わたしたちは恋愛のことになると、レイブンクローの生徒のような聡明な判断はできなくなってしまいますよね。おまけに「週刊魔女」のチャーミング・スマイル賞を5回連続で受賞できるほど魅力的でもありません。恋愛に関して言えば、ほとんどの人がちょっとした手助けが必要かと思います。
相手が自分のことをどう思っているか知りたいときには、他人の心を読み取ることのできる開心術の能力は役に立つでしょう。しかし、誰もが「ファンタスティック・ビースト」シリーズのクイニーとジェイコブのようにうまくいくわけではありません。魔法ワールドの愛すべき登場人物のほとんどは、開心術を使うという選択肢はなく、勇気を奮い起こして自分の気持ちを伝えなければなりませんでした。そして、自分の気持ちを伝えるのは簡単なことではありません。
かわいそうなハリーはチョウ・チャンをクリスマス・ダンスパーティーに誘うまでとても時間がかかってしまいました。ハーマイオニーならその間にポリジュース薬を3回は調合できるでしょう。しかし、ようやくチョウに声をかけることができたのに結果は惨敗。ハリーはあっという間に断られてしまいます。思っていることは早く伝えたほうがいい、という教訓ですね。
ときには、自分の気持ちをどういう言葉で表せばいいのか分からなくなってしまうこともあります。この悩みについては、ニュート・スキャマンダー以上に苦労した人はいないでしょう。ティナに想いを伝えたいニュートは、ティナの瞳をサラマンダーに例えたくなってしまいます。とはいえ、好きな人を魔法動物に例える告白はおすすめしません。それに、興奮状態のマンドレイクのように相手に向かって叫ぶのも。自分の気持ちを伝えるということは、自分がどういう人間なのか相手に伝えるということでもあります。そのときに大切なのは、自分らしさです。
気になる人ができたとき、大切なのは見た目と性格は必ずしも一致するものではない、ということです。ハーマイオニーは、ギルドロイ・ロックハートのハンサムな見た目に惑わされて、その波打つ金色の髪と明るいブルーの目の奥に隠れているものが見えなくなり、ロックハートが本に書かれているような素晴らしい魔法使いではないかもしれない、という事実が受け入れられませんでした。「容姿だけがすべてじゃない」という警告に関するうってつけの例は、クィディッチ・ワールドカップの場面で登場するヴィーラです。普段は言葉では表せないほど美しい女性の姿をしていますが、怒ると「鋭い、獰猛な嘴をした鳥の頭になり、鱗に覆われた長い翼が」生えた姿に変わります。ヴィーラが本当の姿になったとき、ウィーズリー氏がハリーとロンに思慮深い言葉をかけています。「だから、外見だけにつられてはだめなんだ!」そのとおりですよね。
ジェームズ・ポッターとリリー・エヴァンスは少し違ったアドバイスを教えてくれます。性格は時間と共に変わっていく、というものです。スネイプの記憶の中でジェームズは「傲慢でいやなやつ」だったことを知ったハリーはぞっとします。クィディッチ選手としての才能にあふれた人気者のジェームズにリリーは「あなたと巨大イカのどちらかを選ぶことになっても、あなたとはデートしないわ」と言い放ちました。見た目と性格の両方を考えてから付き合う人を決めたリリーはとても良いお手本です。7年生になってジェームズの性格が改善されたとき、ようやくふたりは付き合いはじめました。
容姿と性格は一致しない、と言いたいわけではありません。ビクトール・クラムは、三大魔法学校対抗試合の課題でのちょっとしたことを除けば、真面目で謙虚な好青年です。その容姿は決してハンサムとは言えませんが、世界中の魔女がクラムに夢中になっています。それからフラー・デクラール。ロンの兄、ビルが狼人間のフェンリール・グレイバックに噛まれたとき、ウィーズリー夫妻はフラーはもうウィリアムと結婚したくないだろう、と思っていました。そんな場面でのフラーの言葉に、わたしたちまで思わず笑顔になってしまいました。「このいとがどんな顔でも、わたしが気にしまーすか? わたしだけで十分ふーたり分美しいと思いまーす!」相手のことをちゃんと知るまで、その人の性格を決めつけてはいけない、ということを魔法界の魔女や魔法使いたちが教えてくれています。
