最近、最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』の情報が少しずつ明らかになるにつれて、「ダンブルドア軍団」という言葉が使われていることに気づいた人も多いのではないでしょうか。今日は、ダンブルドアの過去と未来をのぞいてみたいと思います。いつの時代も、ダンブルドアのまわりには人が集まってくるんですね。
「ファンタスティック・ビースト」シリーズの最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』では、魔法界にグリンデルバルドの勢力が強まるなかで、ダンブルドアが新たなチームを結成することが予告編からもわかります。「血の誓い」によって、ダンブルドアはグリンデルバルドと直接戦うことはできません。だから正義のための戦いは、ダンブルドアの元教え子であるニュートの手にゆだねられています。しかし、予告をみて、みなさんもお気づきだと思いますが、もちろんニュートはひとりぼっちではありません。実は、ニュートをはじめとする魔法使い(それから、ひとりのマグル!)のチームが「ダンブルドア軍団」と呼ばれているのです。
世の中が不安定なときにはいつも、ダンブルドアを中心とした集団が作られていました。これはとても心強いことであり、本当に偉大な魔法使いであることを証明しています。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のなかで、ダンブルドアはこんなふうに話しています。「われわれは結束すれば強く、バラバラでは弱い」
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
「ファンタスティック・ビースト」シリーズで描かれている出来事の何年も、何十年も後に、グリンデンバルドとはちがう闇の魔法使いが魔法界を支配しようとしたとき、ダンブルドアの名前のついた組織が結成されることは、わたしたちはもう知っていますよね。なぜなら、ダンブルドアはわたしたちの知る限り最強の魔法使いですが、仲間と戦うことの強さを知っているのです。やっぱりなんといっても、団結は力ということですね。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
「ファンタスティック・ビースト」シリーズで描かれている出来事の何十年後、ヴォルデモート卿が恐ろしい死喰い人を従えて現れ、人々の生活をおびやかし、魔法界は闇に包まれます。ヴォルデモートはゲラート・グリンデルバルトと同じように、力をつければつけるほど信者を増やしていきました。それに対抗するには、自分も同じように仲間を増やさなければならないと、ダンブルドアはわかっていたのです。ヴォルデモートとの戦いより以前に、ダンブルドアが闇の魔法使いと戦うためにチームをつくっていたことがわかりました。グリンデルバルドとヴォルデモートの物語で扱われているテーマはよく似ているのです。
不死鳥の騎士団は2度結成されています。1回目はヴォルデモートが初めて魔法界に現れたとき。それからしばらくして、ヴォルデモートが蘇ったことがわかったときに再結成されました。
『ハリー・ポッターと賢者の石』
最初に結成された「不死鳥の騎士団」は、友人、家族、信頼できる人、同僚、優れた闇祓いなどが中心に集められ――その多くがダンブルドアの元教え子や、一緒に働いていた魔法使いたちでした。そして、何十年後「不死鳥の騎士団」を再結成することになったとき、戻ってきた者もいました。しかし、第一次魔法戦争でヴォルデモートを相手に戦い、「不死鳥の騎士団」は多くの仲間を失いました。なかでもロングボトム夫妻は精神が破壊されるほどの拷問を受け、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッターは息子のハリーを守って命を落としました。それからあまり知られていませんが、モリー・ウィーズリーの兄弟であるファビアン・プルウェットとギデオン・プルウェット、マーリン・マッキノン、ドーカス・メドウズ、エメリン・バンスなど、ほかにもたくさんの魔法使いたちが命を落としました。『ハリー・ポッターと賢者の石』でハグリッドも彼らの名前を挙げて、ヴォルデモート卿がどれほど力を持っていたか、幼いハリーに説明しています。
『ハリー・ポッターと賢者の石』第4章より
「あやつが目をつけた者で生き残ったのは一人もいない......おまえさん以外はな。当時最も力のあった魔法使いや魔女が何人も殺された......マッキノン家、ボーン家、プルウェット家......なのに、まだほんの赤ん坊のおまえさんだけが生き残った」
