アリアナ・ダンブルドア
私たちは、死喰い人やその仲間のありとあらゆる邪悪な行いを目にしてきました。闇の魔術の恐ろしさを知っているからこそ、魔法界の歴史のなかで最もひどい事件の一つを引き起こしたのが、ごく普通のマグルの少年グループだったということは衝撃的でした。
その事件の犠牲になったのは、当時6歳だった少女、アリアナ・ダンブルドアでした。将来、ホグワーツの校長となるアルバスと、ホッグズ・ヘッドのバーテンダーとなるアバーフォースの妹です。
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』
妹は六つのときに、三人のマグルの男の子に襲われ、乱暴された。妹が魔法を使っているところを、やつらは裏庭の垣根からこっそり覗いていたんだ。妹はまだ子どもで、魔法力を制御できなかった。その歳では、どんな魔法使いだってできはせん。多分、見ていた連中は怖くなったのだろう。植え込みを押し分けて入ってきた。もう一度やれと言われても、妹は魔法を見せることができなかった。それでやつらは、風変わりなチビに変なまねをやめさせようと図に乗った
「ハリー・ポッターの死の秘宝」
残酷な仕打ちを受けた幼いアリアナは、大きな傷を負って精神的に不安定になり、魔法を使うことを恐れるようになりました。アリアナの魔法力は内にこもり、とても危険な状態でした。アバーフォースは妹のことを「いつもは優しく、怯えていて、誰にも危害を加えることはなかった」と語っていますが、取り乱したり、怒ったりしたときには魔法が内側から爆発して「おかしくなり、危険になる」そうです。
かわいそうなアリアナの事件の影響は、ダンブルドア家の隅々にまで広がりました。父親のパーシバル・ダンブルドアは、そのマグルの少年たちを追い詰め、攻撃したせいでアズカバンに投獄されました。彼は、少年たちを攻撃した理由については決して話しませんでした。なぜなら、魔法省にアリアナの状態を知られるのを恐れていたのです。もし知られていたら、アリアナは聖マンゴ魔法疾患傷害病院に一生閉じ込められることになっていたでしょう。
パーシバルがアズカバンに収監された後、妻のケンドラ・ダンブルドアは家族を連れて、アリアナが襲われたモールド-オン-ザ-ウォルドからゴドリックの谷に移ります。そこでは、世間から娘を隠して暮らしました。アリアナが外に出られるのは真夜中だけでした。
リータ・スキーターは、伝記「アルバス・ダンブルドアの真っ白な人生と真っ赤な嘘」で、ケンドラにとって、一家にスクイブ――魔力を持っていない魔法使いのこと――がいることは恥だったのではないか、と述べています。だから、ケンドラは娘を世間の目から隠したのではないか、と。リータの本には、アルバスとアバーフォースは、妹がホグワーツに入学していない理由を聞かれたとき、「妹は体が弱くて学校には行けない」と答えるように母親に教え込まれていた、とも書いてあります。
もちろん、アリアナが世間から隠されていた理由は魔力がなかったからではなく、むしろ膨大な魔法をコントロールできなかったからでした。悲しいことに、アルバスがホグワーツを卒業してすぐ、友人のエルファイアス・ドージと世界一周旅行に出発する直前に、母親のケンドラはアリアナの発作が原因で死んでしまいました。
「妹が十四歳のとき......いや、俺はその場にはいなかった」アバーフォースが言った。
「俺がいたならば、なだめることができたのに。妹がいつもの怒りの発作を起こしたが、母はもう昔のように若くはなかった。それで......事故だったんだ。アリアナには抑えることができなかった。そして、母は死んだ」
「ハリー・ポッターの死の秘宝」
アルバスは旅行を取りやめ、アリアナの面倒を見るために家に戻りました。弟のアバーフォースには、これまで通りホグワーツで教育を受けるべきだ、と話したそうです。しかし、世界旅行を計画し、ホグワーツ卒業後のキャリアについても野心を抱いていた10代のアルバスは、ゴドリックの谷にある家や、つきっきりで世話をしなければならない妹にしばりつけられることに不満を持っていました。
「わしはのう、ハリー、憤慨したのじゃ」
ダンブルドアはあからさまに、冷たく言い放った。ダンブルドアは、いま、ハリーの頭越しに、遠くのほうを見ていた。