好きな相手が遠くにいる人でも、付き合い始めたばかりの人でも、結婚生活の長い人でも、プレゼントを贈るのは難しいものです。そういう難しさに満ちている日の代表がバレンタインデーです。それは、魔法ワールドの登場人物たちからも伺えます。彼らの失敗からどんなことが学べるのでしょうか。
まず、ひとつ確かなのは相手にみんなの前で恥ずかしい思いをさせるようなことは避けたほうがいいでしょう。バレンタインデーの日、ハリーはみんなが見ているなか強引な小人にカードの内容を歌われたのですが、これでは受け取ったハリーも送り主のジニーも気まずい思いをするだけです。それからカードで相手のことを書くときには「あなたの目は緑色、青いカエルの新漬のよう」とか「あなたの髪は真っ黒、黒板のよう」とは書かないほうがいいかもしれません。
ハリーとチョウの悲惨なデートは、デートの場所がマダム・パディフットの店だったせいで、よりいっそうひどくなりました。ハリーたちから学ぶバレンタインデーについての教訓は、これだけではありません。バレインタインデーは他のカップルと自分たちカップルを比べてしまう日でもあります。ロジャー・デイビースとその彼女は、ハリーとチョウの隣のテーブルに座ってキスをしていました。その姿を見たハリーは、恋人らしい行動をしなければ、とプレッシャーを感じていました。ですが、もしハリーが楽しいと思える話題に集中していれば、チョウとのデートはずっとうまくいっていたかもしれません。
魔法ワールドには片想いをする登場人物がたくさんいます。そして、失恋の悲しみに沈んでいる登場人物は多くのことを教えてくれます。ひとつ目の教訓は、好きな人が振り向いてくれなくても、自分の気持ちを抑えるべきではない、ということです。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で、ニュートはリタ・レストレンジとの別れを大人になっても引きずっていました。唯一、クイニーだけがニュートの想いに気づきこう言いました。「傷ついた心は読みやすい」ニュートはリタへの気持ちを隠していたのです。しかし、誰かに片想いすると精神的に辛いだけでなく、身体的な影響もでてきます。リーマス・ルーピンがトンクスの気持ちを拒み続けていたときのことです。トンクスは「......ひどい様子をしていると思った。前よりやつれて、くすんだ茶色の髪はだらりとのびきって」いました。それから、七変化の能力も衰えてしまっていました。
トンクスの想いはリーマスに届きましたが、なかには決して叶うことのない恋もありました。それは、相手を忘れられない人にとってはつらいことかもしれません。スネイプのリリーに対する揺るぎない想いについて考えてみましょう。「これほどの時が経ってもか?」「永遠に」これは『ハリー・ポッターと死の秘宝』でのスネイプとダンブルドアのやりとりです。こんなに悲痛な会話があるでしょうか。魔法界には惚れ薬がありますが、それでもわたしたち読者に大切なことを教えてくれています。真実の愛は強要するものではない――メローピー・リドルとロミルダ・ベインの場合に注目してみましょう。惚れ薬に期待するより、お茶を入れるほうが効き目が期待できるかもしれません――「誰か気が動転してるとき、ママはいつもそうするんだ」と、ロンが言っていましたね。それから、蛙チョコレートを山ほど食べながら、元気の出る呪文を唱えるとか。バーノンとペチュニアが惹かれあって結婚しているのだから、わたしたちにも希望はあるということですよね。