『ハリー・ポッターと賢者の石』より
さらに、ハリーがホグワーツで5年生になった年、"マッド-アイ"・ムーディ(2回とも不死鳥の騎士団として戦いました)が創設時の騎士団の写真を見ながら、当時のメンバーの数々の悲惨な死について詳細に語っていました。
「エドガー・ボーンズ......アメリア・ボーンズの弟だ。こいつも、こいつの家族も殺られた。すばらしい魔法使いだったが......スタージス・ポドモア。なんと、若いな......キャラドック・ディアボーン。この写真から六ヵ月後に消えた。遺体は見つからなんだ......ハグリッド。
紛れもない、いつもおんなじだ......エルファイアス・ドージ。こいつにもおまえは会ったはずだ。
あのころこんなバカバカしい帽子を被っとったのを忘れておったわ......ギデオン・プルウェット。こいつと、弟のフェービアンを殺すのに、『死喰い人』が五人も必要だったわ。雄々しく戦った......退いてくれ、退いてくれ......」
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』より
わたしたちは、味方を裏切って敵の陣営に忠誠を誓ったメンバーも知っていますよね。ピーター・ペティグリューです。彼はホグワーツ在学中、シリウス・ブラック、ジェームズ・ポッター、リーマス・ルーピンとつるんでいました。そしてもちろん、ほかの3人と同じように「不死鳥の騎士団」の一員でした。しかし、ポッター夫妻の居場所をしっていたピーター・ペティグリューのひどい裏切りが引き起こしたのは、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッターの死だけではありません――奇妙な運命のいたずらによって、ペティグリュー自身が仕える主人でさえも破滅の道へと導くことになるのです。
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
ダンブルドアはきっと、クイニーがグリンデルバルド側についたときのように、味方が敵の陣営に加わることがあるとわかっていたのでしょう。「ハリー・ポッター」シリーズの小説でわたしたちは、ホグワーツの生徒たちによって作られたダンブルドア軍団が裏切られる場面を目にしています。マリエッタ・エッジコムの密告により、ダンブルドア軍団が集まっていた場所がばれてしまいます(映画では、チョウ・チャンが密告したことになっています)。しかし、ダンブルドア軍団を裏切る可能性のある人に、ハーマイオニーが魔法をかけていました。その魔法が発動して、仲間を裏切ったハリエッタの顔には「裏切り者」の文字が浮かんだのでした。結局、どんな集団でも信頼がなければすべてが台無しになってしまうということですね。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
第一次魔法戦争で「不死鳥の騎士団」は多くの仲間を失いましたが、最終的にヴォルデモート卿を破滅に追いやったのは、一度赤ちゃんのハリーに放った死の呪文でした。その後、魔法界には平穏が訪れましたが、ヴォルデモートは何度も復活しようとして――自分の計画を遂行しようとしていました。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で、最後にしかけられた罠によってヴォルデモート卿が肉体を取り戻すと、アルバス・ダンブルドアはすぐに「不死鳥の騎士団」の再結成に向けて動きだします。最初の「不死鳥の騎士団」で生き残っていたメンバーはすぐに集まりました。さらに、闇祓いのニンファードラ・トンクス、キングズリー・シャックルボルト、ウィーズリー夫妻の子どもたちのなかで成人している兄弟など、若い魔法使いたちが新たに加わりました。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
ダンブルドアの知らないところで、不死鳥の騎士団とはちがうチームが密かに結成されていました。若すぎて「不死鳥の騎士団」のメンバーになれず、がっかりしていたハリー、ロン、ハーマイオニーが自分たちのチームを結成したのです(といっても、ほとんどハーマイオニーのおかげですが......)。教育令によって、ものすごい勢いでホグワーツを支配しようとしていたドローレス・アンブリッジに対抗するため、ホグワーツの生徒たちは自分たちの力で「闇の魔術に対する防衛術」を学び(アンブリッジはこの教科にも制限をかけていました......)、ヴォルデモートの復活に備えました。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
