夏は、ハリーにとって決してお気に入りの季節ではありませんでした――学校が休みで、ダーズリー一家と過ごさねばならなかったのですから。しかし、私たちにとっては、普通はとても暖かくて楽しげな季節です――たとえハリーと同じイギリスに住んでいたとしても。
そこで今回は、一年で最も暑い季節を乗り越えるための便利な呪文をいくつかみなさんにご紹介しましょう。
こんな最悪な場面を想像してみてください。―気温27度のうだるような暑さのなか、あなたは、水を飲むためにペットボトルに手を伸ばします。すると...なんとひどい。まるでヤカンからそのまま淹れたかのように、ペットボトルが熱くなってしまいました。ああ、魔法使いだったら...。杖をひょいと動かして「アグアメンティ」と唱えるだけで、爽やかな冷たい水が目の前に溢れてきますよ。助かりますね。
夏といえばピクニックでしょう(まあ、大胆に食事を味わいたければ、どの季節でも言い訳として使えますが)。でも、ピクニックって、さぁ、食べ始めようと思ったときに必ずなにか忘れものをしたことに気がつきませんか?
ここで役に立つのがアクシオの呪文。家のテーブルに置き忘れてきた作り立てのサンドイッチを、誰も気づかぬうちにピクニックシートの上に移動させることができるのです。この呪文は『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のなかでハリーの命を救った呪文だと言っても過言ではありません。私たちも同様に、「ケーキを忘れたってどういうこと?」という質問攻めから解放されるでしょう。忘れもの対策なら、思い出し玉も便利かもしれませんが、ネビルが以前に指摘してくれたことを思い出してみてください。――思い出し玉を持っていても何を忘れたかすら思い出せないこともあるのです。
対象を肥大化させることができるこの呪文は正直にいえば、一年を通して役に立つでしょう――ハグリッドがハロウィンのカボチャを膨らませたときにも役立ちましたからね――しかし、この呪文があれば、夏ならではの多くの問題も瞬時に解決してくれますよ。
このアイスクリーム、小さすぎる!はい、エンゴージオ。この扇風機、もっと大きかったらいいのに...。エンゴージオ。ほらね。夏の太陽を避けるために、これでもかというほどツバの広い麦わら帽子を準備することだってできるかもしれません。この世は(大いに)あなたの思いのままです。
おそらく、ビーチでゆったりと過ごした日にこの上なく最悪な気分を味わう時間は、帰りの車での長旅の前に身体に着いた粗い砂を払い落すときかもしれませんね。何千回シャワーを浴びたとしても、きっとその砂は何週間もあなたの靴の中に残っているでしょう。そんなとき、この清める呪文(スコージファイ)は瞬時に問題を解決してくれるはずです――杖を一振りするだけで足にこびりついた厄介な砂が消えてなくなってしまうのですから!
これを読んでいるみなさんのなかにも、この夏、キャンプに行く予定がある人もいるのではないでしょうか。その際、ぜひ木づちと松明を忘れないように――忘れてしまうと大変なことになってしまいますからね。
もちろん、あなたが魔法使いか魔女であれば、そのどちらも必要ありません――木づちや松明をこよなく愛するアーサー・ウィーズリーのような人でなければですが...。彼以外の魔法界の住人で、少しでも時短をしたい人なら、キャンプの準備をもっと簡単にできます。蒸し暑い夏の夜にトイレを探しに出かける際はルーモスを使えば道は明るくなりますし、火を作り出す魔法を使えばマシュマロをあっという間に焼くことだってできるのです。また、拡張呪文を使えば、ウィーズリー家がクィディッチのワールド・カップの際に行っていたのと同じように、自分のテントをアパートくらいのサイズにすることだってできるでしょう。
もちろん、大変な思いをしながら設営をしたり、準備をするのもキャンプの醍醐味だと考えたりする人もいるでしょう――しかし同時に...泥だらけの草の上に直接寝袋を敷いて寝るよりも、ふかふかのベッドで眠る方が快適だと思いませんか?
ああ、魔法が使えたらどれほど楽しい夏になるのでしょうか。しかし残念ながら、きっと私たちマグルはこの夏も、普通サイズのアイスクリームを食べ、ガタガタのテントの中で眠ることになるのです。ああ、哀れな私たち...