誰かを好きになって、その相手もあなたの気持ちに応えてくれたなら、それはホグワーツのグラウンドに降り注ぐ太陽の光のように最高なことです。つぎに何が起こるかというと、まわりの人たちがあなたの新しい恋人について気づきはじめます。友だち、家族、昔の恋人......。恋人ができたことがまわりの人に知られたとき、魔法ワールドの登場人物たちはどうしていたでしょうか。彼らの知恵を借りたいと思います。
まわりの人たちは、それぞれに意見を言ってくるので、心の準備をしておきましょう。ビルとフラーが結婚を決めたときのウィーズリー家の反応を思い出してください。ジニーはフラーのことを影で「ヌラー」と呼んでいたし、ビルにはトンクスのほうがお似合いだと思っていました。ウィーズリー夫人も、最初はふたりの結婚をよく思っていませんでした。それから、フレッド、ジョージ、ロンの三人は、ジニーの恋愛にたくさん口を出していました。もちろん、まわりの人がよかれと思ってくれたアドバイスに耳を傾けることは大切です。しかし、ジニーがフレッドに「よけいなお世話よ」と言ったときには、わたしたちもそのとおり、と思いましたよね。
結局のところ、相手を思いやる気持ちがティースプーンくらいしかない人たちが、無神経でうるさいことを言ってくるかもしれませんが、あなたが新しい恋人といて幸せなら気にならないでしょう。ハリーがようやくジニーと結ばれたときこんなふうに思っていました。「ずいぶん長い間、こんなに幸福な気持ちになったことがなかったし、幸せなことで話題にあがるのは、闇の魔術の恐ろしい場面に巻き込まれて噂になるばかりだったハリーにとって、すばらしい変化」だったのです。
すべてがうまくいっているときは、バラ色のレンズをかけたように何もかも素敵に見えるでしょう。しかし、恋愛にはうまくいく時期があれば、そうでない時期もあります――魔法ワールドの人気カップルも例外ではありません。夫のアーサーの空飛ぶ車のことを知って、モリ―・ウィーズリー夫人が激怒していたのを覚えていますか?それから、アーサーが聖マンゴ魔法疾患傷害病院で、マグル療法の「縫合」を試したときも。モリーは歌手のセレスティナ・ワーベックの大ファンでしたが、アーサーはあまり好きではありませんでした。こんなふうに、考え方に違いのあるふたりが教えてくれた大切なこと――それは、歩み寄ることです。モリーは夫の電気プラグのコレクションに目をつぶり、アーサーは妻の好きな歌「大鍋は灼熱の恋に溢れ」を楽しんでいるふりをするのです。
あなたと恋人との関係にかかるプレッシャーは精神的ものだけではなく、外部からの圧力であることもあります。ジェイコブとクイニーは最初から最高にお似合いのカップルでした。しかし、魔法族とノーマジが結婚したり、親しくしたりすることを禁止するラパポート法がふたりの間を引き裂きました。
ハリーもヴォルデモート卿との戦いで、ジニーを危険な目にあわせないためジニーと別れる、という辛い決断をしましたね。
さて、わたしたちの大好きな魔法ワールドの登場人物たちが困難を乗り越える姿は何を教えてくれたでしょうか。
言いづらいことを彼女のラベンダーに伝えるのを避けていたロンのようにではなく、恋人とはお互いに思っていることを話し、自分の気持ちや恐れていることを伝え合うところから始めるのが良いかもしれません。
もし恋愛で失敗して、どうしたらいいのかわからなくなったらこの場面を思い出してください。
「共通の経験をすることで互いを好きになる、そんな特別な経験があるものだ。4メートルもあるトロールをノックアウトしたという経験もまさしくそれだった」
トロールと戦うよりは「三本の箒」でバタービールを一緒に飲んだほうがいいかもしれませんが......。
どうでしたか?魔法ワールドの恋愛は参考になったでしょうか。みなさんの恋がうまくいったかどうか、ぜひ教えてください!
CREDIT:COURTESY OF POTTERMORE
出典:POTTERMORE
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