ハリー、ロンとハーマイオニーが『ハリー・ポッターと賢者の石』で友達になっていなかったら?

リーがロンやハーマイオニーと友達になっていなかったらどんな物語になっていたのでしょうか。もしくは、彼がスリザリンに組分けられていたら...。今回は、『ハリー・ポッターと賢者の石』のなかで物事が違う方向に進んでいた場合、どのような物語になっていたかを考えてみましょう。

どんな物語も人生のように、あらゆる決断によって形作られていきます。例えば、ヴォルデモート卿はハリー・ポッターの両親を殺すことを決めましたし、アルバス・ダンブルドアは、赤ん坊のハリーをダーズリー一家のもとで安全に育ててもらおうと決意をしましたね。そしてダーズリー一家はハリーをまるで虫けらのように扱おうと決めたのです。このように、ひとつの決断によって道が開かれ、ほかの可能性があった道は断たれるのです。

そのため、選択しなかった道をたどっていたらどうなったのか、気になるところですね。量子力学では、このような考えを多世界解釈と呼びます。これは、「ひとつひとつの決断の場面で道が枝分かれしていて、それぞれの分かれた道の先に別の世界が続いている」という考えです。

「ハリー・ポッター」シリーズにおける大きな分かれ道はもちろん、第1巻の『ハリー・ポッターと賢者の石』で登場します。では、選ばれなかった道の先にはどんな未来が待っていたのでしょうか。どんな決断が、私たちの知っている物語の結末を変えることになったのでしょうか。その答えを探してみましょう...

ハリー・ポッターがマグルの世界で育っていなかったら?

『ハリー・ポッターと賢者の石』の冒頭部分から、とても大きな決断がされていました。それは、アルバス・ダンブルドアが、普通の男の子として育ててもらえると信じてハリー・ポッターを、ハリーの親戚でありマグルのダーズリー家に預けたことでした。

しかし、ダンブルドアがこの決断をしていなかったらどうなっていたのでしょうか。ハリーが自分の母親の血縁者のもとに託されるのではなく、魔法界で育てられていたらどうなっていたのでしょう。ひとつだけ言えるのは、私たちの知っている、謙虚で控えめで、それでもって戸惑い気味なハリー・ポッターは存在しなかったということです。魔法の知識があっただけでなく、自分がいかに「有名人」であるかを完全に分かりきったうえでホグワーツに入学したことでしょう。もしかすると、ギルデロイ・ロックハートのような人物になってしまっていたかもしれません。あるいは、魔法界で一緒に写真を撮ってほしいと言われすぎて(ときには「傷が見えるように髪を少し上げてもらえますか?」と言われるような)有名人であることに疲れきっていたかもしれませんね。いずれにせよ、魔法界で育っていたらヴォルデモートと闘う際に必要だった、あの不屈の精神がしっかりと彼に備わっていなかった可能性があります。彼がダーズリー一家と過ごした子供時代はあまり幸せなものではなかったかもしれませんが、少なくとも私たちが知るハリーへと導きました。

ハリーが9と4分の3番線でロンに出会っていなかったら?

もちろん、すべての決断が自分自身の選択によって決まるわけではありません。なかには、たまたま決まった出来事もあります。たとえば、ハリーが9と4分の3番線に行く際にロン・ウィーズリーと出会ったことがそのひとつでしょう。ハリーはロンとこの場所で出会ったおかげで、魔法の壁を通り抜けることができました。もし、このときに彼らが出会っていなかったらどうなっていたことやら。

まず、ハリーはホグワーツ特急に乗り遅れたかもしれませんよね。仮にどうにかしてそのピンチを乗り越えたとしましょう。そうだったとしても、ここには大きな分かれ道があるのです。もしハリーがロンとキングズ・クロス駅で知り合っていなかったら、恐らく2人はホグワーツ特急で一緒に座らなかったでしょう。そうなっていたら、お菓子について盛り上がることはなかったでしょうし、それにロンは杖を取り出すこともなく、物語の中心人物のひとりであるハーマイオニー・グレンジャーの気を惹くこともなかったかもしれませんね。

ロンとの友情なくして、「ハリー・ポッター」シリーズの出来事は展開されたのでしょうか。もし、ロンの代わりにハリーがネビル・ロングボトムやドラコ・マルフォイと先に友達になっていたら...。彼らはハリーとともに賢者の石を探してくれたのでしょうか。また、巨大な魔法使いのチェスで勝つことができたのでしょうか。

ハリーがスリザリンに組分けられていたら?

これは大きな分かれ道だったといえます。「ハリー・ポッター」シリーズを真逆の方向へ導いた可能性がある決断といってもよいでしょう。もしハリーがスリザリンに組分けられていたとしたら、彼の道は劇的に変わっていたにちがいありませんね。まず、彼がロンやハーマイオニーと力強い友情を築き上げることはなかったでしょう。だからといって彼がマルフォイと友達になったとも限りませんが...。マルフォイはいつでも嫌なやつでしたから。

ロンとハーマイオニーの助けなしに、「ハリー・ポッター」シリーズのさまざまな謎を解くことができたのかというのも、疑問が残るところです。もしかすると、代わりにとても頭がよくて、英雄的なスリザリン生の友人ができていたかもしれません。もしくは賢者の石を見つけ出すことに失敗して、4年も早く魔法界を再び闇に包みこんでしまっていたかもしれませんよね。仮にそのすべてを解決できたとして、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』でハリーは組分け帽子からグリフィンドールの剣を引き抜くことができたのでしょうか。

ロンがハーマイオニーに意地悪ではなかったら?

この分かれ道は、取るに足らないようなものに思われるかもしれませんが、実はかなり重要なポイントなのです。本のなかでは、早い段階でハリーとロンは友達になっていますが、非常に賢いのに少し鼻につくハーマイオニーとはまだ出会っていません。実際の物語では、ハーマイオニーが自分の得意な魔法を披露したあと、ロンは彼女にかなり意地悪でした。ロンは「だから、誰だってあいつには我慢できないっていうんだ。まったく悪夢みたいなヤツさ」と言い、これを聞いたハーマイオニーは泣きながら走り去っていきましたね。

もちろん、違う形でハリー、ロンとハーマイオニーの絆ができた可能性はありますが、あのときのロンの意地悪な発言のせいでハーマイオニーは女子トイレへ向かい、結果としてトロールと出くわすことになり、ハリーとロンがハーマイオニーをトロールから助け出す、といった展開になりました。これほどドラマチックな展開から生まれた絆以上に強い絆なんて、あるのでしょうか。

ではどうして、この一連の流れは重要だといえるのでしょうか。それは、先に述べたように、ハーマイオニーはこのシリーズで最も重要な人物の1人であり、毎年起きるさまざまな謎や問題を3人で解くために欠かせない秀才だったからです。賢者の石のときは、ハーマイオニーがニコラス・フラメルの謎を解くカギとなる本を見つけましたし、石にされた状態でも秘密の部屋の謎を解きました。さらに、アズカバンの囚人ではタイムターナー(逆転時計)を使ってみんなを救いました。ハーマイオニーのこのリストは数えだしたらきりがありませんよね。

もしこの3人がトロールの一件で絆が結ばれず、ハリーとロンがハーマイオニーとそこまで仲良くなっていなかったとしたら、恐らくこの「ハリー・ポッター」シリーズの大半の時間はハリーとロンが多くのヘマをして、なにも解決せずに終わったことでしょう。そしてなによりヴォルデモートの勝利はあっという間だったかもしれませんね。