セブルス・スネイプには、彼の忠誠心をめぐってはらはらさせられました。ですが、わたしたち読者全員がわかっていることがあります――スネイプは陽気なタイプではありません、そうですよね?
もしかすると、スネイプには何か趣味が必要なのかもしれません。例えば、ゴブストーン(ビー玉のようなおもちゃを使った魔法界のゲーム)なんかもいいですね(スネイプの母親は)ホグワーツ・ゴブストーン・チームのキャプテンでした)。もしくは、ダンブルドアがボウリングに連れて行ってくれるかもしれません。そんなスネイプでも、その厳格な顔に思わず冷たい笑みを浮かべてしまうことがいくつかあるのです。
魔法界の魔法使いや魔女が全員ポッター家を好きなわけではありません――フィルチやスリザリン寮生に聞いてみてください――しかし、スネイプのポッター嫌いは彼らのとはレベルがまったく違っています。「有名人ハリー・ポッター」を常に非難し、選ばれし者の座を抜け目なく狙っています。結局のところ、血は争えないということです。誰もが、ハリーを見て父親そっくりだと言いますが、スネイプの言葉には違う意味が込められています。
スネイプはすぐにお気に入りの生徒を見つけるのですが、気に入られる生徒には共通点があります――スリザリン寮の緑がよく似合うことです。寮監はそれぞれに自分の寮の生徒が活躍する姿を楽しみにしていますが、スネイプはスリザリン寮生の問題行動を大目にみることがよくあります。喧嘩の原因がスリザリンの生徒だったとしてもスネイプにとってはどうでもいいことです――喧嘩の相手の寮が減点されるのですから。
「フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力......諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。」
『ハリー・ポッターと賢者の石』
1年生を前に魔法薬を調合する技術の素晴らしさについて、詩的でロマンティックともいえそうな表現で語っています。その言葉から、魔法薬学に対する心からの愛情が伝わってきます。スネイプが学生時代に使っていた魔法薬学の教科書をみれば、その卓越した才能に気づくはずです――より効果的な超合法を導き出して教科書に修正を加えるなんて、誰でもできることではありません。
半純血のプリンスの古い教科書に残っていたメモ書きは、魔法薬の調合方法だけではありません。スネイプはホグワーツ生のころからすでに闇の魔術に秀でており、呪文をいくつも考案していました。相手を切り裂く「セクタムセンプラ」もそのひとつです。シリウス・ブラックによると、スネイプはホグワーツに入学した時点で7年生の生徒よりも多くの呪文を知っていたそうです。その後、闇の魔法使いの仲間になってしまうのも、うなずけますよね。
スネイプはグリフィンドール寮生に罰を与えるのが大好きで、理由をみつけては減点しています。ハーマイオニーはスネイプの不公平さを嫌というほど知っています。ハーマイオニーはクラスメイト(たいていネビル)に手助けをした罰や、質問に正確に答えた罰、それからスネイプの言葉を借りると「鼻持ちならない知ったかぶり」をした罰で何度も減点されています。
スネイプほど優れた魔法薬学の知識があれば、肌の血色や脂っぽい髪質に効果のある魔法薬を調合できそうですよね。ねっとりした黒髪を改善するためのシャンプーの呪文なんてどうでしょうか。ただの思いつきですが...。
生徒がよからぬことをたくらんでいると、先生は気づくものです。しかし、ホグワーツには特別な能力に恵まれた先生がいます。トラブルメーカーをみつけるスネイプの能力は、単なる直感ではありません―。人々の記憶や感情を読み取ることのできる恐ろしい魔法です。小さな嘘をついてしまうような生徒は、スネイプと目をあわせないほうがいいでしょう。
スネイプが喜びを感じるのは、嫌いな人が報いを受けた瞬間です。それが自分の一番やりたい仕事を取った人物なら喜びは格別です。決闘クラブのデモンストレーションで陽気なギルデロイ・ロックハートを相手に苛立ちをむきだしにして対決しました。正直なところ、徹底的にやられるロックハートを見てすっきりしましたよね?また、真実薬でハリーを尋問しようとするドローレス・アンブリッジの計画を妨害します。この場面ではスネイプのことを少し見直したくなりますよね。ハリーに真実薬を飲ませない代わりに毒殺することを提案しなければ、の話ですが...。
「ロングボトムは、簡単極まりない呪文でさえ惨事を引き起こす。フィンチ-フレッチリ―の残骸を、マッチ箱に入れて医務室に運び込むのがオチでしょうな」
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
呪文のことはいったん忘れるとして――スネイプの辛辣な皮肉は、本当の意味での闇の魔術です。できることならうまくかわしたいですよね。冷酷で、人を見下した態度と画びょうのように鋭い言葉。繊細さと、恐怖心を誘う雰囲気をあわせ持ったスネイプを、映画ではアラン・リックマンが見事に表現していました。くだらないジョークを言いがちな人は魔法薬の授業中には黙っておいたほうが身のためですね。
実のところ、スネイプが好きなことを挙げていくとたくさんありますが、心から愛している人はおそらくひとりだけでしょう。スネイプの守護霊を思い出してみてください。それは、何年も前にリリーと同じ牝鹿の守護霊をつくってからずっと、それを変えずにいるのです。リリー・エバンズはこの世を去りましたが、スネイプの心のなかでずっと生き続けています。スネイプの守護霊は、リリーへの変わらぬ愛の確かな証拠といえるでしょう。