ホグワーツに入学すると、何よりも先に自分の所属する寮が決まります。しかし、かつてアルバス・ダンブルドアも考えたことがあるように、生徒たちを4寮へ組分けるタイミングは早すぎるのでしょうか?賛成派と反対派それぞれのライターの主張を見てみましょう。
「きみも、一緒に逃亡したいのかな?」
「いいえ」
スネイプの暗い目が、戻っていくフラーとロジャーの後ろ姿を見ていた。
「私は、そんな臆病者ではない」
「そうじゃな」ダンブルドアが言った。「きみはイゴール・カルカロフより、ずっと勇敢な男じゃ。のう、わしはときどき、『組分け』が性急すぎるのではないかと思うことがある......」
『ハリー・ポッターと死の秘宝』
ダンブルドア自身、スネイプがいかに勇敢であるかをたたえたときに、スネイプがグリフィンドール寮に入る別の人生があったかもしれないことをほのめかしました。たしかに、スネイプのように第一印象とはかなり違う人物であることが後になって判明するホグワーツ生は存在します。組分け帽子は、生徒の寮を決める際にレジリメンスの魔法をある程度使って本人の頭のなかをのぞきこみますが、もちろん、それだけでその人のすべてが分かるわけではありません。なんせ、人の頭のなかはとても複雑ですからね!幼い子供の頭であればなおさらです。
第一印象とかけ離れていた人物の一番わかりやすい例として、ピーター・ペティグリューが挙げられるでしょう。ピーターはグリフィンドールに組分けられましたが、最終的に友人のジェームズ・ポッター、シリウス・ブラックとリーマス・ルーピンを裏切りました。しかし、かなり昔までさかのぼっても、やはりピーターはどこかはみ出し者の印象がありました――いつも友人たちにつきまとう姿は、友というよりもまるで寄生虫のよう。それなのに彼はなぜ、「勇気ある者が住う」騎士道精神を大切にする寮に組分けられたのでしょう?友人たちを裏切ってヴォルデモート卿についたのはある意味、勇気のいることだったといえるかもしれません。しかし、それは騎士道的というよりも、意固地なだけのような......。そういう意味では、やはり彼の性格はスリザリン向きだったといえるのではないでしょうか。
とはいえもちろん、全ての「悪い」魔法使いや魔女たちがすぐにスリザリンへ行くべき、と言っているわけではありません。確かにヴォルデモート卿の仲間や死喰い人のほとんどはスリザリン出身でした―。しかし、それは狡猾なスリザリン出身であったトム・リドルが、彼らを迷わせたとも考えられますね。寮の創設者サラザール・スリザリンも、自分自身の考えを寮全体に広めましたが、彼も結局はひとりの魔法使いにすぎず、彼と同じ考えを持てなかったスリザリン生も多く存在するのです。サラザールの価値観を幼い頃から刷り込まれたドラコ・マルフォイでさえ、最終的にはより思いやりのある、柔らかな顔も見せるようになりました――息子スコーピウスにいたっては、とても心優しいうえにかなり賢かったので、スリザリンよりもハッフルパフやレイブンクロー向きだったといえるでしょう。そんなスコーピウスがスリザリンに組分けられたのは、組分け帽子が親子なら同じ資質を持っているだろうと簡単に決めつけてしまったためではないでしょうか。実際は、スコーピアスの性格はむしろ、ドラコの失われてしまった資質のほうを強く受け継いでいるようにみえます。それは、純血至上主義の考えをルシウス・マルフォイに叩き込まれる前に存在していたであろう、ドラコのまっすぐで優しい一面なのです。
では、生徒が過去に受けてきた影響は、組分けられる寮と関係してくるのでしょうか?シリウスの弟、レギュラス・ブラックを見てみましょう――彼は年を重ねるにつれ勇敢さが増し、最終的にはヴォルデモート卿に逆らう道を選びました。レギュラスは多くのブラック一族同様にスリザリンに入り、その後死喰い人になりました。しかし、組分け帽子はこの結果を予見していたのでしょうか?それとも、うっかりその道を彼に示してしまったのでしょうか?なぜ、組分け帽子は不利な条件にもかかわらずグリフィンドールに選ばれたシリウスのような勇敢さをレギュラスに見いだせなかったのでしょうか。レギュラスの家族は、サラザール・スリザリンの考え方をレギュラスに植え付けすぎていただけなのでしょうか?しかし、もしも組分け帽子が、レギュラスのなかに眠る勇敢さを見出すことができてさえいれば、彼の人生はまったく別のものになっていたかもしれないのです―。違う仲間とつるみ、死喰い人になっていなかったのかもしれないのです。ネビルを思い出してみてください。彼の炎のように燃える勇敢さを、本人よりも先に見出したのは組分け帽子だったのですから。