この秘密のチームは、「不死鳥の騎士団」の価値観を反映しており、ホグワーツの生徒たちは所属している寮に関係なく(ほかの寮の生徒をあまり好ましく思わない者も含めて)、それぞれの違いを受け入れて団結していました。ダンブルドアへの信頼から、マローダーズとスネイプが騎士団の仲間として渋々ともに活動するなど、「不死鳥の騎士団」と同じような姿がみられました。ここでも、信頼が大きな力を持っていることがわかります。若い魔法使いたちがダンブルドアから受けた影響はとても大きく、仲間同士で対立が起きることはありませんでした。チョウ・チャンとジニー・ウィーズリー(それぞれハリーの元彼女と未来の彼女ですね)でさえも、いっしょになって秘密のチームの名前を考えました。
「防衛協会(ディフェンス・アソシエーション)は?」チョウが言った。「英語の頭文字を取ってDA。それなら、私たちが何を話しているか、誰にもわからないでしょう?」
「うん、DAっていうのはいいわね」ジニーが言った。「でも、ダンブルドア・アーミーの頭文字、DAね。だって、魔法省が一番恐いのはダンブルドア軍団でしょ?」
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』より
最終的には、最初の「不死鳥の騎士団」で両親をひどい目に遭わされたネビルが『ハリー・ポッターと死の秘宝』で、ダンブルドア軍団を引き継ぎ、ホグワーツの戦いでとても重要な役割を果たしました。ときには、ダンブルドアが人々をまとめて率いる必要がないこともあります――彼の影響力と人柄の記憶だけで十分なのです。それだけで、その名のもとに人々が集まり、正しいことのために力をあわせて戦うことができるのです。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
しかし、それはダンブルドアだけの力ではありません。不死鳥の騎士団やダンブルドア軍団は、闇の魔法使いたちから自分たちの身を守っていただけではないのです――彼らは、絆を築いていました。たとえばジェイコブは第一次世界大戦のあと、なんとか自分のパン屋を開こうと頑張る、つきに見放されたマグルでした。本来なら、ジェイコブは魔法使いが存在することさえ知らないはずで、チームを組んだり――ましてや――そのなかのひとりと恋に落ちたりするはずのない人物です
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
特に、1920年代のアメリカの魔法界では、ジェイコブとニュートたちのような親しい付き合いは法律で厳しく禁じられていました。ジェイコブがニュートたちのグループに加わったことは、ひとすじの希望の光のように感じます――特に、グリンデルバルドが人間界を支配しようと動いていることを思えばなおさらです。それからもうひとり、仲間がいなくて孤独を感じていた人物のことを考えてみましょう。ルーナ・ラブグッドです。ルーナはダンブルドア軍団に入るまで、よくいじめられていましたが、チームに入ったときのことを「友だちができたみたい」だと表現しています。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
ハグリッドのことを考えてみてください。ハグリッドはホグワーツを退学になり、ときどき半巨人であることでばかにされていましたが、ダンブルドアによってホグワーツに居場所を与えられただけでなく、「不死鳥の騎士団」の中心となり、さらにはハリー・ポッターの人生で最も重要な人物のひとりになりました――のちにヴォルデモート卿を倒すことになるハリーのです。
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
ダンブルドアに影響されて集まったこのチームと仲間たちがいなければ、魔法界の人々はまったくちがう人生を歩んでいたことでしょう。ダンブルドアは決して完璧な人物ではありません。しかし、チームを率いるリーダーとして彼が放つ愛のエネルギーは、出会う人みんなに伝わり、しみこんでいきました。ダンブルドアは、若いころにもっと良い選択をしていたらよかったと悔やみながらも、常に人々の求めるダンブルドア像を示し、自分の考えを体現したチームを作りあげたのです。『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』では、その魔法をもう一度目にすることができるでしょう。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』4月8日(金)公開
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