「わしには才能があった。優秀じゃった。わしは逃げ出したかった。輝きたかった。栄光がほしかった。」
「誤解しないでほしい」
ダンブルドアの顔に苦痛が過り、そのためにその表情は再び年老いて見えた。
「わしは、家族を愛しておった。両親を愛し、弟も妹も愛していた。しかし、わしは自分本位だったのじゃよ、ハリー。際立って無欲なきみなどには想像もつかぬほど、利己的だったのじゃ」
「母の死後、傷ついた妹と、つむじ曲がりの弟に対する責任を負わされてしまったわしは、怒りと苦い気持を抱いて村に戻った。籠の鳥だ、才能の浪費だ、わしはそう思った!そのとき、ちょうどあの男がやってきた......」
「ハリー・ポッターの死の秘宝」
「あの男」というのは、もちろん、ゲラート・グリンデルバルドです。もし、次の世代にヴォルデモートが現れなかったら、過去100年で最も邪悪な魔法使いと呼ばれていたのは、彼でしょう。
夏のあいだ、大叔母であるバチルダ・バグショットのところで過ごしていたゲラートは、ケンドラを亡くしたばかりの17歳のアルバスと仲良くなりました。ゲラートとアルバスは、「新しい魔法界の秩序」についての計画を練ったり、「秘宝」探しに夢中になったり、いつも一緒にいるようになっていきます。しかしアバーフォースは、アルバスとグリンデルバルドが仲良くなったことで、妹のアリアナがないがしろにされている、と感じていました。アバーフォースは、兄とグリンデルバルドに食ってかかり、3人のけんかは壊滅的な結末を迎えます。
「...そして俺は杖を抜き、やつも抜いた。兄の親友ともあろう者が、俺に『磔の呪文』をかけたのだ――アルバスはあいつを止めようとした。それからは三つ巴の争いになり、閃光が飛び、バンバン音がして、妹は発作を起こした。アリアナには耐えられなかったのだ――」
アバーフォースの顔から、まるで瀕死の重傷を負ったように血の気が失せていった。
「――だから、アリアナは助けようとしたのだと思う。しかし自分が何をしているのか、アリアナにはよくわかっていなかったのだ。そして、誰がやったのかはわからないが――三人ともその可能性はあった――妹は死んだ」
「ハリー・ポッターの死の秘宝」
誰の呪文がアリアナの命を奪ったかは定かではありませんが、ホグワーツの戦いの際、死にそうになったハリーがキングズ・クロス駅でアルバス・ダンブルドアに会ったとき、アリアナの命を奪ったのはグリンデルバルドだ、と強くほのめかしていました。
グリンデルバルドは抑制を失った。気づかぬふりをしてはおったが、グリンデルバルドにはそのような面があると常々わしが感じておったものが、恐ろしい形で飛び出した。そしてアリアナは......母があれほど手をかけ、心にかけていたものを......床に倒れて死んでいた
「ハリー・ポッターの死の秘宝」
アリアナの葬儀で起きた「棺を前にした恐ろしい争い」で、アルバスは怒りに燃えた弟のアバーフォースに鼻をへし折られます。その後、兄弟は和解しますが、非難する気持ちや、それぞれの抱える悲しみが消え去ることはありませんでした。
数年後、アルバスがグリンデルバルドの残虐な行為を止めるために追うことを決心したのは、妹のアリアナの死が一つの要因だったようです。アルバスがどれだけ「死の秘宝」を見つけることに取りつかれていたかは、魔法省大臣のポストを断ったことからも分かります。
アルバスは、アリアナの死をめぐる恥と罪悪感から、もう一つ間違いを犯しました。アルバスは、ヴォルデモートの分霊箱である蘇りの石が使われた指輪を身につけてしまったのです。その行動は間違っていますが、気持ちを考えると分からなくもありません。
指輪を取り上げ、それをはめた。一瞬わしは、アリアナや母、そして父に会えると思った。そしてみんなに、わしがどんなにすまなく思っているかを伝えられると思ったのじゃ......
「ハリー・ポッターの死の秘宝」
出典:POTTERMORE
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』はデジタル先行配信中。
4月24日ブルーレイ&DVD発売/レンタル同時開始
http://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/home_entertainment