組分け帽子には、確かに他の人には見えないものが見えています――しかし、つまるところはただの意見を持った帽子でしかないのです。そして多くの場合は正しい判断をしているものの、生き物と同じように、間違えることだってあるのです。
まず初めに言っておきますが、組分け帽子が間違えたと思われる例はいくつかあります。最も分かりやすいのは、ピーター・ペティグリューでしょう―。彼は勇敢さや騎士道精神を発揮するどころか、自己保身ばかり考えるような弱い人物でした。彼はスリザリンに入るべきだったといえるかもしれませんが、それはスリザリンに所属する多くの優秀な生徒たちに対して失礼な考えです。しかしながら、これまでホグワーツで学んできた魔法使いや魔女たちの数を考えると、ピーターのような例外はごくわずかにすぎません――おおむね、組分け帽子の組分けは的確なのです。
また、組分け帽子が魔法界に存在する最も賢い魔法道具のひとつであることも忘れてはなりません。組分け帽子にはホグワーツ創設者の4人全員の知性が宿っているのです。この帽子は話すことができるだけでなく、レジリメンスの魔法を使い、かぶっている者の頭に隠れたものを見通し彼らの資質に最も合う寮を選ぶこともできます。さらに、かぶっている者の考えに対して返事をしたり、本人の希望を考慮したりした判断ができるのです。ハリーがかぶったときもまさにそうでした。組分け帽子ははじめ、ハリーをスリザリンに入れようとしていましたが、ハリー自身の希望も聞いたうえで最終的にグリフィンドールに入れました。これは、注目すべき点といえるでしょう。組分け帽子は、単に寮を選ぶだけでなく、本人がどんな人になりたいのかを見定め、生徒のことをしっかりと理解したうえで、組分けを行っているという証拠なのですから。
たしかに、人は成長するにつれ思考や性格に変化が現れます――しかし、その人自身が何者で、どうなりたいかという深い部分はそう簡単に変わるものではありません。この部分こそが、組分け帽子が探る部分なのです――たとえ組分け時の本人にとって、入る寮が最適だと思われなくても、です。組分け帽子は、固定観念にとらわれずに、どのようにその生徒がホグワーツの寮に所属できるかをさまざまな角度から考えながら、最終的に最も貢献できる寮を見極めます。
最も分かりやすいのはネビル・ロングボトムがよい例でしょう。一部の人の間では、ネビルにはグリフィンドールに所属するための資質が備わっておらず、ハッフルパフに入った方がよかったのではないかという意見がありました。しかし、物語が進むにつれて、所属は間違っていなかったことが分かりましたよね。組分け帽子はネビルのグリフィンドール生としての資質を、彼がホグワーツに入学したその日から見抜いていたのです。
私たちが初めてネビルと出会ったとき、彼はまだ自信のなさそうな一年生で、グリフィンドール生らしい勇敢さや大胆さは見られませんでした。しかし、一年目が終わるころにはすでに、彼の勇敢な一面が現れ始めたのです――そして、それはより明確になっていくのでした。『ハリー・ポッターと賢者の石』のなかで、初めて仲間であるハリーたちに立ち向かったとき(この行動はダンブルドアでさえも、かなり勇気のいるものであったと言っています)から、『ハリー・ポッターと死の秘宝』でハリーがいない間、しっかりとダンブルドア軍団を率いて敵に立ち向かうまで、ネビルは十分すぎるほどグリフィンドール生としての資質を私たちに見せつけてくれました。それどころか、彼は最終的に組分け帽子からグリフィンドールの剣を手にします――これは真のグリフィンドール生にしかできないことです。
つまるところ、何世紀にもわたって生徒たちを組分けてきた組分け帽子は、誤った回数よりもはるかに多く、生徒たちを本来入るべき寮へと組分けてきました。間違いは数えるほどしかなく、それぞれの魔女や魔法使いたちの持つ本来の資質や潜在能力をかなり早い段階から見極められているといえるでしょう。4寮の創設者たち全員の知性を持ち合わせたこの帽子は、それぞれの寮がどのような資質を持った生徒を求めているのかを熟知し、かぶった生徒のことをしっかりと理解したうえで、最終的に入れる寮を決定できるのです。
あなたはどう思いましたか?ホグワーツの生徒たちの組分けは早すぎると思いますか。それともこの議論はまだ明確な答えが出せないと思いますか?
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