識はもちろん、自分の悲しい生い立ちまで、ありとあらゆることをリリーに共有しました。しかし、ふたりがホグワーツに通うようになってから、全てが変わってしまったのです。組分け帽子がセブルスをスリザリンに、そしてリリーをグリフィンドールに組分けたその瞬間から、ふたりの間に距離ができてしまいました。そして、リリーが魔法にあふれた新しい学校生活を心から楽しんでいたのに対し、スネイプというと、ルシウス・マルフォイやエイブリー、さらにはマルシベールといった顔ぶれと一緒に過ごさなければなりませんでした。あのマルシベールですよ!
もし彼がハッフルパフやレイブンクロー、グリフィンドールに組分けられていたら、もっと安心できるような仲間を選べていたかもしれません。そして、スネイプは容赦なくジェームズやシリウスにいじめられていたというのは事実なのです。ジェームズたちは、知り合う前からスリザリンを毛嫌いしていて、スネイプがどんな人物なのかを知ろうともせず、彼を傷つけたのです。その結果、スネイプは怒りっぽく、辛辣で、暇さえあれば「セクタムセンプラ!」のような呪文を生み出すようになってしまったのでした...。
リリーが魔法薬学で優れた成績を誇り、ジェームズと口げんかしている間、セブルスは深刻な事態に陥っていたのでした。闇の魔術に心を奪われた友達に囲まれながら、ますます邪悪な魔法へとのめりこんでいき、ヴォルデモートの教えに感銘を受けるようになってしまいました。その結果として、彼の人生における唯一の光であったリリーのことを「穢れた血」と呼んでしまう一件が起きてしまったのです。
確かに、当時のスネイプは正気ではありませんでした。ジェームズ・ポッターに恥をかかされて頭に血がのぼっていたし、ひょっとしたらリリーはジェームズのことが好きなのではと疑うまでだったのです。しかし、あの許しがたい言葉によって、リリーとの友情は完全に崩れてしまいました。ほどなくして、リリーはジェームズと交際しはじめ、その後はみなさんが知っている通りの物語です。
スネイプがスリザリンに組分けられていなければ、間違ったタイプの友人たちと過ごす時間も減っていたでしょうし、ジェームズやシリウスからいじめられることもなかったでしょう。その結果、リリーとの友情も続いていたかもしれません。しかし、実際のところは、リリーがスネイプに与えたよい影響は彼のなかで完全に消えてしまったのです。もしスネイプがスリザリンに入っていなければ、ひょっとすると、リリーとジェームズは付き合うことにならなかったかもしれません。考えてみてください。もしハリーがスリザリンに組分けられていたら、きっとロンやハーマイオニーと友達になっていなかったですよね。だとすると、どんな物語になっていたのでしょうか?そのシナリオも考えてみると興味深いものですね。
とはいえ、スネイプの組分け先が変わっていたとしても、全てがドミノ式で変わっていたとは限りません。たとえスネイプがスリザリンに組分けられていなかったとしても、ヴォルデモートは再び力を蓄えていたことでしょう。しかし、その場合スネイプは初めから善良な魔法使いの側に立っていた可能性があります。そうなっていたら、ヴォルデモート卿にトレローニー先生の予言が伝わっていなかったかもしれません。第一次魔法戦争の結果が変わっていたかもしれませんね。
しかしながら、セブルスにとってはこの組分け帽子がもたらした結果は、ひどいいじめを受け、唯一の愛する人を失うという選択をし、ヴォルデモートを完全に倒し、自らが思いを晴らしながら死んでいくという悲劇の物語の序章に過ぎませんでした。
組分け帽子が違う寮を選んでいたとしても、スネイプが誤った道に進んだ可能性もあったのかもしれません。結局のところ、どんなストーリーになっていたかは、誰にも分からないのです。