みんなが大好きな登場人物を象徴する呪文たち

クスペリアームスと聞いて思い浮かぶのはもちろんハリーですが、魔法界にいる他の魔法使いはどんな呪文を得意としているのでしょうか。

ジニーとコウモリ鼻糞の呪い

ジニーが使うコウモリ鼻糞の呪いは、優れた才能を持つ人間を見出すことが好きなスラグホーン先生が感心するほど素晴らしいものでした。ジニーはウィーズリー家の末っ子として、幼いころから相手を不快な気分にさせる魔法を数え切れないほど見てきたはずですが、そのなかで得意になったのはコウモリ鼻糞の呪いでした――そして、それにはちゃんとした理由があるのです。ジニーはこの呪文を使ってドラコ・マルフォイと尋問官親衛隊を撃退し、スラグホーン先生がお気に入りの生徒を集めて開催する「スラグ・クラブ」に招待されます。ジニーはスラグ・クラブに自ら入りたいと望んでいたわけではなかったかもしれませんが、コウモリ鼻糞の呪いの技術はジニーがどれほど度胸のある人物なのかということを証明しているのです。これについては、スラグホーン先生の言葉に強くうなずけるでしょう......。

「ブレーズ、気をつけたほうがいい! こちらのお嬢さんがいる車両を通り過ぎるときに、ちょうど見えたんですよ。それは見事な『コウモリ鼻糞の呪い』をかけるところがね! わたしなら彼女には逆らわないね!」
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

ジニーを見くびるのは危険ですね。

ロックハート先生と忘却術

相手の記憶を消す呪文は「オブリビエイト」です。この呪文はギルデロイ・ロックハート先生にふさわしいような気がします。それは、ロックハートが自分の欠点にまったく気づかなかった(ように思える)ところからも明らかです。うぬぼれが強く、自分勝手で、高慢なロックハートは、他人からその人の功績に関する記憶を忘れさせるという術が得意でした。その術を使うことで、仕返しを恐れることなく他人の功績を自分の手柄にできたのです。簡単にいうと、ロックハートが忘却術を気に入っていた理由は、彼が大嘘つきだったためです。これは、説明するまでもありませんね。結局のところ、こんなにも傲慢な人物にとって、自分が放った忘却術が逆噴射すること以上にぴったりな結末はないでしょう。今度は自分が記憶を失ってしまうのですから。

ハーマイオニーのリンドウ色の炎

ハーマイオニーは魔法を使うことに長け、どんな呪文も得意としていました。ホグワーツに入学したばかりのころ――「ウィンガーディアム・レヴィオーサ」を習ったころからそうでしたよね?ですが、スネイプに使ったリンドウ色の炎がハーマイオニーのトレードマークのひとつになりました。そして、それは、わたしたちみんなが大好きな魔法でもあります。『ハリー・ポッターと賢者の石』では、ハーマイオニーはこの炎を使って、ロンやハリーと一緒に「悪魔の罠」から脱出したのです。数年後、分霊箱を探す旅にでたときにはこの炎で暖を取りました。この呪文は、実用的で非常に便利なのです。必要としているときに光と暖かさを与えてくれるなんて、まるでハーマイオニーのようですね。

ロンと「なめくじくらえ!」

これは、ロンが得意な呪文というわけではありません。しかし『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で「なめくじくらえ」の呪文がロンに逆噴射したときのことは忘れられません。その後、ロンはハグリットの小屋でぬるぬるしたナメクジを一匹残らず吐き出すことになってしまいました。もしかすると、ロンはこの呪文に似たところがあるのかもしれません。少し間抜けで、とてもおもしろくて、後先を考えず怒りに任せて唱えるこの呪文のような人物だから、逆噴射してしまったのかもしれません。これは、ハーマイオニーに最悪の言葉を吐き捨てたマルフォイに対し、激怒したロンが放った呪文です。想像するだけで不気味ですが、なんとなくかわいらしく思えてきますね。

ヴォルデモートとアバダ ケダブラ

ヴォルデモートが許されざる呪いを好んで使うと聞いても、何の驚きもありません――自分の邪魔をする者を止めるためにはどんなことでもする人物です。どんなときもヴォルデモートに忠実なベラトリックス・レストレンジは、許されざる呪いについて、ハリーに向かってこんなふうに言ったことがありました。

「本気になる必要があるんだ、ポッター!苦しめようと本気でそう思わなきゃ――それを楽しまなくちゃ――まっとうな怒りじゃ、そう長くは私を苦しめられないよ――」
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

ヴォルデモートの従者であるベラトリックスは、もちろん主人と同じように相手を苦しめることを心から楽しみ、磔の呪文を得意としていました。しかし、ヴォルデモートはどちらかといえば、相手を殺すという行為そのものを楽しんでいたようです。「アバダ ケダブラ」は間違いなく、ヴォルデモートを象徴する呪文といえます。ヴォルデモートの使うこの呪文は、セドリック・ディゴリーに放ったときのように、素早く鮮やかで冷酷でした。当然のことながら、ハリーに対して使うときは別ですが......。

ハリーと守護霊の呪文

「エクスペリアームス」がハリーを象徴する呪文だったということを否定するつもりはありません。ルーピンがそう言っていましたし、最終的にこの呪文を使ってヴォルデモートを倒したことを考えると、ルーピンの言葉は、間違っていませんでした。しかし、ハリーにはかなり難しい呪文を使いこなす才能もありました。その呪文は、ルーピン自身がハリーに教えたものでした。守護霊を呼び出す魔法は、とても高い技術が必要です。ところが、ハリーは5年生になるころまでにはうまく使いこなせるようになっていて、いとこのダドリーを救ったり、魔法省の魔法法執行部長を感心させたりしていました。そして、ダンブルドア軍団をつくったときには、仲間のホグワーツ生に教え始めていたのです。魔法法執行部部長、マダム・ボーンズの言葉のとおり、本当に驚くべきことですよね。